* あらすじ *
貧しいユダヤ人の家庭に生まれ、弁護士を目指すルース・ギンズバーグは、家事も育児も分担する夫の助けもあり、1956年ハーバードの法科大学院に入学する。ルースは猛勉強して移籍した先のコロンビア大学を首席で卒業するが、女だからという理由でどんな小さい法律事務所でも雇ってもらえない。やむなく判事書記、後に大学教授となり男女平等の講義に力を入れるが、弁護士になる夢は彼女の中にくすぶっていた。
1970年代、夫・マーティンが「興味深い訴訟がある」と見せた訴訟記録は、男性だから介護費用の税控除が受けられないというもの。ルースは、性差別を覆す裁判となることを確信し、弁護を買って出るが、「100%勝てない」と追い込まれることになる。(以下ネタバレあり)
* * *
冒頭の入学式に向かうシーンがとても象徴的。500人あまりの学生の中、女性はたった9人。講義では挙手しても当てられないし、ハーバードの学長がその年入学した女子学生を招待した会食は、はじめから女性をコケにするつもりのものだった。自己紹介で「男の席を奪ってまで弁護士になりたかった理由を」なんて一人ずつ言わせるが、「下らない」と吐き捨てる。
ルースの弁護士になりたいという思いは「何にでも疑問を持て」との母親の教えに根差している。大学の講義で、「判決は天気には左右されないが、時代には左右される」と教わる言葉がとても象徴的。法律で決まっているからといってそれが正しいとは限らず、時代の風潮が変われば法律も変える必要がある。いまの日本にも同様のことがいえる。法律は、間違っていれば変えられることを、皆が知っているべきだ。
どうあっても負けそうだと弱気になりかけたとき、娘の言動に希望を見出だす場面がみごとだった。娘が、卑猥な言葉を投げ掛けてくる男たちに猛烈に言い返し、母であるルースに「黙ってちゃだめよ」と言う。時代は変わっていることに気づかせる、感動的な場面だ。
クライマックスの意見陳述がまたハラハラする展開で凄まじく見応えがあった。ルースの言葉に説得されていく判事たちの表情を思い出すと涙が。アメリカは人種差別を長年合法としていた歴史上、差別問題を考える姿勢がしっかりしていると感じた。だからこそ、100年もの長きにわたる悪しき「前例」を、負の遺産、「差別の証拠そのもの」とするルースの弁論が受け入れられたのだろう。
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主人公のギンズバーグさんは後に最高裁判事を務め、定年がないため85歳のいまも現役だそうです。そんなに大昔の話ではないというのが、驚きです。私生まれてるやん!と思いましたよ。日本はまだまだというより、最近後退している思うことがしばしば。気鬱になることが多いけれど、この映画で「頑張ろう」という気持ちが湧いてきました。
それにしても、同じハーバードに入学する夫の素晴らしさには打たれるものがあります。公私ともにこんなに助けあえる、理解者に出会えるなんて奇跡です。父親としても完璧。しかもこの年代に。羨ましいにもほどがありますが、相手がルースだからこそなんだよなあって話ですね。
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