先日読んでいた映画評の本に、映画「友だちのうちはどこ?」があったので、アマプラで観てみた。1987年公開の作品で、監督はイラン映画の巨匠アッバス・キアロスタミ。
8歳の男の子アハマッドのひたむきな様子がそれはそれは胸を打つ、いい話と言うのも難しいようなリアルさのある映画だった。
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イラン北部の小さな村。2年生のアハマッドは、同級生のモハマッド=レザの宿題ノートを持ち帰ってしまったことに気付いて愕然とする。
その日、先生から「宿題は必ずノートにすること」ときつく叱られて泣いていた友だちを隣で見ていたアハマッドは、その子が明日また先生に叱られて「退学にされちゃう!」と焦り、ノートを返しに遠く離れた村の友だちの家を目指して駆け出す。
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子どもにとって、宿題をやらないで怖い先生に怒られるということが、いかに切実で重要な問題か、思い出さずにはいられない。
そんな重大事を抱えて、小高い丘を超えて森を抜けて石段だらけの集落で右往左往するアハマッド。見ている方は、たぶんこれ暗くなるまで探すことになるんだろうな…とハラハラしながら見守ることになる。子どもが友だちの家を訪ね歩くというだけの話が、こんなに目が離せないとは…という感じ。
アハマッドの表情が、最初からずっと不安そうにこわばっているのが可哀想でたまらなかった。
それなのに周囲の大人たちは子どもに厳しく、悲しくなるくらいアハマッドの気持ちに寄り添ってはくれない。
別にいじわるというのでもないが、男たちは割に合わない仕事に不満で、女たちは1日中家事をしている。大人は子どもにかまう余裕などない。
どうやら若者は軍隊に取られていて、家にいるのは老人が多い。そういった、イランの寒村の暮らしが伝わってくる話でもあった。
子どもは労働力になっているから学校から帰ったらまず家の手伝いを言いつけられ、宿題もままならない。なのに先生は鬼のように追い込んでくるんだから…と怒りも湧く。
特に腹が立ったのは、アハマッドの祖父が孫に嘘をついてまで自分に従わせ、「子どもは厳しく躾ける」「たとえ良い子でも理由をつけて叱る(殴る)」とか得意げに友人に語っていたところ。
先生もそうだけど、規律を守らせることを何より重視して大事なことを見失っている。そういう人や勢力に対する風刺なんではないかな、この映画は。
ともあれ、やはり健気な子どもが頑張る姿というのはどうあっても可愛い。最後の場面はハッとするあたたかさがあって、とてもとても観て良かった映画だった。