飼い主を選ぶことができない犬
D O N:
ハリーくん、お互い、命の崖ぶちを彷徨うことがあったね。
一歩でも間違えれば……二人ともズド~ン!
ぼくは引越という理由で捨てられた。
きみは純血の甲斐犬ではなかったから捨てられたんだろう。
たまたまぼくたちが運が良かったから救われたんだけど、
ちょっとしたタイミングの差で処分場の麻袋に入ったかもしれないね。
ほかの仲間のように!
HARRY:
そうだよ、喜びと悲しみ、幸せと苦しみ、
笑いと涙、安心と不安、
そして生きることも、死ぬことも、
すべてが飼い主次第だ。
あらためて考えてみると、鳥肌がたつような怖い話だぜ。
俺たちは飼い主を選ぶことができないから。
D O N:
日本に、ぼくたちを大切にしてくれる人たちもいるが、数は少ない。
この国では、いい飼い主にあたるのは宝くじより率が悪いかもしれないね。
流行に振り回され、感情的に犬を選ぶバカ連中が多い日本。
その流行がかわるたびに、飼い犬が、突然、不要犬になる。
不要になったら、センターに持ち込まれるか、
粗大ゴミの不法投棄のように捨てられてしまう。
二度と日本の犬に生まれたくない!と祈るばかりだ。
だってハリー、そうだろう、次はお父さんもいないから、
ぼくたちを助けてくれる人はいないよ。
HARRY:
本当だい。もしまた生まれるんだったら……、
どこがいいんだろう……ブラジルかなア……
D O N:
ブラジル!? なんで、またブラジル!?
あア、分かった! イヤらしいね……ハリーくん。
オッパイのでかい格好いい姉ちゃんとイチャイチャしたいんでしょう!
このスケベ野郎!
HARRY:
ウッシッシ……大当たり!
D O N:
ハリーくん、きみと話すと、いつも、話題が違う方向へいってしまうのだ。
イヤだイヤだ……まじめに考えてちょうだい。
HARRY:
まア、そうかたくなるなよ。
たまには息抜きも必要だぜえ……このカタブツ。
はい、はい、ドンさま、次は?
D O N:
えーとー、そうだ……
流行犬の悲劇もうそうだけど、
ただの番犬で犬を飼うバカ連中も未だにたくさんいる。
犬の鳴き声がうるさいという苦情が各地の保健所に殺到しているのに……。
HARRY:
番犬で思いだしたけど、シンジラレナイ話を聞いたことがある。
D O N:
シンジラレナイ話?まじめな話にしてね!
お願いだから……
HARRY:
いやね、センターに犬を持ち込むときに、
必ず手放す理由を聞かれるんだって。
なんとか考え直すように、センターの職員たちが必死に説得しても、
「番犬のつもりで飼ったが、こいつ、吠えねえからいらねえ」
と弁解する田舎の水飲み百姓。
「ペットのつもりで飼いましたが、吠えるからいらない」
と弁解する都会人。
こんなくだらない理由で犬を手放すにもかかわらず、
センターの職員は、不要犬を受け取らなければならない。
日本の動物愛護法に基づいて、断ることができないんだって。
「動物愛護法」だぜえ……
日本って変よね! そう、思わないかい!
D O N:
そう、そうなんだ。きみもけっこう法律に詳しくなったね。
日本の動物愛護法、実は、あれは人間愛護法だ。
「動物は命のあるもの」と言いつつ、
良く読んでみると、すべてが人間の目線、
人間の都合を中心的に書かれている。
動物の飼い方についてもそうだ。
「所有者は所有している動物を適切に飼育しなければならない」
適切って、どういう意味かね?
永田町のタコ連中が言い逃れのために連発している表現と同じ!
「適時適切に対応します」ワケの分からない言い方でしょう。
いつ、何をするのか!はっきり言えよバカタレ!と言いたい、私は。
あいつらは適切というより適当に仕事をしている。
つまりに、国民の税金でただ飯を喰いながら、いいかげんにやっている。
だからこの国がおかしい。
HARRY:
ドンよ、おちついて、おちついて! そう興奮しないでよ。
俺に染まっちゃ駄目だよ……冷静に、冷静に、それがお前の役目だろう!?
D O N:
そうだね、ごめんね。
いえね、たくさんの仲間が悲惨な飼い方をされていると考えると、
つい熱くなってしまってね……
ほら、2月22日に死んだゴンちゃんを思いだした。
まだ13才だったのに……かわいそうに。
HARRY:
そう、そう、新居浜市のゴンちゃん……かわいそうだったね。
必要とする食べ物が不足していたから、栄養失調によるクル病っぽかった。
毎日、水ももらえず、家の前にたまった雨水を飲んでいたぜえ。
それでも、飼い方は「適切」?
水もフードもないから…… 泥水を飲んで、のどの渇きをいやすゴン
D O N:
皆様、途中ですが、クル病を説明します:
食餌からとるカルシウムとリンが不足することによって、骨に異常が起こる病気。
ハリー、つづけて。
HARRY:
一生、つなぎっぱなし、散歩も無し。
それでも、飼い方は「適切」?
死にかけたときに、二日間、小屋の中で苦しんでいたゴン。
辛そうな鳴き声が遠くまで聞こえたにもかかわらず、
獣医に見せることはなかった。
小屋の中でほっといたまま。
それでも、飼い方は「適切」?
親父がさ、見るに見かねて、時々フードと水をあげた。
やっと食べられると、ゴンちゃんは必死だったね。
水を必死に飲むゴン ご飯を必死に食べるゴン
それでよ、親父はゴンの飼い主に何を言われたと思う?
迷惑そうな面をしやがってよ、「かまわないで」だと。
あのクソ爺とクソ婆……腹が立つね。
D O N:
本当に腹が立つ。けどね、これが日本!
ゴンちゃんのような飼い方をされている仲間はいくらでもいる。
「適切」に飼っているから、助けようと思っている保健所の職員もお手上げ。
皆様、ペットは家族の一員ですよね。
それは、毎年の動物愛護週間の決まり文句ですか?
違いますよね。
家族の一員であれば、家族のように大切にするべき。
家族の一員であれば、生きる権利を保証するべき。
動物の「日本の春」は目の前です!
国民の皆さんの力と結束でおこしましょう!