ロサンゼルスで、着物暮らし

太陽燦燦のロサンゼルス近郊で接する和なあれこれ。
LAに帰って来ました。肌寒い日が続いています。

林真理子さんの『着物の悦び』

2006年10月10日 | ほん
着物好き、特に志ま亀好きで有名な林真理子さんが、着物初心者の頃の失敗談なども披露しながら綴る「七転び八起き」、遅ればせながら読みました。都会で一人暮らしの、着物にあかるくない女性が、自力で切り開いていく着物道にわくわくどきどきします。
着物を着こなすヒントがたくさん散りばめられていて、なるほど~、と何度も目から鱗。着姿の最重要ポイントとなりうる足袋を足にぴったりさせる秘訣は、お風呂に一緒に入ってそっと脱ぎそのまま乾かすとよい、なんて知りませんでした。もちろん、これは林さん御用達の誂え足袋にだけ有効なのかもしれませんので、私の既成足袋でもいつか試してみなくては。その他にも、柄行や色で季節感を表すのはもちろんのこと、綸子は春、ちりめんは秋というように素材で表現することにも触れられていて、改めて日本人の感性の鋭さを思います。柄行の部分の引用は、あかねさんのところでも書かれていた有吉佐和子さんの『乱舞』での七夕の帯合わせで、同じく紹介されていた『真砂屋お峰』とともに今後必読です。
最後の「着物は楽しい、むずかしい」の項は、かつて勤めていたアパレル会社が所属した京都織物商業組合での講演会を基にしたもの。呉服業界のおじさまたちを相手に、林さんが着物の将来を憂えておっしゃった数々、半分胸がすき、残りの半分でどこまで林さんのおっしゃりたいことをおじさまたちが理解されたことか、と思います。ともあれ、講演会での苦言から14年経った現在、気軽に着物の袖を通す人口が増えてきたように見受けられますし、私自身も楽しんで身につけるように変化してきました。何より、現実世界であれネット世界であれ、一緒に着物を楽しんでくださる先達・お友だちの存在がとても大きく、ありがたいことだと思います。
それにしても、ぐいぐいと持論を展開していくさまは、さすが一世を風靡した人らしく、力強いことでした。恥ずかしながらまだ見ぬ林さんのお着物姿、いつか拝見したいものです。
注: 現在市場に出回っている同名のものより以前の1992年発行本で、装丁だけではなく内容も少し違うのかもしれません。

きものがたり

2006年04月26日 | ほん
作家の宮尾登美子さんがたんすの中身を大公開されています。フルカラーで次々と紹介される着物や帯、羽織などの何と華やかなこと。戦争を経験し、満州からの辛い引き揚げを経験されたとはいえ(だからこそ?)、高知の裕福なおうちでの生まれ育ちや、あの宇野千代さんともご交流があるということも関係あるのでしょうか。1月から12月まで、礼装、羽織、訪問着から絞りまでテーマ別にまとめられ、これでもか、と目の保養をさせていただきました。ご職業柄か絵羽ものが多く、その美しさにうっとり。
大正のお生まれのならでは、の昔の風習のお話なども織り交ぜ、小説とはまた違った語り口は恥らうようでもあり、70余年を生き抜いてきたという気概に満ち満ちているようにも思いました。調べますと、先日の4月13日でめでたく満80歳になられたようで、そんなにご高齢であったか、と驚き、改めて、掲載されている月毎のポートレイトの若々しいことに、目がまん丸になりました。ン十年後、かくありたいものです。