以前はよく通ったものだが、思い返せば3、4年ぶりだろうか。
2013年に建て直された後、1度足を運んで桟敷席で見物した記憶があるが、その後が思い出せないのである。
多分それ以来ということになるはずで、ずいぶんのご無沙汰である。
今回は桟敷のような上等な席ではなく2階席だったが、客席中央の前から2番目という席だったから良く見え、ああいう目線で見るのも悪くはない。
行ったのは昼の部で、出し物は「猿若江戸の初櫓」「大商蛭子島」「四千両小判梅葉」「扇獅子」。
「…蛭子島」は伊豆に隠遁中の頼朝が平家打倒を目指して挙兵を決断する話。「四千両…」は江戸城のご金蔵に偲び入ってまんまと千両箱2つ、四千両を盗み出したが最後は処刑される話である。
歌舞伎というものは何といっても衣装が美しい。
衣装の図柄の大胆なこと。それを引き立てる、これまた大胆な色遣い。それだけでも大いに目を引くのだが、それが舞台の上の強い光の中に浮かび上がるのだから、本当にきれいである。
それを目にするだけで、いっぺんに非日常の世界の虜にさせられる。
そういう歌舞伎の特徴ともいえる魅力の中で「四千両…」の一幕は、小伝馬町の牢屋の中が舞台で、牢名主を中心にずらりと囚人どもがかしこまっている場面なのだ。
従って、色が全くと言ってないのである。茶色や灰色などのくすんだ色ばかり。
しかし、幕が上がるとすぐ目に飛び込んでくる牢屋の中の異様な光景に、客席からは小さなどよめきが起きるほどである。
ここでもまた観客は突如、牢屋の中という非日常の世界に引きずり込まれるのである。
幕府のご金蔵を破って四千両もせしめた怪盗なのだからアッパレで、お縄にして獄門打ち首にしてしまうのではなく、逃げおおさせて豪遊させてあげれば良いものを、と個人的には思うのだ。
そうなりゃあ、鼠小僧とか西洋の怪盗ルパンとか、別の胸のすく盗賊物のストーリーが出来上がっていただろうに、惜しいことをしたと思う。
しかし、作者の河竹黙阿弥は末期とはいえ、まだ幕府の威光の残っている時代の人だから、幕府に恥をかかせるような脚本を書いて芝居をかけられるわけがなかったのかもしれない。
夜の部は「門出二人桃太郎」という演目がかかっている。
これは先年、志半ばで亡くなった人気役者の中村勘三郎の5歳と3歳の孫二人の初舞台だそうで、巷では大いに話題になっているそうだ。
見てみたい気もするが、まぁ、それはそれ…
昼の部で気が付いたのだけれど、勘三郎の息子の勘九郎の声が父親とそっくりで、びっくりした。
芸を引き継ぐのは宿命かと思っていたが、生物学的な遺伝子を引き継いでいるのだという、至極当たり前の事実を見せつけられて、こちらも「へぇ~」と感心したものである。
歌舞伎座外観と正面入り口わきの昼の部の絵看板
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