昨日の朝刊で不可解な記事を読んだ。
予算の削減案が浮上していたips細胞の備蓄事業について、政府は削減を見送り、当初の計画通り2022年度まで支援を続ける方針を決めたという内容だ。
ips細胞の備蓄事業というのは、ノーベル賞に輝いた山中伸弥京大教授を中心としたグループが再生医療を効率的に進めていくために、あらかじめ複数の型のips細胞をそろえておこうという計画で、国は毎年十数億円、これまでに計90億円以上を投じてきている。
ips細胞による再生医療というのはノーベル賞受賞をきっかけに、国民のというか、人類が待ちわびている治療法であり、その確立が大いに期待されている。
鳴り物入りで続けてきた支援そのものを打ち切ろうとした国の態度も不可解だが、背景に何があったのか。
記事には削減案には京大ips細胞研究所の山中所長が強く反発したとある。
当然だろう。
2階に上げておいて突如階段を外してしまうようなやり方に怒った山中所長は日本記者クラブの会見で「医療政策を担う内閣官房の幹部から『来年度から支援をゼロにする』と通告された」と明らかにした。
これに驚いた記者連中が取材に動き出したのは言うまでもなく、ボクも打ち切りを伝える記事は読んだ記憶がある。
確かに青天の霹靂の如く「えっ ! どうして ? 」と思ったものだ。
ただ残念ながら背景に何があるのかまで踏み込んだ記事にはお目にかかって来なかった。
それが今月発行されたある月刊誌に載った「危ない再生医療が蔓延る日本」というタイトルの記事を読んでハハァ~ン ! と思ったのだ。
記事の内容は「日本での再生医療の目指す方向が国民の健康より金儲けをたくらむ製薬ベンチャーの都合が優先されている」と警鐘を鳴らすイギリスの科学誌「ネイチャー」の指摘を紹介しながら、その旗振り役がアベなんちゃらの側近官僚である総理補佐官と、その補佐官に可愛がられて抜擢された女性の厚生労働省大臣官房審議官だという内容。
山中教授のもとに足を運んで予算の打ち切りを告げたのもまさに女性審議官だそうだ。大人しく結果だけを伝えたのではなく、再検討を促す山中教授を恫喝までしたらしい。
「先端医学研究を理解しているとは思えない」という人物評を添えながら、製薬ベンチャーの金儲けに手を貸す政策転換だと月刊誌の記事は指摘している。
そして、まだ記憶の隅に残っている加計学園の問題の時に、認可を含めた手続き渋る文部科学省を恫喝し「これは総理案件だ」と有名になった一言を言い放ったとされる総理補佐官がいた。その補佐官こそ、今回の問題でも背後にいる総理補佐官なのである。
長期政権となったアベなんちゃらの元では「忖度」が蔓延り、こうしてアベなんちゃらやカンボーチョーカン・ガースの威を借る佞臣どもが、集中する権力を好き勝手に使っているという図式が浮かんでくる。
佞臣が蔓延り、それを最高権力者が放置するような国は、洋の東西の区別なくどんな時代であっても滅びていく。
ニッポンにおいておや、である。
今回の突然の予算打ち切り騒動は、「打ち切るにしたって、せめて公の場で議論したうえで決めてくれ」という山中教授の怒りが、会見という場で披瀝されなけばどうなっていたか分からない。
バカ殿と佞臣どもが蔓延る、こんな治世がいつまで続くんだ。
近所の公園から見た富士山(見出し写真も。26日撮影)