秋の花を探しに長谷の光則寺に行くとフジバカマが咲いていた。
「海を渡るチョウ」として知られたアサギマダラの食草で、蜜を吸いにやって来ないかしばらく境内にいたが、そう都合よく行くものではなく、姿を見せてはくれなかった。
写真や動画では何度も見てその姿かたちは脳裏に焼き付いているが、残念ながら実物をまだ見たことがない。
光則寺からさして遠くない稲村ケ崎は渡りをするタカ類の中継地点として愛鳥家らに知られた存在で、今の時期、岬に立寄ると三脚付の望遠鏡や望遠レンズ付きのカメラの放列が出現する。
初めてその光景に出くわした時、何事かと望遠鏡のそばに立って空を見上げていた人に聞くと「タカの渡りが始まったので観察に来た」と言い、「房総半島や関東一円からここに集結して愛知県の伊良湖岬経由で南の島へ渡る中継地点の一つ」だという話だった。
別の人は「今日はまだタカは現れていないが、さっき数頭のアサギマダラがここの上空をひらひら飛んでいくのを目撃した」と教えてくれた。
もう十数年も前の話である。
それを思い出して光則寺の後稲村ケ崎に回ってみたが、午後もだいぶ回った時刻だったせいもあるのか、愛鳥家の姿は無かったが、ネットで調べてみると、数日前には数十羽のタカ類が上昇気流を捕まえて輪を描きながら高い空に上っていく「タカ柱」が何度も現れたそうで、渡りの季節は本番を迎えているようだった。
彼ら愛鳥家が集まるのは午前中で、きっとタカやアサギマダラの渡りも午前中なのだろう。
鎌倉の寺にはフジバカマが咲いているところが多いので、ひょっとっしたら"腹ごしらえ"するアサギマダラに出会えればうれしいのだが…
それにしても、飛翔力の強そうなタカ類と違ってひらひらひらひら、誠に頼りなげにしか見えないチョウが海峡を渡り、大海原を越えて南の島々に渡る姿は想像するだに「神秘」としか言いようがないように思える。
方向感覚ひとつとってもあの小さな体のどこにそんな高性能羅針盤のような機能を備えているのか…
そして何より推進力を生み出すエネルギーをどこに蓄えているのか…
天気の良い午前中に稲村ケ崎に足を運んでみようと思う。
光則寺のフジバカマ
境内ではまだスズムシバナが咲いていた
シュウカイドウの花期も長い
独特の形をした本堂の屋根
15:00頃、稲村ケ崎から江ノ島方向を見る 14:00頃までは秋晴れだったのに…
初冠雪の富士山は隠れてしまった