今年初めて本州に接近した昨日の台風3号は実に物わかりの良い賢い台風だった。
どういうことか ? って、なぁ~んにも被害をもたらさず、ただただおとなしく通り過ぎて行ったということに尽きるのだけど、その通り過ぎ方がまた実にスマートというか、台風3号は忍術使いでございましたって感じで自分の気配さえ消して通り過ぎて行ったのだ。
通勤通学の時間にモロにぶつかりそうだという予報で、緊張しながら身構えていた特に首都圏の多くの通勤・通学者たち、あるいはその輸送に当たる交通機関に従事する人々は空を見上げてキョトンとしたに違いない。
振り返ってみると、午前3時に静岡県浜松市の南の海上70kmほど沖を時速50kmの速度で東北東に進んでいたのだから、直線距離でほぼ200km離れている相模湾沖に達するのは4時間後の午前7時ころと言うことになる。
まさに通勤通学時間帯で、もしこの時間に強風と豪雨に見舞われでもしたら…
ところが、台風に近いはずの鎌倉では5時になっても6時になっても雨はおろか、強風さえ吹かず、極端に言わせてもらえば、わが家のカツラの木の枝先の葉はそよとも動かなかったのである。
まったくの音無し状態 !?
自己主張の強い台風にしてはこれは稀有なことと言ってよいだろう。
台風界にも世代交代が起き、新たなスターが誕生しつつあるのだろうか。そんな思いすら頭をよぎる事態だったのだ。
こういうスマートな台風なら「時々遊びにおいで」と声を掛けたいくらいだ。
沈香も焚かず屁もひらず――ということわざがある。
特に良いところもないが、悪いところもなくて平々凡々であることの例えだが、適度な水の供給をしてもらったという意味では、随分と役に立ってくれた。
まさに自然界にあって人や動物たちの前で大暴れして苦しめたりするのではなく、進んで共存という概念を大切にするところなどは実に進歩的で好感が持てる。
台風道 ? を極めた真の達人であったとしか言いようがない。
こういう態度姿勢でやって来るならボクたちは仲の良い友達になれるだろう。
1句浮かびましたナ
豆台風ぬき足さし足しのび足 花葯
台風3号が静かに通り過ぎた後の湘南海岸(6.28 10:36)
見出し写真は湘南海岸から眺めた箱根連山
富士山は稜線をチラッとのぞかせただけ
すぐに変わる富士山の周りの雲の形から複雑で強烈な気流の流れがしのばれる
〝一羽の詩人〟が…
2日前にはまだ開きかけだったのに
帰り道の片瀬橋上空