久しぶりに近所の池と森の公園に行ってみる。
ここのところ当地は湿度が高い上に、盛夏の間中吹いていた南寄りの心地よい海風がパタリと止んでしまっていて、蒸し暑くてかなわない。
季節特有の風が止んでしまう……この一事をもってしても季節が変わり目にあることが分かると言うもので、それでいて気温は相変わらず30℃を越えて31、32℃まで上昇するのだから、暑さに強いはずの夏大好き人間のボクでさえ、いささか辟易気味なのだ。
しかし、森の中は更に暑かった。
風が吹かないところに持ってきて、そもそも風の通りにくい森の中だから、森全体がうだってしまっていて、池面の涼やかさも帳消し同然である。
それでもせっかく来たのだからと、ぐるっと一巡してみたらポツリポツリとツリフネソウが咲き始めていた。
ここにはまとまって咲く一角があり、その先触れのようで、何やかや言いながら季節は正確に歯車を回していることが見て取れる。
それにしても、いつ見てもこのツリフネソウという花の造作は変わっていて、創造主がいたとしたら「なんでこんな形に?」と聞いてみたいくらいだ。
今でこそ、季節になればここに足を向けて、ボチボチ咲く頃だなと楽しみに待つ心があるが、この花の存在を認識したのはそれほど古い話ではなく、わずか6年前の2017年の事である。
山形の友人に案内されて羽黒山神社に詣でた時、二千数百段もの階段を息を切らしながら登っていく途中、見たこともない花が咲いているのに気付き、写真に収めた。
下山してから調べたらツリフネソウであることが判明し、さすが羽黒山には珍しい花が咲くものだと感心しつつ、新たな発見を喜んだものだった。
そして東北から戻ってまだ間もないころ、たまたまこの池と森の公園を通りかかったところ、このツリフネソウが群れ咲いているのを見てビックリ仰天したのだった。
急に咲き出すわけもなく、これまでだって咲いていたはずだが、ボクはそれを目にしながら目にも記憶にもとどめなかったということらしい。
なんてこった…、こういうことってあるんだ…
特段ぼんやり生きてきたつもりもないが、こういう現実を目の当たりにしてしまうと、見逃してきたものはツリフネソウ以外にもたくさんあるに違いないと思わざるを得ない。
もっと重要な事柄を見過ごしてきていたとしたら…
後の祭りだが、そういう思いがよぎって、とても落ち着かない気分に襲われたものだった。
それがこのツリフネソウを見るたびに思い起こす、ちょっと苦い記憶である。
近所の池と森の公園で咲き始めたツリフネソウ
舟を吊り下げているような姿から名づけられたらしいが
グロテスクな魚の類が大口を開けてエサを飲み込もうとしている姿を想像してしまう
あ~ん をしているなら可愛らしいが…
どう見たって「ガォ~ッ」のイメージだものな