この雑木林とやぶが健在なうちは時期が来さえすればたどたどしいウグイスの鳴き声が枕もとにまで届いていたのだが、何せ縄張りを主張する場所そのものが消えてしまったのだから、それ以来、暖かくなって活動が活発にならないとわが家の庭はおろか近くにさえ飛んできてくれなくなってしまった。
初音が遠ざかっていってしまった最大の要因である。
ならばこちらから雑木林に分け入り、やぶに近づいてたどたどしい初音を聴こうと思うのだが、それでもまだ文字通り音沙汰はない。
冬の間沈黙していたウグイスが鳴き始めるのは繁殖の準備のために縄張りを主張するためだが、となると、もうぼちぼち繁殖準備に入ってもよさそうだと思うのだが…
やはり今年の冬の寒さは春の目覚めを遅らせているのだろうか。
去年の初音がいつだったのか調べて見ると、ボクが広町緑地の谷戸の奥で初めて耳にしたのは2月25日だった。
あの時はたどたどしくはあったのだが、ホーホケキョとちゃんと最初から最後まで明瞭に発音していたから、それより少し前からホッホッとかホケッホケッとかホケッケキョとか、それなりに練習を積んでいたと思われるのだ。
きっと早朝などには既に練習を始めていることだろう。そのたどたどしい鳴き声こそ聴きたいのになぁ。
良寛さんにこんな歌がある。
鶯の声を聞きつるあしたより春の心になりにけるかも
朝、初音を聞いた瞬間からもう心持は春に切り替わるというのだ。スイッチが「春」に入っちゃうんですナ。よぉっく分かるなぁ。同感同感!
早くそういう気分に浸りたいものだ。
赤い鼻緒のじょじょを家の中で履いて春を待つみいちゃんのように、ボクも首を長くして初音を待っている。
今年は例年わが庭にやって来ていたジョウビタキの姿も見ていない。
一昨年、大きく茂り過ぎてしまったナンキンハゼを切ってしまい、餌が少なくなる冬場になるとナンキンハゼの実を狙って小鳥が大勢集まって来てにぎやかだったのだが、それも今は昔になってしまった。
加えて花物はパンジーとスイセン以外には咲いていないので蜜を吸いに集まってくる小鳥の姿もないのだ。
やってくるのはヒヨドリで、あろうことか2階のプランターに植えてあるブロッコリーの葉をついばみに来る。
こいつははっきり言って招かざる客で、あっという間に丸裸にされてしまった。
人間だってブロッコリーの茎は食べるから、餌の少ない時期のヒヨドリにとっては大ごちそうそうなのだろうが、冗談じゃない。
光合成が出来なくなってブロッコリーが枯れちゃうじゃないか。
そんな真似はしたくなかったのだが、仕方なく網でプランターを覆ってしまったのだが、見てくれの悪いこと…。
もう少しするとツバキの花が開いてくるだろうが、そうなれば小鳥たちもやってくる。
もちろん嫌われ者のヒヨドリもやって来て小鳥たちを蹴散らすのだが、それももう少し待たなければいけない。
去年はツバキの木の近くに立っていたら突如首筋の辺りでホーホケキョと鳴かれ、びっくりするとともに金縛りにあったように動けなくなり、ウグイスが飛び去るまでじっとしていたのを思い出す。
みんなあと少しだ。
極寒の冬枯れの下で苔の緑がやけに生き生きして見える=円覚寺龍隠庵
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