現役時代のこと。
仕事を頼んだイラストレーターに対するささやかな慰労会でのこと。
いつの間にか話が「子供のころの夏休みの思い出」になり、参加者がそれぞれ熱い思いを語るなど、大いに盛り上がった。
イラストレーターはボクより20歳くらい年上の人で、寡黙でほとんど会話には加わらず、みんなの話をニコニコ聞きながら杯を重ねていた。
思い出話がひと段落すると、イラストレーターはトイレか何かに席を立ったのだが、お店の人と何やら会話をしていたかと思うと、カレンダーか何かの切れ端を手に戻ってきて、持参のペンで何やらサラサラサラサラ書き始め、出来上がったのが見出し写真の絵。
なだらかな山にぽっかりした雲が浮かび、茅葺農家や田んぼが広がる農道のような細い道を帽子をかぶり虫取り網を担いだ3人の少年少女が意気揚々と歩いて遊びに行くところが描かれていた。
みんなの話を総合して1枚の絵にするとこういうことになるんじゃない♪…というイラストレーターからのメッセージで、一同「オオッ♪」と思わず歓声を上げ、痛く感心したものだった。
寡黙なイラストレーターだから、特に何の説明もなかったが、多分自身にも思い当たる記憶の数々が含まれていて、ボクらのバカ話に共感する部分があったのだと思う。
絵そのものは手のひらサイズの小さなものだったが、他の同席者にボクが貰っていいかと聞くと「どうぞどうぞ」と言うものだから、それ以降、ボクの書斎の壁にピン止めしてあった。
それを最近しげしげと見ていたら、インクが薄くなり、何となく日焼けでもしたように消えかかってきたところもあって(特に、左端の農家などは輪郭が消えかかってしまっている)、ちょっと慌てた。
ピン止めの後の穴もなんだか気になる。
コーティングなど施して見るとか、何とか延命策を考え、もう少し長く保存できればと思案中である。
名前はとっくに忘れてしまったが、みんなの話をニコニコしながら黙って聞き、美味しそうに酒を飲んでいた穏やかそうな顔はいまだに目に浮かぶ。
ご存命なら90歳をはるかに超えているはずだが…
子どもの頃の夏の思い出♪
昨日の相模湾と富士山=片瀬西浜
ここ数日、富士山の見え方は雲の位置も含めて似通っている
茅ケ崎東海岸付近
鵠沼海岸
例年だと下旬以降に一度くらい初冠雪があるのだが、今年はどうだろう…