♪ カナカナカナカナ… カナカナカナカナ…
今夏初めての朝の蝉しぐれである。
押しては返す波のように高低と強弱をつけた澄んだ鳴き声が、雲一つない夜明けの大空に吸い込まれて行く。
今朝はこれまでの数日間のような南寄りの強い風が止み、静かな落ち着いた朝である。
最初のうち聞こえてきていたのはヒグラシの合唱だけだったが、やがてウグイスの鳴き声が混じるようになった。
奇しくも澄んだ鳴き声の代表格が早朝にそろって鳴くのを聞くところなんぞは、三文の徳を絵にかいたような話ではないか。
しばらくこの共演が続いて、さらに日が上りかけるとアブラゼミのジージーという、これまた一斉に鳴く声がかぶさってきた。
ウグイス以外の小鳥は美しい鳴き声の競演に遠慮でもしているのか、ほとんど響いてこないのが不思議と言えば不思議である。
今朝は空にひとかけらの雲もない。
ちょうど中天に71%の欠けてゆく凸月が浮かんでいる。
今朝のこの雰囲気を一言で表すなら「清澄な朝」というところだろうか。それほど澄み切っているのだ。
梅雨明け後に太平洋高気圧が張り出して安定した好天をもたらす時の、典型的な真夏の夜明けである。
気象庁はまだ関東地方の梅雨明けを宣言していないが、そのことを非難するつもりはない。
ボクは昨日の観天望気の結果、鎌倉・湘南地域の梅雨が明けたことを独自に、勝手に、単独で、ボクの責任で宣言したんである。
これはまず、ボクの家から見渡せる限りの四方八方の空の様子に加え、波打ち際に立ってはるか水平線の彼方の様子もうかがいながら経験値も加えて導き出した結論である。
確かに、湘南にほど近い丹沢山塊を含めて富士山や箱根方面には雲がかかり、さらにその奥の西の空は厚くて暗い雲に覆われているような気配である。
論より証拠、東海地方の一部では、大雨に見舞われていたようだから、その片鱗の雲の端っこが垣間見えていたということでもあるのだろう。
でも西の雨雲は箱根連山が食い止めて侵入を防いでいるのだ。
それ以外の方角は北にやや陰りは見えるものの、澄み切った真夏特有の来し方経験してきた真っ青な青空が広がっているんである。
これに加えて今朝の様子と言ったら、胸を広げ辺りの空気を思いっきり吸わなければ気が済まないような清澄さである。
朝の、特に真夏の朝の太陽は金色の光の束を大量に放ちながら上ってくる。仏教詩人の坂村真民は身体を壊した時、毎朝この金色に輝く光の束を胸いっぱいに吸い込んで体を回復させていったのだという。
間違いない! ボクの暮らす地域の梅雨は完全に明けたのだ。
5時を過ぎて、夏とはいえまだ柔らかさを保っている金色の光が強い濃淡を浮き彫りにするころになると、これまで聞こえてこなかった小鳥たちの鳴き声が響いてくるようになった。
ウグイスを除いては、小鳥というのは案外寝坊助のようである。
わが家のセミの幼虫たちはぼちぼちお目覚めだろうか。
まだ庭を見ていないが、どこか片隅の葉裏や枝先に羽化したばかりの身体を乾かす姿が見つかるかもしれない。
そんな新しい生命の誕生にはうってつけの静かな真夏の朝が訪れている。
金色の朝の光を浴びる「空蝉」の3番花
今朝4:11の静かで清澄な東の空
これら3枚は昨日、梅雨明けを判断するに至ったわが家上空の空。この澄み切り様はまさに太平洋高気圧のものなのだ
澄み切った青空を映して、わが家の庭も梅雨時とは違った明るさに満ち溢れた
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