確定申告というものが突如思い立って出かけていくような性格のものでないことは、分かっているつもりである。
それでも突如、「そうだ京都へ行こう!」、もとい「そうだ確定申告に行こう!」となったんである。
そう思いつく前は、天気も良いことなので例によって人気のない尾根道でも歩いて初音ウオッチングをして、あわよくば昼酒でもなんて考えていたのだ。
ところが、新聞を読んでいたら見る見るうちに雲が広がってきて、おまけに冷たい風まで吹き出してきたので、さっさと尾根道散策をあきらめた。その代替案として「突如」思い浮かんだのが確定申告だったというだけの話である。
ちょっと飛躍があるかもしれないが、だから、何か文句あっか? というところなのだ。
近頃のボクの場合はいつだって、何かやろうとするときは「突如」なんである。
計画的とか計画性とか、そんなものは糞くらえである。
来し方を振り返ってごらんよ。幼稚園から小学校、中学、高校……、社会人になったらなったで、以前にもまして予定予定とがんじがらめにされてきて、窒息寸前にまで追いやられていたんだろう?
それが今ようやく胸いっぱいに好きなだけ、それもできる限りおいしい空気を吸える境遇に身を置けるようになったんである。
何を好き好んでこの境遇を捨て去れるものか。
「突如」は行き当たりばったりとは違うんである。
近い言葉としては臨機応変、融通無碍、円転滑脱、機動的、柔軟、フレキシブル、ケースバイケース、即応随時、変幻自在、自由自在……などなどに置き換えが可能である。探せばもっとあるかもしれない。
と、まぁ、こういう和気清麻呂なんである。
せっかくこういう展開になったわけだから、確定申告という個別の案件について少しコメントを付け加えておこうと思う。
今回の突如は、これは事前準備のタマモノなんですナ。流れに流されもせず一か所にじっとしているように見える水鳥の水かきがあったればこそ、なんですナ
つまり、源泉徴収票の類とか保険支払い証明? やら、医療費の領収書なんぞの必要書類一式をきちんと集め、分類し、必要なら計算したうえに、ファイルしておいてくれたおかげで、ボクはそれをむんずとつかみ、顔に笑みを浮かべ、両手もみまでして待ち構えている腹をすかせたクモのようなゼイムショインにちょっと聞きながらパソコンのキーボードを打ち込んでいけばいいのである。
この下準備を妻がやってくれていたおかげで、ボクの杞憂はどれだけ待てばキーボードに触れるのかということだったのである。
去年の例を示せば、書類の整理係のところにたどり着くまでに3、40分。さらにパソコンが開くのを待つのに数十分。それも、係員の手を煩わせることなく、自分で打ち込める人はいますか~という呼びかけに呼応したから、前に並んでいる人を飛び越えていけたのである。
都合2時間を超す大仕事だったんである。
しかるに、今回はすべて1時間もかからないうちに終わってしまったのである。
空いていたというのが最大の理由だが、キツネにつままれた感じで、家を出るときに「お駄賃にランチ代は出すわよ」と言われていたのを実践すべく、駅の反対側に渡って山形県人が開いている小さな蕎麦屋に入ったのである。
中華麺を使った山形独特のつったい鶏そばを注文し、中止した尾根歩きで目論んでいた昼酒も、山形は酒田の酒蔵の「上喜元」の「神力」という初めて出会う酒を飲んでみたら、これが納税者の義務をたった今果たしてきたのだという善良な小市民の小さな喜びに包まれた身体の五臓六腑にしみわたっていったのである。
何せ3万円を少々超える還付があることも分かったからね。
どうです、まさに絵に描いたような臨機応変、融通無碍、円転滑脱、機動的、柔軟、フレキシブル、ケースバイケース、即応随時、変幻自在、自由自在……でしょう?
もうひとつ「やりたい放題」も加えておくか。
確定申告のお駄賃は山形のつったい鶏そばと、これまた山形・酒田の日本酒上喜元の「神力」
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