鎌倉の秋の寺巡りその4は二階堂の杉本観音こと杉本寺。
天台宗の寺で天平6年(734年)の建立だから鎌倉幕府がこの地に誕生するはるか以前のことで、鎌倉で一番古い寺として知られる。
参道や境内に林立する白い幟旗と茅葺屋根の素朴な本堂が印象的な寺で、時々寄りたくなる好きな寺の一つ。
地味なせいか、観光客の姿が少ないのも気に入っている。
光明皇后が大臣藤原房前と僧行基に命じて建てさせた寺で、行基自ら掘った十一面観世音に加え、時代を経て慈覚大師と恵心僧都がそれぞれ十一面観世音を刻んで安置し、三体の十一面観音が秘仏本尊として祀られている。
三秘仏は本堂とつながったコンクリート製の防火建物の中に安置されているが、本堂に上がらせてもらって頼朝が寄進したという運慶作の十一面観世音の背後に回らせてもらって奥の暗闇の中を覗くと、かすかにその存在が浮かび上がってきて、とても厳粛な気持ちにさせられる。
今回はコロナのせいで本堂には上がらせてもらえなかったのが残念だが仕方がない。
行基菩薩はもちろん慈覚大師も恵心僧都も歴史教科書に登場するなじみ深い僧侶だし、仁王門の仁王像も運慶作だったり、平安、鎌倉時代のスターたちの足跡が残された寺でもある。
仁王門への階段
仁王門
阿形像
吽形(うんぎょう)像
東大寺南大門の金剛力士像建立の総指揮を執ったのが運慶で、杉本寺の仁王像も運慶作と言われれば、なるほど、作風が似ていることが良く分かる
今回しげしげと眺めてみたが、迫力があるのにビックリした
東大寺仁王像の建立は建仁3年(1203年)の事だそうで、杉本寺の仁王像とどちらが後先なのかはちょっとわからないが、両者が兄弟だということは間違いない ♪
仁王門を通り抜けるとまた階段
苔むし、擦り減った石段は通行禁止になっている
左脇に作られた階段を登ると本堂横に出る
南北朝時代にこの寺の周辺で戦があり、五輪塔群はその戦死者を敵味方の区別なく葬ったものだという
通行止めの階段の上から見た眺め
仁王門を後ろから
境内が急な斜面にあり、しかも広くないせいもあってか花の少ない寺である
おまけ
以前、買ったものだけど、こんな般若心経が売られていた
字の読めない人のために作られたもので、最初の一行は「摩訶般若波羅密多心経」と書かれている
「摩訶」はなんと「釜」が逆立ちしているから「マカ」で「波羅」はへその付いた「ハラ」…
ことほど左様にもうナゾナゾとトンチの世界の知恵比べみたいな中身になっていて、ほとんどチンプンカンプン
想像力をたくましくしないとちっとも読めないシロモノになっていて楽しい ♪
ちゃんと杉本寺の印が押してある