円覚寺に行った際に撮った写真を参考に、大屋根の重なりと、それらを取り巻く塀が織りなす別方向のリズムを図案化したところまでは何とか漕ぎつけてのだが、その先がどうにも動かなかったのである。
まず、なるべく単純にと目論んだものの、版木は最低でも3枚は必要である。
ということは、3枚の版木を1枚づつ彫り、完成品1枚につき3度もバレンを使わなければならない計算がチラついて、200枚の年賀状を出すとすれば、600回もバレン作業が必要なのに、そんな気力がどうしても沸いてこなかったのである。
で、10月にウインドウズ10を搭載した新しいパソコンに変えたばかりなのだが、このパソコンに付録のようについてきていた年賀状ソフトを使ってみる気になり、酉年の図柄を見てみたのだが、どうにもいけない。
ピンとくるものどころか、まぁこのへんで妥協しておくか、というようなものすら見つからない。そこで、妻なら少しは容認する図柄があるかもしれないと思って見てもらったのだが…。
ところがお互い美意識には一家言持っているものだから、「こんなダサいのを使うつもりなの? あたしショックだわ」などとさんざんこき下ろされてしまって、やっぱりなぁ~と思い直したのである。
とはいえ、百歩譲って版画を彫ったとしても、刷る気持ちがどうしても沸いてこないのである。
これはもう気力の問題で、そういう気持ちになれないのだからどうしようもない。
現役時代は、忙しい仕事の合間を縫って、300枚近くの年賀状制作に取り組んでいたのとは大違いである。
おそらく気力の充実具合が違うのだろう。リタイア生活とはこういうものなのか。
どうにも爆発的な気力というものがなかなか沸いてこないのである。おそらく、これが老境というものなのだろう。ついにそういう領域に足を踏み入れたのかもしれぬ。
そんな、ちょっぴり悲しくほろ苦い気持ちでいたところ、突如アイデアが浮かんだのだ。
以前撮りためておいた写真の中に、稲村ケ崎から獲った写真があるのを思い出したのだ。お気に入りの1枚なのである。
稲村ケ崎の階段を登り切った展望広場にある十数本の松の中に、たまたま傾いて鳥居のような形を作っている2本の松があり、その2本の足の間からは相模湾に浮かぶ緑の江の島、そして江の島のすぐ後ろには真っ白な雪を腰までかぶった富士山がデ~ンと座っているのである。
真っ青な空と青い海、松と江の島の緑と富士の白雪。わずか3色の世界が織りなす絶景。何といっても図柄がおめでたく、素晴らしいのだ。お正月にふさわしい図柄なのだ。
この写真を利用して、あっという間に図案は完成した。
外出から戻った妻も合格点を出してくれ、あとは年賀状を買いに行き、一気に印刷にかかるだけの話である。
20日までにはすべて終わるだろう。ヤレヤレである。
横浜イングリッシュガーデンのつるバラのせん定の助っ人も期待されているし、わが家のバラのせん定も待っている。
現役時代とは違った忙しさに身を置いていることもまた確かなのである。
やっぱり師走なのだ。走らなくっちゃあ。
横浜イングリッシュガーデンではバラに交じって糸を束ねたような菊が咲いている
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