平方録

う~ 頭がパンク…

夏期講座最終日はあろうことか、早朝から梅雨本番を思わせる雨。
おまけに長袖の上にもう一枚はおらなければならないくらいの肌寒さ。
咲き始めたアジサイがしっとりと濡れて…
そんな事はとりあえずどうでもいいのであって、夏期講座というものは晴れて暑くなくてはならないんである。やれやれだ。

横田南嶺管長の「無門関」提唱は第28則。
これまで毎回7行ほどだったのが、最終日は27行もある。
余談の入らないぎっしり詰まった講義となって、時間はあっという間に過ぎ去ったのはうれしいことである。
それくらい集中して聞き入った。
要約すると、これまで様々に学び来て分かったつもりになっていたことどもが、如何にわずかなものだったのか、という事に気づくことの大切さ。そのことに「気づく」ことがすなわち「深さ」に通じて行く。

言葉で言えば何となく理解できそうだが、では実際のところはどうなのか。気がつかないことに気づくなんて、そう生易しいことではない。
常に学び続け、考え続けるという事ですかねぇ。「深い」んだなぁ。

2時間目は聖心女子大哲学科の富原眞弓教授の「ムーミンを哲学する――考えないことも、考えることなのだ」。
1時間目の続きのようなテーマではないか。
お馴染みフィンランドのトーヴェ・ヤンソンのムーミンの翻訳者でもある。
ムーミンってのはカバのようなそうでないような、ほのぼのとした、日本でも人気のキャラクターである。

正直いって、講義の内容はどうでもよかった。少なくともワタクシメには。
ほのぼのと、幸せそうな日常の暮らしを描いているようで、北欧の小さな国が強国に翻弄される不安や、恐れ、あるいは個人的な悩みや不安が物語には反映されている、と説明されれば、それはそうでしょうよと思わざるを得ない。
でもそれはムーミンに限ったことではないし、物語を紡ぐ多くの作者には多かれ少なかれ、共通して流れているもののような気がする。
まぁ、学問というものは様々な事柄をテーマにするから、ムーミンもそのひとつなんだろう。
この日は会場が満杯になるほどの人で、女性も目立っていたので、ムーミン目当ての人も多かったのではあるまいか。
かくして「深み」どころか、よどみに漂う羽目に。

3時間目は批評家で随筆家だという若松英輔さん。この人の存在も初めて知った。今回の夏季講座の講師は未知の人が多い。
テーマはヨーロッパをはじめとする外国に禅を紹介した円覚寺ゆかりの鈴木大拙で、題して「大悲の人・鈴木大拙」。
大拙が著した膨大な著作から、さまざまに引用してきて解説して行くのだが、これも哲学的な話で1、2時間目の続きのような講義だった。

禅というものが東洋的な精神に基づいているというのは一部では正しいが、西欧的な考え方やキリスト教の中にさえ、禅的なものは存在していると気付き、それをいくつか探し出してきているのも大拙である、というところは「へぇ~」でしたな。
その好例としてゲーテの「悲しみの中に そのパンを食したることなき人は、真夜中を泣きつつ過ごし、早く朝になれと待ちわびたることなき人は、ああ汝天界の神々よ、この人は いまだだ汝を知らざるなり」を例示している。

「涙のうちに種蒔く者は、喜びのうちに刈り取る。種を携え、泣きながら出て行く者は、束を携え、喜びながら帰ってくる」
これは旧約聖書の一節で、これも例示の一つだそうだ。
なるほどね。言われれば双方ともに禅的なところがあるにはあるように思える。
そうして大拙は「禅は東洋の専売特許ではない」と言い切っているんだそうな。

オイラは中学生の時に背伸びをして鈴木大拙の本を手にしたのが最初である。
題名も忘れてしまって、今は手元からも消えてしまったが、読んでチンプンカンプンだった記憶が残っている。
それでも高校3年生の夏休みに坐禅をしたいと思い立って円覚寺の門をくぐったのは、チンプンカンプンの中にも何か呼び覚ますものがあったからだと思っている。

今回の若松講師の話もよく分からなかったが、大拙の著作で読むんだったら「日本的霊性」と「仏教の大意」を挙げた。
まずは本屋で立ち読みだな。

かくして、例年の梅雨明け直後の夏季講座から、梅雨入り前の夏季講座に変わったわけだが、やっぱり気分がなぁ…
来年も6月最初の土日を含む日程だとか。これで定着させるつもりらしい。加えて、8人の講師が登場したわけだけれど“裏作”だったような気がする。

この日はおまけも付いていて、個人的なことだが妻が上野で開かれている「カラバッジョ展」を見たいというのでお供してきた。
カラバッジョは若冲ほどではないものの、込み合っていたが、イヤホンガイドを借りてぱぱっと見て、私だけそこを抜け出して国立博物館で開催されている「黄金のアフガニスタン―守り抜かれたシルクロードの秘宝」を覗いてきた。
日本に持ち込まれた秘宝の数々だが、それ故に破壊からまぬかれ、返却することが決まったが彼の地の政情ではすぐにというわけにもいかず、しばらくは各地を巡回するんだそうな。

いろいろなものを詰め込んで、頭も感性も爆発寸前。いやはや、こういう日もあるんですな。


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