結局"隠れハリス"なんてどこにもいなかったんだ。
心の中ではA候補に投票すると決めていても、周囲がB候補の強い地盤だったりすると、なかなかすんなりとは意思を表明できず、世論調査などでどういう投票行動をするつもりかと問われても「決めていない」というならまだしも、「Bに投票する」と答えてしまうような有権者の存在を指した言葉だ。
2016年の大統領選でヒラリーを破ったトランプの当選の陰には、あまりに型破りで過激な主張を繰り返したトランプを支持するとは言えず、それでも投票用紙にはトランプと書いた有権者の存在が指摘された。
女性でアフリカ系、しかもアジアの血も混じる副大統領への支持をはっきり言えない有権者もかなりの数に上るだろう、そういう有権者は世論調査には現れにくいから、実際の有権者の支持動向は両者拮抗というより、隠れた支持層を持つ女性候補側に有利に働くのではないか…
それが"隠れハリス"の正体であって、勝敗を決定づける重要な要因の一つになると、一部のアナリストやウオッチャーたちの間では指摘されていた。
しかし、見事にその予測は外れ"隠れハリス"など、そもそも存在しなかったことが証明されてしまった。
"もしトラ"を心配し、トランプ的な考えを真っ向から否定してアメリカ流の民主主義を守りたい、世界をリードしたいと考える人々が期待した"白馬の騎士"だったが、そんなものは幻想でしかなかったということだろう。
そもそも願望を膨らませた末にできた虚像に頼ろうとすること自体、この選挙戦の結果は見えていたということにほかならず、トランプの勝利というより、新しい候補を探しもせずに老いを指摘されていた老人をそのまま推し、挙句に候補者差し替えを迫られたドタバタ民主党の戦略的失敗で、負けるべくして負けたのだ。
それにしても今回の結果には心底がっかりした。
豊かな富と強大な軍事力を保持する超大国が自国ファーストだなんて……
時計の針は再び逆に回り出し、世界中が混乱に陥るようなことが起きたとしても、それを歴史的必然と受け止めるしかないんだろう。
人類は試練の時を迎えようとしているのではないか。
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