中学生になった姫が携帯電話を買ってもらい、さっそく「ラインしよ !」と連絡してきた ♪
姫に会ったのは彼女がまだ5年生の時である。
その年、宇都宮から愛媛の新居浜に引っ越して、転校先で早速運動会のリレーのメンバーに選ばれたというので、5月の下旬にはるばる応援に駆け付けて以来だから、ほぼ2年間も会っていない。
もっとも、いまはスカイプとかフェイスタイムとか無料のテレビ電話があるから、顔を見ながら話は出来るのだが、実際に同じ空気を吸っていなければ目の中に入れようと思っても入れられないじゃないか。
こんな状態が一体いつまで続くんだと、途方に暮れる思いだが、とりあえず姫と直接やり取りできるようになった事実は大きい。
ただ‶秘密のやり取りもしよう〟と密かに考えていたのだが、母親はわがチョイワル老人の下心を汲み取ったかのようにグループラインの設定にしてしまった。
娘に良からぬことを焚きつけたり、そそのかしたりされやしないかと警戒したらしい。
まぁ、姫もボクも最初の内は大人しくしていた方が身のためなので、素直に従うが、真実の社会の一端をのぞかせるのも祖父としての重要な役目だからな…
やがてコロ公も乗り越える時が来るだろうし、そうなれば姫が一人でわが家まで遊びに来る日も遠くないだろう。
彼女にはまだ原宿の竹下通りがファッションの聖地で、行きたくてうずうずしているし、最近はこれに韓流が加わって「新大久保にも連れてって」とリクエストが増えているのだ。
「姫—ジイジ間」専用の独立したラインを開通させるのはそれからでも遅くはなかろう。
昨日は久しぶりなのでライン開通に合わせ、フェイスタイムで顔を見ながら話を始めると、幼稚園に通っている妹君や母親が割り込んできて、こっちも山の神がこれに加わってボクと姫をそっちのけにして世間話を始めるありさまで、当分は秘密の交信など期待できそうにないのも確かである。
中学生になった姫は塾に通い始めたそうで、午後10まで塾に缶詰めになっているらしい。
10時なんてボクは寝る時間だぞ。
中学で教える内容なんて学校の授業を集中して聞いていさえすれば理解できることしか教えていないはずだが。
なんだか可哀そうになってくる。
加えて中学校ではテニス部に入ったそうだから、かなり大変だと思う。
入学祝に腕時計をプレゼントしたお礼のハガキには「文武両道を目指してがんばります」と書かれていた。
「じいじ、じいじ」とボクの後ろをくっつき回ったり、寝る時には枕もとでしりとりの相手をさせられたりしたが、その姫がいつの間にかそんな言葉を操るようになった。
そのことが想像しにくいのも正直なところで、その分、新鮮な驚きでもあるが、成長ぶりは目覚ましいものがあるようだ。
中学校生活は「楽しい!」と言っていたのが何よりで、しかも、いきなり学級委員に選ばれたんだそうだ。
新しい環境で新たな出発をする新入生を支える目的で学校は様々な仕掛けを用意しているらしく、学級委員もそのうちの一つで、いくつかの小学校から集まって来てお互いがまだよくわからない時期は小学校から推薦のあった生徒を選んでいるらしい。
それで選ばれたんだそうだが、小学校ではクラスのまとめ役として認められていたということの証明で、ジイジとしては「ふぅ~ん ! あのお転婆娘がなぁ~!」という思いである。
なんだかボクの方が色々教えられそうで、叱られもしそうだぞ…
(見出し写真はわが家の「空蝉」)