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平方録

林間煖酒焼紅葉

向こう一週間、南関東の天気予報には雲と傘のマークしか並んでいない。

10月と言えば秋の中でも天気が安定し、俗に言われる「青く澄んだ高い空」の日々が続くイメージなのに…

日によってはいまだに短パンと半袖Tシャツ1枚で過ごせる日もあり、季節感の変調は年ごとに強まってきているのは間違いない。

そんな状態をボヤキつつ、ベランダに出て周囲の低い山々を眺めていると、2つの漢詩が浮かんできた。

元より鎌倉の紅葉は12月にならないと始まらないが、それでも夏の盛りのころに眺めていた木々の緑はすっかり色あせ、そろそろ終い支度に取り掛かる雰囲気が漂う。

わが脳裏に深く刻まれていた漢詩はいずれも紅葉に関する詩である。

一つは白楽天の「送王十八帰山寄題仙遊寺」の一節にある「林間煖酒焼紅葉 石上題詩掃緑苔」。

「林間に酒を煖めて紅葉を焼(た)く 石上に詩を題して緑苔を掃う」という和漢朗詠集の中の有名な詩句で、日本の秋の心を端的にとらえた詩句として日本人に長く愛誦されてきていて、ボクも虜にされた一人と言っていい。

中学生の時にこの詩句と出会い、まだ本当の酒の味がわからないうちから、これを口ずさむことで大人に近づいた気分になったのを覚えている。

もう一つは、暗唱するたびになんだか泣けてくるような気持ちにさせられ、心のひだに染み入ってくるような詩として脳裏にしまわれている七言絶句である。
杜牧の「山行」。(これは28文字なので全文掲載)。
 
遠上寒山石径斜  遠く寒山に上れば 石径斜めなり
白雲生処有人家  白雲生ずる処 人家あり
停車坐愛楓林晩  車を停めて坐(そぞ)ろに愛す 楓林の晩(くれ)
霜葉紅於二月花  霜葉は二月の花よりも紅なり
 
こちらには酒は登場しないが、ボクならポケットかリュックには必ず小さくても酒瓶は持っていくだろうね。
今秋、どこかでこういう気分に浸りたいものだ。
 
 

近所の民家の土手でこの花が咲いているのを見かけた


始めて目にするクロバナホトトギスらしい


枯葉との対比が誠に印象的でもある


紫っぽいところがまた何とも言えない雰囲気を醸している


一つ一つ表情が違っている


うっとりはしないけど、どこか胸騒ぎを誘うような…不思議な感じの鼻である


すぐ脇にはの本固有種のホトトギス


こちらは見ていても心が騒ぐことはなく、落ち着いている感じ


わが家の庭では今これが咲いている


水色が印象的なタイワンホトトギス
 
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