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平方録

ゴールドフィンガーとナイフ

遅れていたパンジー苗の植え替えを終わらせた。

ピートバンという種蒔き専用の苗床にびっしりと生えてきた本葉が出たばかりの小さな赤ちゃん苗を1本1本丁寧にポリポットに植え替えていく根気のいる作業だ。
最大の注意点は苗床から如何に根っこを傷つけずに取り出せるかで、もちろん根っこに用土が絡みついていても問題ないし、むしろその方が根が傷まなくていいのだが、何せ狭い苗床にひしめきながら芽を出すものだから前後左右の株の根っこ同士が絡み合ってしまっている場合が少なくなく、神経を使うのである。

小粒の赤玉土5、腐葉土3、完熟たい肥2の割合で移植用の土を準備し、ピートバンから苗を掘り起こすための小型ナイフを用意する。
こういう作業を始めた30年前はピンセットを使ったりしていたが、いろいろ試行錯誤の末に小型ナイフに落ち着いたのだ。
指とナイフ、これが最強のツールである。

首尾よくポットに移し替えることができるとすぐに、用意したトレーに張った水の中に入れて腰水させ、ポットの底から用土に水分を行き渡らせる。
こうすることで根がすぐさま無理なく水分を吸い上げることができ、移植が少々雑でも直ちに活着する。
ジョウロなど使って上から水を撒くと苗に直接当たってしまって倒れたり、用土が水圧で不自然に締まってしまったりして具合は良くないのだ。
下から潅水させれば用土は適度に締まり、根も自然な形で給水が始められるという寸法である。
こういう方法で丁寧に移植すると、ダメになってしまう苗は苗自体に問題がない限り100%すくすく育ってくれる。

かつて、前の年やその前の年に使用した後、捨てずにとっておいたポリポットに移し替えたことがあって、その時に苗の成長が阻害され随分と苗を枯らしてしまったことがあった。
使いまわしたポットに何か植物の成長には害を及ぼす雑菌が付いていて、病気にかかってしまったらしい。
消毒作用のある薬を散布してみたがほとんど回復できなかったのはショックで、苦い経験をした。
以来、ポリポットの使いまわしは止めている。

ただ、ポリ製品など石油から作られた品々が地球環境に与える負荷の大きさが懸念されている昨今、使い捨てにはいささかの逡巡があり、使用後は丁寧に洗って消毒しておけば使いまわしも可能だろうか…と考えないではない。
今後の検討材料である。
というか、やるかやらないか、その決断一つなのだろうが…

移植を終わらせた苗は3種類で合計113本だった。
芽を出した時期やその後の生育にばらつきがあり、まだ双葉だけのものも含めて苗の大きさや成長程度も様々だったが、ただの1本もダメにすることなく無事に移植を済ませた。
何せゴールドフィンガーとナイフを駆使したのだから。
今朝で移植後3日目になるが、すべてうまく活着してくれたようでうれしい。
ただ関東は来週の火曜日一杯まで雨や曇りの予報で、この間まったく太陽の光を浴びられないとしたら心配である。

首尾よく育ってくれれば、微妙だけれど、年末には最初の花が見られるかもしれない。
ベートーベンの交響曲第6番「田園」のCDを繰り返し聞きながら作業したので、おっとりとした美しい花が咲くはずである ♪



植え替え用の用土を入れた容器に板を渡し、ピートバンの苗床から丁寧に苗を取り出してポリポットに移し替えていく
左端の小さな資格の網目のものはポリポットの穴をふさぐ、やはりポリ製品の網  そして隣のナイフがピートバンから苗を取り出してくるのにとても役に立つ
移植を終えたポリポットはここには写っていない水を張った容器に浸けて底から潅水させる
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