遮るもののない眺望の中で、行き交う船も青い空も白い雲も見えないだろうが、そういう場所の雨の露天風呂も悪くないだろうと思ったのだ。
三浦半島の尾根筋を切り開いて作られた自動車専用道路には霧ほどの濃さはないものの、煙雨か靄かよく分からない、とにかく視界を遮るものが垂れこめ、乳白色の世界を作り出している。
こういう条件の悪い道路では爆走してくる車は少ないが、それでも制限時速をやや上回る程度で大人しく走っていたボクをあっという間に抜き去っていった軽ワゴンがいたが、命知らずのやつである。
重心を安定させた4輪駆動ならいざ知らず、軽ワゴン車の足回りなんてたかが知れてるはずだぜ。死ぬのは勝手だが、他人を巻き込まないようにしてほしい。
念のためライトをつけたまま走る。
フォグランプがついているのだが、スイッチがどこにある分からなかったのだ。
視線を外して探すわけにもいかない。以前にも同じようなことがあったのを思い出した。
学習しきれていないようである。
わが家からは小一時間である。
駐車場に入ってびっくりした。とても混んでいるのだ。
これまでに何度も来ているが、はじめてお目にかかる混みようなのだ。
水曜日に休む職種は車のディーラー、住宅メーカーなどが思い浮かぶが、早めの夏休みという人もいるのだろう。
珍しく中高校生の姿もあったのは、さすがに夏休みである。
まさか友達同士でプールの予定を雨で温泉に変更したなんてジジイ臭いことはしないだろうから、親と一緒のはずである。
幸いにも露天風呂や他の風呂も混みあってはいなかったが、食堂やロビー、休憩所には人があふれていたから、早めに来て既にひと風呂浴びてくつろいでいる連中だろう。晴れていれば他に散らばっていた連中の当てが外れ、仕方なく温泉でも行くかとなったんだと思う。
人のことは言えない、ボクもそうなのだから…
露天風呂からは猿島がぼんやりと見えたから視程は1キロ以上あるようだが、横浜港のベイブリッジもランドマークタワーも見えず、もちろんスカイツリーは靄と霧の彼方である。
こういう視界の悪い時の船の航行は極端に減るのかどうか。
何せ危険さで音に聞こえる狭隘な浦賀水道航路を通り抜ける必要があるのだ。
晴れて視界が良くたって大型船はそろりそろりとおっかなびっくり進むのだから、レーダーがあると言ったって視界が悪い時は走りにくいはずである。
そんなわけで湯に浸っている間は1隻の船影も見なかった。
晴れていても正午前後の船の行き来は少ないのだが、視界が悪くてはなおさらなのだ。
露天風呂には39度の湯と42度の湯の2つがあって、39度のぬるい湯には屋根がついていることもあって、そこで40分超、じっと首まで浸かって動かなかった。
浮力があって湯の中で坐禅は組めないから、それに近い姿勢を取って安定させ、目を閉じていると最初のうちは他人の会話も聞こえていたが、そのうち風の音や水のはねる音くらいしか聞こえなくなっていく。
吹きこんでくる細かな雨粒と風が顔に当たって心地よい。
何か考えていたとは思うのだが、今となってはそれも思い出せない。
つるバラのニュードーンに2番花が付いた
こちらもつるバラのローゼンドルフ・シュパリース・ホープの2番花
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