そして口中一杯にあの独特のほろ苦さが充満する!
年が明けてわが家の東側のフェンスに這わせているつるバラのせん定をした時に、日当たりの良いとは言えないところにフキの葉が出ているのを見たばかりだったのだ。
フキノトウが顔を出すのはいつ頃かなぁと以来時々気にかけていたのだ。
そして葉の付け根に7~8個の小さなトウが出来つつあるのを現認したのは半月くらい前のことだった。
その小さなトウを指先で触ってみたが、膨らみが足りない気がして取らずにそのままにしておいたのだ。
もういい頃かもしれない、そう思ったのは昨日の気温がぐんぐん上がり、極暖の肌着も脱ぎ捨て、生地の厚いGパンも普通のものに変えて早春の身軽な装いへと変身を遂げたこが背中を押したと言っていい。
やっぱり最初の時と同様に、指先で膨らみを確かめてみたら随分とふっくらとしてきていたのだった。
取りそこなうと、それこそ〝トウが立って〟しまう。そうならないうちに春の喜びをまず舌でも味わいたいではないか。
ボクが〝収穫〟したのは5個。外出から帰った妻がもう少し取り増してきてフキ味噌にしてしてくれたのだった。
毎年こうやって庭の片隅に顔を出すフキノトウの恩恵に浴し、わが家の早春を演出してくれる懐かしい味覚なのだ。
かくして、今年もいつもの年と同じように春は静かに、しかも確かな足取りで近づいてきつつあるようである。
このフキノトウを採る前に、南西の柔らかな風に誘われて初音を求めて尾根道や谷戸の奥の木道をたどって聞き耳を立てたのだが…
先週は雨天曇天に加え、姫のところに泊りがけで出かけていたので運動不足もあった。
それで2時間半かけて尾根筋をたどり谷戸に下りるアップダウンを繰り返し、心肺機能に喝を入れ足腰の筋肉に緊張感を与えてきたのだ。
大概、どんな世界にも他に先駆けて一番乗りをしようとするひょうきん者というかお調子者がいるものだが、さすがにウグイスの社会のひょうきん者もお調子者もまだ出番とは思っていないようである。
今週は高めの気温で推移するという予報が出ている。
とするといよいよ間近だという気がするのだが…… 一番乗りはどこの誰だ?
夕餉に供されたフキ味噌を懐かしく味わいつつ、ほろ酔い加減が増すにつれ、春の足音を聞く喜びに心が弾んでいく。
早春の香り、フキノトウ
フキ味噌のほろ苦さは早春の味
広町の深い森ならそろそろ初音が聞けると思ったのだが…
木道の奥から幼稚園の年長組と思しき一団が板を踏み鳴らし、にぎやかに〝さえずり〟ながら通り過ぎていくのをウグイスたちもじっと眺めていたことだろう
小川の辺ではまだオムツも取れないような保育園児たちがはしゃいでいるのもウグイスたちは知っている
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