世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし
この世の中にサクラと言うものが全くなかったら、さぞや春の気持ちはのどかだろうに…
在原業平はそう詠んで、逆説的にサクラに寄せる深い愛着の心を表現した。
その気持ちはよく分かるし、実際、逆説ではなく、あっちのサクラこっちのサクラが気になり、この目で確かめたくて、まずは歩いて30分ほどのところにある保存緑地の広町に「大桜」を訪ねることにした♪
ソメイヨシノもいいけれど、ヤマザクラの魅力はそれに勝とも劣らない。
山に分け入れば声を上げずに高笑いしている花たちに会うことが出来る♪
生憎、カップ酒の買い置きが無く、途中に1軒の店もないことから酒はあきらめ、握り飯だけを持って家を出た。
北の国に雪を降らせ、当地にも冷たい雨を降らせた低気圧が去って青い空が広がったので、高い木々の梢の先で咲く花が映えることは間違いない♪
樹齢200年超といわれるオオシマザクラで「大桜」と呼ばれる広町緑地のシンボル的存在
五分咲きといった感じ
樹勢は旺盛のようで花付きは悪くない
眺めている間、ヒヨドリやタイワンリスがしきりに花を食べていた
日曜日だったせいもあるが、いつもは人気のない所なのにひっきりなしに人が訪れていた
大桜の左隣にも若いオオシマザクラが育っていて、肩を並べかけている
大桜への尾根道でふと見上げて思わず「おぉ♪」と声が出た
あちらこちらで頭の上で人知れず花が咲いていて、下や前ばかり見ているだけでは気がつかない
普通は足元に散った花びらで咲いていることに気がつくのだが、咲き始めの時期はまだほとんど落ちていないので、気付かないまま通りすぎることが少なくない
山の中に分け入ってしまうと咲いていることに気がつきにくいものだから、時々、顔を上げて辺りを見回したり、後ろを振り返ったりすると「発見」出来ることが多い
ヤマザクラは黙って咲いているものなのだ だから次のような名句が生まれる
声なくて花やこずゑの高わらひ 野々口立圃
こっちにも…
あっちでも…
あんな高い所にも…
こちらは手が届きそう…
菜の花の上にも…
すっかり堪能して…
息も絶え絶えに急階段を這い上がり、肩で息しながら周りを見ると…
このヤマザクラに見送られて広町を後にした
今日も良い天気が続くらしい♪