台風19号で順延した句会を東京で開いた。
普段は鎌倉駅前のとあるビルの3階の1室を借り切って酒を持ち込み、気楽にガヤガヤやっているのだが、気分転換の意味もあるのだ
集合場所は浅草雷門。花のお江戸は賑わっているけれど、わけてもこの雷門周辺は大賑わい。しかも人種のるつぼ。欧米系にアジア系、そして国籍不明の一群…
「お~い、ニホンジンはいるのかぁ~い」と叫びたくなるくらい
この雷門の正式名称は「風雷神門」。向かって右に風神、左に雷神がにらみを利かしているが、何故か風の神の存在は薄く江戸時代の川柳に「風の神 雷門に 居候」ってのがあるくらい
そして提灯の底には龍が彫られている
龍は水の神様で寺や門を火災から守る意味を込めて描かれるのだという
つまり雷門は風神、雷神、水神によって守られているという訳なのだ
大混雑の仲見世通りを通り過ぎると比較的人の姿がばらけて空間が現れる
それでも本堂に上がる階段は渋滞していてなかなか動かない
何のことはない、その上にある賽銭箱にお賽銭を入れる人で渋滞しているのだ
外国人も含めてみんな大人しくじっと並んで待っていたのには感心した
郷に入っては郷に従えってことですかな
それに気づいたボクは列を離れ、横のガラガラの階段を上がって本堂に入って本堂の賽銭箱に小銭を投げ入れて挨拶してきた
本堂の天上には天女の絵が描かれ
やはりこちらにも水の神の龍がにらみを利かせている
爪の数を数えると4本…
日本の寺に描かれている龍の爪は3本が多い。これは古来、朝鮮半島を経由して日本に伝わることの多かった大陸文化が、中国では5爪のものが朝鮮半島に渡る段階で1本減り、さらに海を渡って日本に届くと2本減って3本になってしまっていたという訳なのだ
これに疑問を感じた小泉淳作画伯は今から10年ほど前に鎌倉・建長寺仏殿の天井画を依頼されて「なにするものぞ」と5爪の堂々たる龍を描き、「日本の龍が5爪で何が悪い」とエッセイに書き残している
同じ鎌倉の円覚寺の仏殿の龍は伝統にのっとり? 3爪の龍である
浅草寺の龍の爪が3本ではなく5本でもないってところの理由は知らない
堂々たる五重塔
大江戸新景・浅草の東塔(左)と西塔
句会の会処は仲見世通りと並行するオレンジ通りから1歩入ったこの寿司屋
名前が気に食わないけれど、ここを選んだのには理由があって…
同人の貧乏旅行作家のS氏の友人のミャンマー人とバングラディシュ人が経営する寿司屋なのでアリマス
はるか十数年前のミャンマー軍政時代、その圧政を嫌って日本に逃れてきた難民が雌伏の時を経て在留資格を得、妻子を呼んで仲間たちと共に今年5月に開店にこぎつけたお店なのだ
S氏になぜミャンマーとバングラなのか聞くと、国は2つに別れてしまっているが、もともとは国境地帯に暮らしている同じ民族で、いわば一族、親戚のような関係なのだという
バングラ出身の経営者の1人は日本の大学を卒業していて、話をしてみるととても思慮深そうで、教養もあり、こうして繁華街に店を出せるというのも、さもあらんと思った
肝心の寿司も堂々たるもので、ネタがいいのだと思うが美味しかった
令和の新元号になってからの開店だそうだからこの店名にしたそうだが、その点がちょっと気に入らない
しかし、それは個人的な好き嫌いだから寿司の味や店の品格とは別物である
堂々たる品ぞろえ
「〆さば」とか「つぶ貝」という文字に若干の違和感はあるが、日本の大学を出ているから漢字も不自由はないようだ
句会を終えて最年長の81歳になる大姉御が「神谷バーに行きましょうよ」と誘うので、二次会へ繰り出したが、件のS氏が「地下鉄の横の古びた飲み屋街に1度行ってみたいんだけど…」というので、東武電車の浅草駅前の地下にもぐりこむ
休みの店が多かったが、絵の中央に描かれている「たんぼ」という店に入る
写真に撮るとこんな感じ 時間が5時半くらいだったのでまだ人の姿もまばらで
どこの店もまだ空いていた
一緒に店をやっていた御主人を2、3年前に亡くしたというおかみさんは夫婦そろって北海道の倶知安出身だそうで、列車の行き先表示はご主人が手に入れてきたんだそうな
すすけた換気扇が歴史を物語りますな
場所柄、プータローが暖と空き瓶の底に残ったアルコールを求めて転がり込んでくるんだろうね
うらぶれた少し薄暗い地下街を抜けると光あふれる別世界って感じ
酔っぱらって鎌倉まで電車を乗り継いで帰るのはちょっとしんどくなってきた
オツと、肝心のわが句 ドーヨと胸を張れるようなシロモノじゃないけれど…
雷門小春の宿る大提灯
栗実り縄文の人忙しき
イガに似てさらにキテレツ栗の花
網焼きの松茸香るわが家かな
半島を真っ暗けにする野分かな
(「栗」が兼題でした)