無門関提唱。第34則「智不是道」。
禅の教えは迷いの多い心そのものが仏の心であると説く「即心是仏」だが、前日の「非心非仏」に続いて今回も『そうじゃない』という逆説の提示である。
何となくだが「即心是仏」と説かれて『そうなんだ』と納得している身には逆説なんかあえて必要としないのだが、筋金を入れるためにはあの手この手の〝目くらまし〟も必要なんだろう。
それが道を教えるということでもあるのだ。
気分は即心是仏なんだからそれでいいじゃん、なのだが我慢して耳を傾ける。
大方丈の外のでは屏風のようにそそり立つ緑が朝日を受けて抜群に美しい。
2時限目は大仏のある高徳院の佐藤孝雄住職。慶応大学の考古学の教授でもある。
演題は「鎌倉大仏と研究の〝曼陀羅〟」。
なんのこっちゃと思ったが、結論から言うと大仏を研究することは現在の大学が教えている学問を総動員することなんだそうだ。
言われてみれば「そういうことですか」とそのこじつけに納得する。
鎌倉大仏の造営は国家的事業だったはずだがなぜか公的な記録がない。
最初は木造の大仏だった。
大仏殿が建立されていたが、1334年に台風で倒壊、再建されたものの1362年に再び台風で倒壊、三度再建されたものの1495年の明応地震と津波によって倒壊した後、4度目の再建は果たされなかった。
津波被害が強調されているが、境内に明確な堆積物は発見されていないのが実情だ、と住職も首を傾げた。
境内からは瓦や破片が一切出土しないため、大仏殿は檜皮葺など瓦以外のもので葺かれていたと推測できる。
江戸時代に文献によれば大仏殿の礎石は60個とあるが、56個の礎石が確認されている。
これを基に図面を引くとすると大仏殿は幅44メートル、奥行き42.5メートルであった。
境内は南東部分とそれ以外の部分とでは土壌に違いがあり、南東部分は液状化の危険がある。よって今後その対策を講じていきたい。
現在の鋳造大仏は何段階かに分けて行われ、各段階ごとに土を盛り重ねてゆき、最後は土の大山の中から掘り出されたはずだ。
現在の大仏は露座のまま500年以上が経過しているがこれは世界で類がない。
世界遺産を審査するICOMOSの関係者が調査に訪れた際、驚愕し「大仏だけなら今すぐにでも世界遺産登録は可能」といいおいて帰った。
現在は緑青に覆われているが、安定した状態である。
一時期大仏の頭や肩と背中の一部がリン酸塩で腐食されかけていることが分かったが、原因はハトのフン。今はハト対策をしている。
明治になって横浜の居留地に暮らしていた外国人が頻繁にやって来ていて写真を残しているが、大仏の背景に映る裏山の植生は松ばかりである。
当時は今の落葉樹と照葉樹の混交林ではなく松の疎林が広がっていた。
これには理由があって、幕府が開かれたことに伴って人口が増え、里山の木が薪炭材として利用され、落ち葉さえも肥料として持ち出されたため山が痩せ、松しか生えなかったためであると推測できる。
まぁ、ざっと挙げても興味深い内容が大仏の周囲には見て取れる――のだそうで、これらを解明するためにはあらゆる学問を総動員して……ということであった。
「へぇ~」「ほぉ~」という思いで聞いた。
3時限目は聖心女子大学などで教鞭をとった鈴木秀子さんの「みとりのこころ」。
性格分類学と訳されるエニアグラムを日本に始めて紹介した人で、カウンセリングの一種であるゲシュタルト・セラピストでもあるそうだ。
臨死体験があるそうで期待したが、すっかり話すには時間が足りないということでさわり? 部分だけだったのが残念だった。
昨日登壇した何重苦も克服した大阪のおばちゃんといい、世の中にはすごい人がいるものだというのが感想。
驚きに輪をかけたのは「追っかけ」の女性群がいたことで、3時限目に一団が押し寄せてきた。芸能人ならいざ知らず、こういう人にも後をついて回る人がいるんですねぇ。
さて今日は…。
円覚寺にこんな花が咲いていた
モミジの若葉が日に映える
夏期講座に参加するため早朝から大方丈の階段を上がる
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heihoroku
高麗の犬
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