サンマーメンは横浜生まれの中華そばである。
どんなソバかって、野菜炒めの餡掛けが乗ったソバで、サンマとは関係がない。
同じような野菜系のソバならタンメンがあり、横浜には1960年代の後半から「タンメンならあそこ」という超人気店が出現し、高校生だったボクも友達とよく食べに行った。
サンマーメンと言うものが街中華に存在することは知っていたが、食べた記憶はなかった。
その後社会人になり、1度か2度は食べた記憶があるが、体験だけしておくか…程度で食べただけで、強い印象が残ったわけでもないし、その後選択の範疇からは外してしまっていた。
それが今回どういう風の吹きまわしなのかと問われれば、「気まぐれ」としか答えようがないが、数か月前、伊勢佐木町を歩いていて、青江三奈の伊勢佐木町ブルースの歌碑を通り過ぎたあたり、5丁目で「中国料理 玉泉亭」という看板が目に留まった。
サンマーメン発祥の店と言われている店の名前で、それはおぼろげながら覚えていた。
近寄ってみると店内は満席で、待っている人もいた。
そんなわけでその時は食べずに帰ったのだが、いつかは…と思っていたのが、ようやく実現したってわけだ。
最初にスープをすすってみたが、これが驚くほどやさしい味で、なんだか寒い所を歩いてきたせいもあるのだろうが、五臓六腑にじんわりとしみ込んでいくようで、思わず「へぇ~♪」と妙に感動させられ、納得させられる味だった。
ボクはインスタントラーメンを食べる時、備え付けのスープエキスは使わず、キャベツの葉をたっぷり2、3枚指でちぎって水を入れた鍋に入れ、煮だしたスープに麵を入れて食べるのを好む。
この、いわばキャベツラーメンとも呼ぶべき独自の味によく似ていて、ホッとする味でもあるのだ。
スープには野菜のエキスがたっぷりにじみ出ているから美味しいんだと思う。
麺は極細だがコシが強く、歯ごたえがあって、それもまた良かった。
そもそも餡掛けってのは熱くてしかも覚めにくいので猫舌のボクは苦手なのだが、ここの餡掛けは餡が弱めなのか心配するほどのこともなく、そこそこに冷めて食べごろになってくれたのも面倒がなくてよかった。
720円なり。
それにしても、地元にいながらこんなおいしいものを…随分長いこと見逃してきたものだ。
中華街に行けばおいしいソバや珍しいソバはいくらでもあるし、ついそっちに脚を向けてしまっていた。
灯台下暗しとは言うが、もったいないことをしたものである。
ところで、このサンマーメンって、どこまでポピュラーなんだろう。
札幌でも食べられるんだろうか、はたまた福岡ではどうか、大阪や名古屋では…? 東北ではどうなんだろう。
横浜まで出かけて行ったのは、ちょと調べたいことがあって紅葉坂にある県立図書館に足を運んだのだ。
あらかじめ見たい資料の存在を電話で確かめてから行ったので、わけなく目指す資料にたどり着き、効率よく調べ物を済ませることができた。
それにしても最近の図書館は親切である。
そして閲覧室や調べ物ができるコンピューター端末が置かれた部屋に入ると、照明が違っていて、無機質で冷たい感じのする蛍光灯ではなく、温かみを感じさせる薄いオレンジ色を帯びたような光に包まれていて、ふぅ~んと思わされた。
何となく落ち着く感じが初体験だった。
戦後まもなく建てられた音楽堂と対になった前川国男設計の図書館はいつの間にか建て替えられて真新しくなっていて、設備も充実しているようだった。
こういうところに金をかける分には大いに結構である。
鎌倉市も見習ってほしいものだ。
キャベツがたっぷり入った伊勢佐木町玉泉亭のサンマーメン
「人気NO1」はサンマーメンにワンタンを加えたワンタンサンマーメンだったが、まずは純粋な元祖サンマーメンを食してみたら、確かに美味しさに驚かされた