夏の場合なら東京より確実に2、3度は気温が低く涼しいはずのわが海辺の町でも33度くらいまで気温が上昇したらしい。
実際わが家でも部屋の前に木立が生い茂って直射日光を遮ってくれるので普段は27、8度にしかならない1階の居間の温度計は午前中に30度に達したし、同じ時刻、2階のパソコンを置いているベランダに面した部屋は31.6度にもなっていた。
どうせ暑いのなら、いっそのこと海の水にでも浸ってこようという気になり、海パンをはいて七里ヶ浜まで下りてみた。
海辺というのは大概海からの風が一定程度吹いているものだが、この日ばかりは微風程度しか吹いていなかった。それでもアスファルトの照り返しや冷房の熱気が渦巻く都会のジャングルよりはましである。
だが海に入っている場合はいいが、浜辺に上がって甲羅干しを始めると風がない分、太陽の直射はじりじりと熱く、汗が次から次に噴き出してきて、やはりいつもの夏とは違った夏だということを実感させられるのである。
大して気分も良くなかったので1時間半ほどで切り上げて家に戻ったが、七里ヶ浜から見ても葉山や三浦半島は霞んで見え、伊豆半島も輪郭がぼんやりと見えるだけ、目の前の江の島さえぼぉ~っと淀んで見えるくらいだから、風がなくて靄っている証拠で、温度ばかりは熱帯並みに上昇しているが、この辺りの本来の夏の景色とは全く違っていた。
つくづく異常な夏である。
風がない分、暑さは体にまとわりつくようなねっとりとした不快なもので、夕方になっても変らない。
鶴岡八幡宮のぼんぼり祭りが3日目の最終日で、夕涼みを兼ねて毎年足を運んでいるのだが、この日ばかりは日が暮れても汗が噴き出す蒸し暑さは和らぎもしない。
夕涼みどころか境内の人いきれと合わさって汗だくになってしまったのは大いに誤算である。
折しも9日は若くして暗殺された鎌倉幕府第3代征夷大将軍実朝の誕生日だそうで、日中には誕生祭も行われたようである。
ほぼ同時代の悲劇の主人公である義経については、だれもが知るその悲劇性によって国民的な人気を得ているが、実朝の悲劇性に関しては大衆を熱狂させるような存在ではないだけに忘れられがちである。
将軍の地位に就いた途端から己の運命を自覚しながら生きるしかなかった若者の心中は察するに余りある。
そういう心中を読んだに違いないと思われる詩の一つを刻んだ石碑が由比ガ浜が尽きるところ、国道134号が大きくカーブして南に向かう場所の脇の小さな緑地に置かれている。
世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ 海人の小舟の 綱手かなしも
訳すと、世の中は常に変わらずにあってほしいものだ、漁師の小舟が綱に引かれていく景色のいとしさよ、というところか。
目の前の何気ない風景を詠みつつ、それこそが愛しい、千年万年続いてくれたらというような感情を、たかだか20代半ばの若者が抱くものなのだろうかと思うだけで、実朝の切なさが伝わってくるような気がするのだ。
とっぷり暮れた境内舞殿では琴の演奏も始まり、なかなか良い雰囲気を醸していたが、境内の奥に進めば進むほど周囲の木立が分厚くなって空気の流れを遮るものだから、蒸し暑さがオリのように淀んで息苦しいくらいである。
今年はこういう夏であるらしい。
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薄暮の段かずらを抜けて八幡宮境内に向かう
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横田南嶺円覚寺管長
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岡ちゃんこと岡田武史サッカー元日本代表監督
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友人の絵
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上は山本富士子、下は宇佐美恵子。2人ともどれだけの人が覚えていることか
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帰りに振り替えるとぼんぼりの列が暗がりの奥へと続いていた。この行事が終わると秋なのである