平方録

耐寒性が備わっちゃったらしいや⁈

12月早々からこの方、80日間も寒波漬けにされてきたためか気が付いてみたら耐寒性のようなものが備わってきたのかもしれない。

何の話かと言えば、前日の冷たい雨に引き続いてどんよりと垂れこめていた雲の隙間から、ようやく午後になって薄日が漏れてきたので散歩に出たのだ。
その際、玄関を一歩出た途端「あれっ、今日はやけに暖かいな」と感じ、真冬を通じて身にまとっていたものの内の一つをあっさりぬぎ捨てたのである。
寒がりのボクにしては大胆な行動と言わざるを得ない。……ちょっとオーバーか?
つまり極暖の長袖下着と冬物の格子柄のシャツ、その上に羽毛のほとんど入っていないパタゴニアのダウンジャケットといういでたちである。
寒さを感じる場合はこれに薄手のセーターかダウンのベストを着込んでいたのだ。

耐寒性に関していえば、そんなもの切望しているわけでもなんでもないから別に嬉しくもなんともないし、そんなものはいらないから代わりに暖かな空気を下さいと声を大きくして言いたい。
第一、南関東の海辺の町で暮らしているのだ。そもそも耐寒性なんていうものを必要とするような土地柄ではないのだ。
こういうところでは例年本格的な寒さというものがやってくるのは年明けからなのに、今冬に限っては師走に入った途端寒波がやって来たのだ。
それがずっと居座っているのだからいい加減にしてくれと辟易しているのが今の気分である。

そんな中で1枚脱ぎ捨てた格好で人気のない尾根筋の道を2時間ほどたどってきたのだが、アップダウンがあるから当然かもしれないが、途中で汗ばんだくらいである。
夕食の時に妻に今日は暖かかったなと同意を求めたところ「あら、そうぉ? 」と懐疑的な答えが返ってきた。
何時も寒さなんか眼中にないように動き回っている妻にしてこれだ。ということは…
寒がりのボクにしてこれはもう耐寒性というものが備わったんではあるまいか、と一人合点をするゆえんである。

散歩に出たのには訳があって、このところの散歩はいつもそうなのだが初音を求めてのそぞろ歩きなのだ。
従って人気のない山道や残された緑地の藪が残っているようなところを探してはたどっているのである。
定点観測地点は近所の自然公園なのだが、昨日はここに加えて耐寒性装備記念ということもあり、少し足を伸ばして去年2月25日に初音を聞いた広町緑地の中も歩いてきた。

結論から言えば「まだ!」である。
定点観測地点の自然公園で自然林に分け入って絡まったツルを切ったり、倒木の始末などをしていた管理人に「どうです? 今年はもうウグイスの声を聞きましたか? 」と聞いたところ、「まだですねぇ」と即答が返ってきた。
「チェッチェッ」という舌打ちするような、笹鳴きと言うらしいが、それは聞こえるという。
「笹鳴きは聞こえてますから、どこかに行っちゃったってわけでもないようですよ。今年の冬は寒いですからねぇ」とわざわざ遊歩道まで出て来てくれて相手をしてくれた。

確かに「チェッチェッ」という声は耳をすませば聞こえてくる。
しかし、求めている初音は恋の季節を前に縄張りを主張する高らかなファンファーレであって、この初音が響かなければ短歌も俳句も随分と物足りないものになったことだろう。
日本人の感性も随分と乾いたものになっていたに違いないのだ。

ボクだってようやく1枚脱ぎ捨てたのだ。早く初音を聞かせておくれ!



去年の2月25日に初音を聞いた広町緑地の木道付近


此の時は笹鳴きも漏れてこなかった


広町には山桜の大木があちこちに点在するが、これはその中でもわざわざ「大桜」と呼ばれているオオシマザクラで、大木が4本合わさったような大きさで周囲を圧倒している
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