平方録

腰を返せ! 元に戻せ!

良かれと思ってすることが、実際には真逆の結果をもたらす—―というようなことは何も特別に珍しいことでもないようである。

端的に言うと、ボクの場合30代後半くらいから体形の維持を念頭に腹筋運動にいそしんできた。
メタボなどと言う言葉が登場するようになった40代後半ころにはスポーツジムなどで見かけるような、ベンチに傾斜があって高い方に足を引っかけてベンチに寝そべり、頭を下にした格好から腹筋の力だけで上体を起こす運動をわざわざ器具を購入して続けたものである。
お陰で腹筋はカチンカチンになり、自己満足していたんである。

最近でこそこのベンチ式の腹筋運動は体力的に負担が大きくなりすぎたため止めているが、もうすこし簡便なただ寄りかかればいいという器具を買ってきて腹筋への負荷をかけ続けていた。
こういうところは案外努力家なのだ。
ただ、気を付けないことにはこうした方法で腹筋を鍛えた場合、身体の反対側にある背筋なり腰の筋肉も同時に鍛えておかないと、全体のバランスを崩してしまって、鍛えないでいる側の筋肉が悲鳴を上げるという指摘は耳の片隅にあることはあった。

「腰痛の原因の一つになりますよ」というのがこの指摘のポイントで、50代の初めにぎっくり腰風の痛みに見舞われて整形外科の門をたたいて診てもらったところ、医者に言われたんである。
以来気をつけてはきたのだが、何せ庭仕事などで重いものを待ったり、同じ姿勢のまま作業を続けたりするとてきめんに腰に来て、ひどい時には身動きさえままならないくらいにひどく痛むようになっている。
先週の月曜日、最低気温がわが家で13.1度もあった暖かい日だったのだが、バラのせん定作業に着手し、手始めに鉢植えのバラの鉢の移し替えをしたところ、ついつい負荷をかけすぎてしまったようなのだ。
その晩から腰が悲鳴を上げ、市販の塗り薬を塗りたくって鎮静化を試みるものの効果は表れず、行きつけの内科医のところに行ってよく効きそうな張り薬を処方してヨと頼み、それを貼って3日が過ぎようやく良くなりかけてきつつある。が、まだ油断は禁物である。

腰を漢字で書くと肉月にかなめと書くくらい重要な要の役割を与えられた部位だから、これが痛んだんでは身動きが取れないのだ。
ズボンをはくにもうめき声が必要で、後は推して知るべしの不自由さである。
このボクの惨状をあざ笑うかのように、腰痛でうめき始めて3日目の14日の朝刊に「『腹筋運動』腰痛リスク」「バスケ協会『推奨できない方法』」という記事が掲載された。
これみよがしとはこのことで、結論から言うと学校の体育や競技団体が推奨する一般的に腹筋運動と呼ばれる「上体起こし」は続けると椎間板を痛めるので止めさせたほうが良い—―という主張である。

小中高生の「学校の先生が言うのだから」という純な心を踏みにじり、より高みへと精進を重ねる部活動のスポーツ少年・少女たちの体を壊してきたのかと思うと、文部省(当時はそう呼んだのだ)や競技団体の責任は大きすぎる。
こういう積み重ねの中で、来し方オリンピックで何個のメダルを逃してきたことか。
メダルを取るべき人の体をコツコツと壊してきた責任は誰が取るんだ。メタボになるまい、国の医療費節減に協力しようという健気な国民の思いにどの面むける気だ。ヤイ! ちゃんと説明して責任取れ!
ボクの腰を返せ! 元の腰に戻せ!

この記事で専門家が言っている。
「学校や職場の体力づくりの現場に広く周知する必要があり、文科省や厚労省が情報を発信すべきだ。体力調査からも上体起こしは外した方がよい」
何てこった…



日曜坐禅会が終了した午前10時過ぎの円覚寺境内。冬至直前の弱弱しい日の光が如意庵の竹藪を透かし


仏日庵の大モクレンはキリリと引き締まった空気の中で存在感を際立たせる


近寄ってみると蕾もまだ小さいながらその存在が分かるようになってきていて、日が当たると銀色に輝く




選仏場裏手の名残の紅葉。今度こそ名残の…はずである
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