もちろん会場はたくさんのバラや様々な木々に囲まれたガーデン奥の芝生広場。これ以上贅沢な送別会場はどこにもないはずである。
ここにイスやテーブルを並べ、脚立に照明器具を括り付け、秋のサンマまつりで使用する炭火の焼き台も用意して肉や野菜を大量に焼き、盛り上げた。
昼頃まで台風20号の余波で雨交じりの強風が吹き荒れていたのだが、それも夕方には収まって当初の予定通り芝生の上での開催にこぎつけたのだった。
「私、晴れ女なんです」と得意顔でもあった。
M子ちゃんは3、4年前の5月のバラのハイシーズンに同じ芝生広場の上で大勢のお客さんに祝福されながら結婚式も挙げており、ガーデナーとしての役得を独り占めした格好である。
仕事でマスコミ各社を尋ねてニュースリリースを届けるうち、縁あって名古屋に本社を置く某マスコミの社員に見初められて一緒になり、その亭主が本社に戻ることになって名古屋に引っ越すため、退職を余儀なくされたのだ。
いずれ必ずそういう時が来ると分かっていたことなのだが、いざそれが確実になるとボクのところにも電話をかけて寄越し「どうしたらいいでしょう」などと、いささか狼狽していたのだが、それも吹っ切れて向こうに骨を埋める覚悟を決めたらしく、サバサバした様子だったのは何よりだった。
1歳数か月になる男の子もいることだし、亭主の後をについてゆくのが一番いいに決まっている。
M子ちゃんはこのガーデンのオープン直後から働いてくれていて、体は小さいがいささか天然ボケのある明るいムード―メーカー的存在でいつもコロコロ笑い、スタッフはもとよりお客さんの間でも人気者だったのだ。
産休、育休としばらく休んでいてようやく復帰した矢先のことだったので、スタッフはもとより、ボクにとっても寂しいことなのだ。
河合スーパーバイザーはスピーチしながら涙ぐんでいたなぁ。
ボクはといえば送別の辞で少しリキを入れてスピーチしてM子ちゃんの涙腺を緩めて涙をボロボロこぼさせてやった。
化粧がぐちゃぐちゃになってしまい悪いことをしたが、ナニ、辺りは暗いのだ気にすることはないよ。
年年歳歳花相似 歳歳年年人不同。そしてボンボヤージュ!
バラの大アーチをくぐって奥の芝生広場へ向かう
アーチを抜けて広場に出ると夕焼けと残照がとてもきれい
東の空にはほぼ満月を迎えた月が上り
暑さにめげないバラたちが目を楽しませ
夕闇の中に浮かびあがる
街の喧騒から隔絶されたここは贅沢の極みの送別会場
宴もたけなわ
虫の音は宴の歓声にかき消されていたようだが
、
最後は化粧をぐちゃぐちゃにする涙も流れ…… 元気でね
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