特に相模湾は富山湾などと共に日本3代深湾の一つに挙げられ、1000種類とも1300種類とも言われるほど魚種の豊富な湾なのだ。
1000種類というのは日本で獲れる魚の4割にも上るそうで、これだけ豊富な種類が上がる湾もまた珍しいのだという。
相模湾の特徴は湾の西側、つまり伊豆半島側が深くなっていて1000mを超える深さがあり、箱根や丹沢山塊から流れ出るミネラルや養分が川を下って海に供給されることで豊富なプランクトンが育ち、好漁場を展開しているということのようである。
片や東側、三浦半島沿いは浅い海が続いていてこれまた魚のゆりかごとしての機能を果たしてもいるのだ。
最近売り出し中のアカモクや馴染みのワカメなどの海藻類の漁場でもある。
湾のすぐ目と鼻の先を黒潮本流が流れ、そこから枝分かれした細い流れは湾内に流れ込んでいるし、北からは養分の多い親潮の一部も流れ込んで魚種の豊富さに一役買っているんだそうな。
何だか小学生の夏休みの宿題の自由研究みたいな展開になってしまったが、これが目の前に展開する相模湾という魚っ食いには願ってもない海なのである。
それがいま宝の持ち腐れ状態に陥っていて、手に入る魚が東北や日本海、果ては四国や九州辺りから長距離トラックで運ばれてきたものが目立つようになってしまった。
ボクの身近なところでは贔屓にしていた魚屋が江戸時代から掲げていた看板を5、6年前に下ろしてしまって、それ以来主な調達先をスーパーやチェーン網を持つ規模の大きな魚屋に頼ることになって必ずしも地元で取れた魚ではないものまで買わざるを得ないようになってしまったのが最大の理由。
わが家から4キロ離れた隣町の駅前のビルの地下に、これは相模湾の魚を中心に並べている魚屋があるにはあるが、散歩の帰りにぶらっと立ち寄るという訳にもいかず、隣町に出かける用事でもないとのぞかない魚屋なのが玉にキズである。
本来なら目の前の相模湾で揚がったピッチピチの旬の魚を安く食べるのが一番理にかなっているのだが、必ずしもそうはいかない現実はちょっと寂しすぎる。
そんな中で比較的手に入れやすいのはシラスである。
なぜって、この町にも隣町にもシラスの網元がやっている専門店があちこちにあって、船が戻ってくる昼前に電話すると漁獲があったかなかったかが分かり、あれば押っ取り刀で買いに行くのだ。
イワシの稚魚の総称だが、この小さな宝石のような魚の稚魚は傷みやすいので生で食べられるのは地元の住民だけに与えられた特権で、いくら築地が威張ったところで、生を売り買いするのは無理である。
水揚げされたものをすぐに釜揚げにすれば、そこそこ保つのだが、それではシラス本来の甘さや旨味が損なわれるというもので、シラスはやっぱり生が一番だと思っている。
ただ生で食べるようになったのはそれほど遠くない時代のことのようで、鎌倉に居を構えていた食通の北大路魯山人の書物には白魚やシロウオは登場してくるが地元のシラスが一切出てこないというのも不思議と言えば不思議である。
まさか魯山人はシラスは食い物ではないとでも思っていたわけではないだろうから、口にするチャンスがなかっただけだとは思うが、もし知りうることになっていたラどういう展開になったか、ちょっと惜しい気がする。
ピッチピチの生シラスを食べられるのは海沿いの町に暮らす特権
シラスのゆりかご相模湾
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だいぶ数が増えてきた
今朝の夜明け=04:43
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