キツネかタヌキに化かされた気分だ。
その 1 前夜の天気予報は「関東地方には木枯らし1号が吹くかもしれない」と大きな声で言っていた。
ところが…
木枯しの定義は「日本の太平洋岸地域において晩秋から初冬の間に吹く風速8m以上の北寄りの風」。
しかし、陽が上り太陽が高度を増して行っても、澄み切った青空の下に吹いていたのは北とは正反対の南からの風。
それも2mとか3mの穏やかさで、時期的には早すぎるけれどインディアンサマーを彷彿させるような、静かで柔らかな秋の1日となったのだから彼我の差は天と地もの違いがあると言っても差し支え無かろう。
その2 木枯しにビュービュー吹かれては自転車でパトロールするどころではないので、他のことをするつもりだったが、南寄りのさわやかな風が吹き抜ける気持ちの良い青空に誘われていつもの海辺のコースのパトロールへ。
家を出てすぐに家並み越しに見える富士山が白くなっているのは気付いていた。
しかし、全貌はまだつかめない。
それがすそ野まで見渡せる海辺に出た途端、五合目付近までを雪化粧した富士の山がデーンとそびえている光景が目に飛び込んできた。
!?!?!?!?!?!?!?!?!?
一昨日の月曜日にパトロールした時もよく晴れ渡って富士山は良く見えていたのだが、頂上付近の小さな雲を雪と勘違いはしたが、化粧ゼロの夏富士の姿そのものだったのだ。
芝居の書割じゃあるまいし、一気に場面転換なんて…
今秋は9月7日に例年よりずっと早く初冠雪が見られたが、それもつかの間、直ぐに解けてなくなってしまい、以来夏富士が続いていた。
それが突如、初冬の富士山に姿を変えているとは…
突如出現した五合目から上の雪化粧が解けてしまうのは容易なことじゃあるまい。
多分このまま根雪になるのだろう。
山形では月山に初冠雪があったらしい。
秋田との県境の鳥海山や宮城との境の蔵王にも初めて雪が積もったようだ。
秋が深まっていく。
2日ぶりに見た富士山がこれまでとは打って変わって五合目まで雪化粧しているのに唖然…
2日前の18日はこういう景色だったのだ
それが…
全身が真っ白になるより、この程度の雪化粧がバランスの観点からもきれいに見える
月曜日にはまさに夏富士そのものだった
上半身裸になって砂浜に寝転んでいたら携帯電話に九州の阿蘇が噴火したという速報が届き、ふと振り返った空に噴煙のような雲が現れていた。
ここ数週間の間に3回か4回続いたNHKの富士山大噴火とその影響をまとめた番組を見て、富士山噴火の尋常ならざる被害の大きさと市民生活への影響の甚大さに認識を新たにしていたこともあって、タイミングの良さにびっくりさせられた。
去年は厳冬期の富士山に積もった雪が解ける現象をしばしば目撃したりして嫌な気分にさせられたものだが、番組に登場した火山学の権威の学者が「富士山は必ず爆発します」と「必ず」に力を込めていたのだ印象的でもあった。
1707年の宝永大噴火以降、300年以上も静寂を保っているだけに不気味と言えば不気味である。
富士山がひとたび噴火すると溶岩流も恐ろしく、近年その到達範囲が見直され、これまで考えられていた以上に遠くまで溶岩流が到達して被害を大きくするであろうことが分かって来た。
そして、噴火に伴う火山灰被害の恐ろしさは想像以上だった。
粉かな火山灰は鉄道のレールに積もると絶縁効果があって電車の運行が不可能になるから首都機能は降灰だけで麻痺してしまうだろう。
しかも一定程度の噴火に伴う噴煙と言うのは成層圏にまで達するほどの勢いがあり、日本列島に吹いている偏西風の影響で北東方向、すなわち首都・東京に降り注ぐことになる。
細かな粒子の火山灰をヒトが吸い込めば肺機能は被害を被るだろうし、水気を含むとコンクリートのように固まってカチンカチンになるだけでなく、今度は逆に通電作用も出るそうだから停電とは正反対のショートによる火災やらなにやら、普段は想像もしないような被害が起きかねない。
地震に対する備えはせいぜい3日分の水と食料の確保で何とかなるとされているが、大規模な降灰に寄る大都会のインフラに与える影響は甚大で、とても3日分くらいの備蓄ではニッチもサッチもいかなくなるだろうということだった。
国や地方自治体に十分な備えがあるかと言えば、ほとんど期待出来そうにないし…
正面に見える山影は伊豆半島の天城の峰々