これが関東に伝わったのがいつのころか全く知らないが、現役時代、よく飲んでいた蕎麦屋の女将から「今日はとっても新鮮なミズナが入ったわよ、どぉ? 」という電話がかかってくることがあった。
ミズナは今頃の季節から冬場にかけての時期だが、この女将は初夏になれば「いいソラマメが入ったのよ。そばがきと一緒にどぉ? 浦霞冷やしてあるわよ」などと、旬の食材にことよせてボクらを誘い、さらに日本酒の銘柄まで持ち出すものだから、こちらとしては赤子の手をひねられるようなものである。
こういうニンジンを鼻先のぶら下げられると、悲しいかな呑兵衛というのは…、いそいそと仲間を誘って馳せ参じるのである。
縁のない人には信じられないだろうが、しばらく飲み食いした後ほろ酔い加減で一旦会社に戻る。戻って出来上がって来るものにザッと目を通してから家に帰るか、また飲み直しに出かけるという生活だった。
ボクがほろ酔いになるまでの間、会社やあるいは外で一生懸命に働いている人ももちろんいるのだが、それはそれで役割分担だから仕方ないことなのだ。
第一、職場に酒瓶が転がったりしていたのである。
そのハリハリ鍋の〝主役〟と言ってよいだろうミズナが友人からドッサリ送られてきた。
自分の畑を耕しタネを蒔いて育てた獲れたてで鮮度抜群のミズナである。
しかも通常の薄緑色をした茎のミズナのほかに赤い茎が鮮やかなミズナまで含まれている。
最近、これまであまり見かけなかった赤い茎を持った野菜を見かけるようになった。
例えばスイスチャードとか赤い茎のホウレンソウなどなど。
赤い茎のホウレンソウはアクが少ないので生のままサラダで食べられるから熱に弱いビタミンCなどの栄養素を逃すことなく取り込める利点があるそうだ。
赤い色素の成分にはポリフェノールに近い効能も含まれるそうで、伊達で赤いワケではないらしい。
夏の終わりにもミズナを送ってくれたのだが、友人は「冷房をつけながら鍋をやった。いけるぞ、豚しゃぶ! 」ということだったので真似してみたら「なるほど! 」だった。
もうこの時期になれば冷房をつける必要もなく、今度も豚しゃぶにした。
何がいいかって、あのミズナの茎のシャキシャキした歯ごたえは小気味よいくらいで、あのシャキシャキ感こそミズナの生命、魅力でもある。
かと言ってミズナが暴れまくって口中で突っ張ったままモサモサになるようなこともなく、噛めばおとなしくなるところも始末がよろしい。育て方が上手なのだ。
ハフハフと実に満足に食べ進み、最後に中華麺を入れてシメにしたのだが、よせばいいのに残った汁まで全部飲み干してしまった。
豚肉をしゃぶしゃぶした後の汁に豚肉から落ちた脂がたっぷり残っているということを失念したのは、あまりに美味しかったからということにしておくが、とんだとこで食い意地の張ったところが出てしまった。
お陰で翌日から腹回りがもたついているように感じられてならないが、後悔したって後の祭りってやつである。
食欲の秋は歓迎だが、食い意地の秋にしてしまってはいけない。反省!
赤い茎のミズナをたっぷりと入れ、他にはシイタケを少し加えただけで豚しゃぶにしたら…
晩生種の桃も送ってくれた。直径が10㎝超もある大きな桃でこれがとても甘くておいしかったのには驚いた
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heihoroku
ひろ
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