平方録

報道の自由を守るのは報道なのだ!

「ペンタゴン・ペーパーズ」という映画を見てきた。

ベトナム戦争の泥沼にはまり込んだアメリカが不利な戦況を正確に理解しながら国民には知らせず、なお若い兵士たちを次々とベトナムのジャングルに送り続けていたころ、戦争の実態を正確に分析した国防総省の最高機密文書が存在することをつかんだニューヨーク・タイムスがその存在を明らかにし、次いでワシントン・ポストがその文書を入手して中身を詳細にスクープするまでの過程を描いた映画である。
文書の漏洩を察知したニクソン政権はタイムズ紙の記事を差し止め、ポスト紙にも圧力をかけて記事の差し止めを画策するが、ポスト紙は葛藤を経て「報道の自由を守るのは報道なのだ」と紙面掲載を決断し、最高裁も「報道の自由」に軍配を上げたのだ。

1971年に実際あった話で、1972年に新聞記者になったボクは「ヘェ~、アメリカの記者はずいぶんすごい仕事をするんだなぁ!」と痛く感心させられ、大いにあこがれたものだ。
ボクはこの映画の存在を知った時、監督のスピルバーグが何で今この時期にこういう題材をテーマにした映画を撮ったんだろ、という点に興味が行ったのだ。
そう! ちょっとでも自分に都合の悪い記事を書かれると「フェイクニュースだ‼ 」と叫ぶことしか知らず、民主主義の重要な根幹の一つである「報道の自由」を危うくさせている45代大統領を念頭に置いているに違いないと思ったのだ。
どうやらそれは当たっているようで、スピルバーグは45代が大統領に就任して45日目という早い段階で「考えている場合ではない」とこの映画の制作を決断しているところからも、それは明らかである。

映画館に行って驚いたのは、ボクは13時40分上映開始の回を見たのだが、200席程度だと思うのだが、スクリーンの真下辺りを除いてほぼ席が埋まったことである。
湘南地方のシネコンで、チケット売り場付近の広いスペースは閑散としているように感じたから、想像も出来なかったのだ。
正直言って地味なテーマの映画だと思う。
月曜日が休日と言う人も少なくないだろうが、それにしたってこういう硬派で地味な映画にかくも大勢の人が見に来るとは…

時間帯の関係か、若い人は少なかったように思う。
客はボクとたいして歳の変らない年代の夫婦連れ、同様の女友達同士、ボクのようなジジイの単独行が中心である。
学生時代にベトナム反戦運動に興味を持った人たちなのかとも想像できる。
何れにしたって見ながら当時を懐かしむ一方で、現在の日本の社会状況を思い出しながら「報道の自由」という重要な問題について何事かを感じたはずである。

映画が終盤に近付くにつれてボクは不覚にも目が潤んでしまった。スクリーンがかすみかけてしまい、字幕が見えにくくなってしまった。
昔を思い出したってこともあるのだが、強大な権力にひるまずに社会的な使命を貫き、読者、国民の知る権利を守ることに全力を挙げるという姿に改めて感動したのだと思う。
今のアベなんちゃら政権の好き勝手、やりたい放題のメチャクチャな政治を見せつけられているだけに、一層そういう思いを強くするのだ。
「忖度」などという嫌な言葉がはびこる時代に果たして現在の日本の新聞は、メディアは十分にその使命を発揮できているんだろうか。自ら進んで行う勝手な忖度などは存在しないとメディアは断言できるのか。

それにつけてもジャーナリズムというものが権力という強大な力に屈することなく、毅然として立ち向かっていくところを見せてもらいたいと切に願う。
新聞休刊日にでも社主とか主筆を筆頭にみんなこぞって見に行ったらいいと思う。団体割引も使えるだろうし……。特に若い記者諸君に勧めたい。

「報道の自由を守るのは報道なのだ」という言葉をかみしめてもらいたいのだ。




わが家のハナミズキ


下から撮ると青空に花びらが透けて一味違った趣が


そもそもハナミズキはサクラを贈った返礼としてアメリカからもたらされた花木である。学ぶべきことは多いのだ
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「随筆」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事