1973年から半世紀にわたってわが左手首で時を刻み続けてきた腕時計が動かなくなった。
山の神と一緒になった時にプレゼントされたものだし、いつ、どこで、だれが…という5W1Hをまず確認するところから出発するような、そういう仕事についていたものだから、腕時計は相棒以上の存在だった。
メモリアルなうえに仕事の必需品…そういう位置づけだったから、動かなくなった時点で"ハイそれま~で~よ~"…と捨ててしまうわけにはいかない。
それで、これまでも2、3年に一度は分解掃除を頼んできた銀座4丁目の本店に持ち込んで動かなくなった理由の解明と、不具合が生じていればその修理、そして分解掃除の3つを依頼したのだった。
ただし2、3年に一度とはいえ定期的なメンテナンスはコロナ禍以前の話で、コロナ騒動が始まって以降は何もしていない。
おまけにリタイアもしたし、おのずと外出する機会も減り、腕時計を手首にはめる習慣も薄れ、腕時計が置時計になって机の上でほこりをかぶる時間の方が長くなった。
今回動かなくなった理由の一つとして、そういうことも、たぶん起因しているのだと思う。
加えて製造から半世紀が過ぎた時計である。
果たして、応対に出た店員は「古い製品のため部品はありません。修理が必要になっても部品がなければ不可能です。分解して掃除はしますが、その場合は動かない状態でお返しすることになりますが、よろしいでしょうか」という。
正直言って「オマエラが作った時計だろう。なんだその投げやりで自分たちの製品に対する薄情な態度は…。それが精密機械の時計を扱う職人の言う言葉か」といささか腹が立ったが、こちらにはほかに手立てがないのだから、従うしかない。
コンチクショーと思いつつ、とりあえずは依頼するしかないので置いてきた。
挙句に「こういう古い機種を扱える職人は少ないので、お返しできるのは年明けになるかもしれません」という。
9月初旬の話である。
まぁ、ひと月以上早く手元に戻ってきたうえ、どこも壊れてはいなかったので修理の必要もなく、結果としてオーバーホールだけで済んだのは何よりだったが、技術料なのだろうか、5万円もかかった。
これまでコロナ前の30年40年くらいまでは1万円余りで分解掃除はOKだったはずだが…
邪推だが、もう骨とう品扱いなんじゃないかと思う。
骨とう品の分解掃除にはそれなりの技術料の上乗せなど、プレミアムが付くということなのかもしれない。
金属製のベルトを含めてプレゼントされた時のままの、オリジナルな姿を保つ腕時計
製造から半世紀以上…♪