平方録

足下は大丈夫なのかい?

確かに、イギリスのEU離脱というのは大きなニュースだった。
事は地球上のほんの一部分にすぎないヨーロッパ大陸の、そのまた先の小さな島国の国民の個別の判断なのだが、これがまた、その限られた島国だけの話でなく、場合によっては世界中に経済の不安定化をもたらし、われわれの生活を苦しくさせかねないという点において、限られた地域の話ではなくなっているのである。

経済の規模も人の交流の拡大も、すべてが広がってきている今、その流れが突如遮断されるような動きが現れると、当たり前のことだが、突然急ブレーキがかかった列車に乗っている乗客が前方につんのめり、将棋倒しにされるような事態になることは至極当然で、ひどい場合にはけが人が出るだろうし、パニックになって当たり前でもある。

まぁ、人間の社会というのは、さまざまに行きつ戻りつしながら何となく形を整えてゆくんだろうが、戦争を防ぎ、経済の安定をもたらして互いに豊かな社会を築き上げて行こうという、高い理想を掲げた欧州統合という一大実験がこの一事を持ってして危機に直面していることは明らかなのだ。
しかし多分、それほど絶望する必要はなく、その高邁な理想に向かう道中の単なる一里塚のひとつに過ぎないのだと思うが、これからどう転んで行くのか、その行く末は当然ながら気になるところである。

国境を挟んで小競り合いが起こるような事にまで、互いがぎくしゃくするような事にはならないだろうが、ヨーロッパの火薬庫と呼ばれた地域も今は小康を得ているに過ぎない。
そのアドリア海に面した地域では、十数年前まではしきりと砲弾が飛び交ってもいたのだ。
この地域に限らず、どこでまた発火するか知れたものではない。
そこにアメリカ軍が介入するような事になれば、子分として忠誠を誓ったニッポンも手先として乗りこまなければならなくなるだろう。

そう簡単に事態が転がるとは思えないが、世界を覆い始めている内向きの思想がはびこるようだと、これまでのブレーキが効きにくくなることは間違いない。
その気配は既に出てきていると見るべきで、11月のアメリカの大統領選挙が一つのターニングポイントになってくるのだろう。

遠く離れている地域でのこととはいえ、そういうところにも関心を向けなければいけないことは良く分かる。しかし、日本でも今、参院選挙が行われていて、ここで改憲勢力が3分の2の議席を確保するような事になったら、不戦の誓いを立てて経済発展にいそしみ、世界の平和に貢献してきた日本にとっても大きなターニングポイントを迎えることになってしまうだろう。
第一、国民主権なんてまったく跡形もなく消え去ってしまうだろう。そうなれば、ゆゆしき一大事なのである。

しかるに、新聞紙面やテレビのニュースに現れるのは、参院選の争点のクローズアップ化ではなく、アベなんちゃらができるだけ話題にしないようにして争点化を避けまくっている憲法改正についても、それ自体が存在しないかのように、まったく口をつぐんでアベなんちゃらに加担し、EU離脱の話題ばかり取り上げている。
イギリスの消費税が上がるか下がるかとか、ヨーロッパ各国から輸入されて食卓を賑わせていた食品の値上げが怖いとか、次の首相選びが難航しそうだとか、そんな事を大きく取り上げる必要がどこにあるのか。まったくバカバカしい限りである。つくづく情けない。

わが身の足下が危ういのに、そこを指摘しない、指摘できないマスメディアって、一体何なんだ?
ユーラシア大陸の西の端っこの島国で持ち上がった出来事と、東のはずれの島国でも起きつつある変化の兆しと…。
いろいろ考えさせられるのである。



逆光の中の横浜イングリッシュガーデン
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