らしい――というのは見たことがないからで、それもそのはず、南半球に行くか北半球でも低緯度地帯に行かないと見えないのだという。
しかも大マゼラン星雲と小マゼラン星雲の2つがあるらしいのだ。
そりゃぁ世の中にはいろいろなものがあるだろうよ。ましてや無数に光輝いている星の中に未知のものがあっても不思議ではないだろうに、何を寝ぼけたことを言っているのか、とバカにされかねない。
しかし、これが16世紀初めに初めて世界一周航海を成し遂げたマゼラン艦隊によってその存在がヨーロッパに伝わったと言うことをつい最近知って、へぇ~!と思ったのだ。
本を読んでいたら「マゼラン艦隊の3大発見」という小さなコラムがあって、マゼランの艦隊は自然科学上の3つの発見をしたのだと書かれていた。
「地球を周航できること」「1周すると1日ズレること」「マゼラン星雲の発見(もちろん欧州人にとって)」の3つである。
海の果ては滝のようになっていて、そこから落ちてしまえば2度と戻ってこれなくなると信じられていた時代に、大海原に乗り出すことがどれほどのことだったのかは想像に難くない。
それが東に向かって出帆したら西から元の場所に戻ってこれたというのは、当時の人たちにすれば、それこそ天地がひっくり返るような大発見だった。
そういう人類史上まれな発見の内の一つがマゼラン星雲だと言うことに、何だもっと前に知っていれば自分の目で確認してきたのに、残念なことをしたわいと思ったのである。
見えないとなるとぜひ見たい! だめっ! という一言で火が付いたように駄々をこねる幼子のようなものだが、見たいものは見たいのだ。
そもそもマゼラン星雲とは何なのか。
簡単に言うと、ボクたちが住む銀河系と同じ銀河で、しかも地球に最も近い銀河であること、南半球では見えない北極星の代わりに南半球で道しるべになること、あたりだろうか。
宇宙戦艦ヤマトに大マゼラン星雲と言うのが出てきたような気がするが、その程度で特に印象に残ったわけではないのだ。
ただボクしてみれば人類史上初めての地球一周航海がこの星雲の助けを借りて成し遂げられたのだという一事をもって、大いにジンとくるとともに得体の知れない感動というものを味わうのだ。
40年以上も前のことになるが、アメリカ西海岸まで太平洋を1万トン超の船で往復したことがある。
その時のわずかな体験に基づけば大海の真っただ中で夜空を見上げ、息苦しくなるくらいに降り注いでくる全天の星の中から目印になる星を見つけ出し、その星を頼りに進路をとることの、これはもう人知を超えるような本能的と言ってもよいくらいの営みがあって初めて成し得た冒険航海なのだ。
その先頭に立った人物やクルーのことを考えると鳥肌が立ってくる。
かつて仕事で訪れた南米のパラグアイでアテンドしてくれた地元の人に「広大なパラナ川に沈む夕日と南十字星を見たい」とお願いしたら、川のほとりにある茶店のようなところに連れて行ってくれた。
パイプ椅子に座って川風に吹かれ、ビールを飲みながら大きくて真っ赤な太陽がはるかかなたの水平線に沈んでいく光景を見ながら、あぁ今南米大陸にいるんだぁと震えるくらいに感動し、街に戻る途中の広大な畑のど真ん中の道路わきに車を止めて南十字星を眺めたんである。
ああいう所にしょっちゅう立って星空を眺めていると宇宙の彼方から届く宇宙人からのメッセージを受け取るのも容易で、きっと会話も成り立つはずだと思えるのだ。
あの時、存在を認識していればマゼラン星雲にもお目にかかれたものを、と今思うとつくづく残念なことをしたものである。
定植前の養生中のパンジーの苗に花が付き始めた
こちらも定植前のビオラ
横浜駅前で伊豆大島からやってきた観光キャンペーンの紺の絣に赤いたすきのあんこさんににっこり微笑まれて思わず受け取ってしまった20センチほどのツバキの苗だったが、日当たりの悪いところに植えたので成長が遅く、それでも健気なもので15~6年たってようやく花をつけるようになった
最新の画像もっと見る
最近の「随筆」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事