大阪高裁13民判決を整理してみましょう。
まず,次に見るように,大阪高裁13民判決は,Hさんらが,第一審の段階から主張立証を積み重ねてきた主張について,そのとおりに端的に認定しています。
「長期貸出最優遇金利が変動する以上,その金利は,貸付け実行日である平成2年9月25日に初めて確定するものであるから,予め記載されていなかったと推認されるところ,本件貸付け実行日当日の手続には,控訴人H及び控訴人Sは立ち会っていないから,控訴人Hによる署名押印及び控訴人Sによる押印は,いずれも上記金利の記載部分が白紙状態の本件金銭消費貸借契約書(甲2)にされたものと認められ」(原判決27~28頁)
「控訴人A及び控訴人M子にしても,その印鑑登録証明書(甲1の2,3)の交付日がいずれも平成2年8月21日付けであることからすると,同様に金利の記載部分が白紙状態の本件金銭消費貸借契約書(甲2)に署名押印したものと認められる。」(原判決28頁)
「被控訴人東山支店が,融資条件を長期貸出最優遇金利+0.2%とすることで決裁を受け直したのは,本件貸付けの日である平成2年9月25日の5日前の同月20日であるところ,この日から,本件貸付けがされた同月25日までの問に,被控訴人東山支店から控訴人らに対し,本件貸付けの金利は,当初協議していた長期貸出最優遇金利±0%とすることはできず,長期貸出最優遇金利+0.2%とする旨を説明し,控訴人らがこれを了解した事実を直接に認めるに足りる証拠はない。」(原判決34頁)
「その場に同席しなかった控訴人H及び控訴人Sについては,・・・その金利決定基準が「長期貸出最優遇金利+0.2%」に確定したことについては,事前に説明された事実が認められない」(原判決39頁)
「事後についても,控訴人Aから,あるいは控訴人H及び控訴人Sの本件不動産売買契約の代理人として同席していたS弁護士から,本件貸付けは,事前の打合せ段階の利率と異なった利率で実行された程度のことが伝えられていた可能性は否定できないけれども,そのことを確実に認めるに足りる的確な証拠はない。」(原判決36頁)
「控訴人H及び控訴人Sについては,・・・本件貸付け実行当時,当初の貸出金利について認識があったとまでは認め難いといわなければならない。」(原判決39頁)
「仮に控訴人H及び控訴人Sとの関係では約定利率の合意の点で合意の欠缺という瑕疵があったとしても,」(原判決39頁)
「控訴人H及び控訴人Sとの関係で,控訴人ら主張に係る本件貸付けの実行当初の金利及びその金利決定基準の合意について瑕疵があったとしても,」(原判決39頁)
このように,大阪高裁13民判決は,Hさんらが,第一審の段階から主張立証を積み重ねてきた主張(合意の欠缺という瑕疵があること)について,そのとおりに端的に認定しています。
ところが,大阪高裁13民判決は,
「控訴人H及び控訴人Sとの関係で,控訴人ら主張に係る本件貸付けの実行当初の金利及びその金利決定基準の合意について瑕疵があったとしても,そのことが,その後,両控訴人に損害をもたらすことにはならないし,また,本件貸付けに係る消費貸借契約に基づく貸金返還請求の妨げにもならない」(原判決39頁)
と述べて,結論としては,HさんとSさんについて,本件貸金残債務が存することを認めてしまったのです。
次の記事では,中信側は,どう主張していたのかを見てみましょう。
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