思いつきで書いた物語と実話のMIX

フィクションとノンフィクション。目線を変えると景色も変わる

言葉にできない3-9

2019-09-06 23:01:00 | 日記

久しぶりに何もない休日


私はぶらぶら堂島川沿いを歩いていた


四季の丘にはたくさんの花が咲いていた





ニャー



ふと猫の鳴き声にあたりを見渡す


植木の根元の奥の方で子猫が鳴いている


トラ模様の小さな子猫がいる


体はずぶ濡れでやせ細っている


「どうしたの?



「お母さんと一緒じゃないの?



ニャー



子猫を抱きかかえようとするも


子猫は奥の方へ行く


反対から回ってみると子猫が出てきた


ニャー


子猫はこちらを振り返りながら川の方へ向かっていく


川沿いに着くと子猫は草の中を突き進み


もっと川の方へ進んでいく


「ちょっと!危ないよ!


子猫を追いかけるが、小さい子猫は草と草の間をすり抜けどんどん進む


「もう!


私は服が汚れるのも気にせずに草をかき分けた


ふと川辺にビニール袋があり


子猫はそれに向かって


ニャーニャー鳴いている



何だろうと袋を開けてみると


同じくらいの子猫達がもう2匹入っている


その子達も体がずぶ濡れだ


私はその小さな体を抱きかかえた




その小さな体はすでに冷たく


たくさん川の水を飲んだんだろう


はち切れんばかりに膨らんだお腹と


顔中に広がった目ヤニ


腐敗臭はないものの


ドブの匂いがした




子猫達は人間に捨てられたんだろう


最近は保健所もやむを得ない場合でしか引き取ってくれない


だから飼い主はビニール袋に入れて川へ投げたんだろう


この1匹だけが袋から這い出て


あの丘までたどり着いたんだろう


ここまで連れてきたのは弱った兄弟を助けてほしくて


ニャーニャー鳴いていた子猫も


冷たくなった兄弟を前に座り込んでいた


匂いを嗅いでも


体を舐めても


触っても



動かない兄弟達が死んだことも分かってないのかもしれない



私はその近くに亡くなった子達を埋め


小さな子猫を抱いて帰路に着いた



とは言ってもウチは動物が飼えない


でも放っておくことも出来ない


ウチで面倒を見ながら飼い主を探すことにした




そして私は連れて帰った子猫にエサを与えるため


留守番させて家を出た



トイレや猫砂


首輪や猫じゃらし



思い当たるものを買い揃えるため近くのホームセンターに向かった


とは言っても猫なんて買ったことないから店員さんに聞きながら


それなりのものを揃えて


急いで帰宅した



子猫は玄関で小さくなっていた


私が帰るとすぐに立ち上がり


こちらへ向かって歩いてきた



ミルクを水で溶かして容器にいれると


お腹が空いていたんだろう


モゴモゴ言いながら子猫はミルクをがぶ飲みした


そして一緒にお風呂に入って体を洗った


怖くて逃げ回って


私の腕は引っ掻き傷だらけになった


お腹もいっぱいになり


体も綺麗になると子猫は私の膝の上で眠りについた


私もベットにすがったまま気づけば寝ていた






お決まりのアラームに起こされ飛び起きた



子猫はまだ私の膝の上だった


私は準備のためにその子を持ち上げた








子猫は体が冷たく硬直し


私の膝の上で息を引き取っていた








私は仮病を使って会社を休んだ



そして



あの川沿いに子猫と一緒に歩いて向かった





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