「少年たちの目のまえにあらわれた、きらびやかな船行列。
それは隣国からの使節団、朝鮮通信使でした!
江戸時代の淀川を舞台に、
興奮と熱狂の一日をのびやかにえがきます。」
この絵本の、帯に書かれた文章である。
300年ほど前、江戸時代に、30年ぶりに、朝鮮から通信使が日本へやってきた。
正使、副使たち役人、学者、画家、医師、僧侶、軍人、音楽隊、芸人などなど、総勢500人あまりだったという。
この時の、様子を、絵本に描いている。
小林豊は、丁寧に、一ページ、一ページ、帯にあるように、大人も子どもも、その興奮と熱狂の歓迎ぶりを描き、それに応える朝鮮の人たちの行列や、舞楽や、交流のさまを描く。
「日本と朝鮮は隣国同士ですが、古代から深い関係をもちながら、何度も不幸な歴史を体験してきました。通信使は、お互いの国民感情のズレを越え、信頼を通ずる(通信)という基本理念のもと、江戸時代だけでも12回、将軍の代替わりのごと日本を訪れています。(中略)
よその国を知り、思い描き、理解するための橋を渡してきたのです。時代の波は、幾度もこの橋を危険にさらしてきました。しかし、いまもこの橋はあります。わたしたちが渡るのをまっているのです。」
と、小林豊は、後書きに記している。
この言葉通りだと思う。
日本画家である小林豊がなぜ、絵本製作に打ち込んでいるかというと、この〈信頼を通ずる〉という思いだろう。
そのことを、子どもたちに、一生懸命に、伝えようとしている。
小林豊は、大人対象の講演ではなく、「子どもたちに、話したいんだ」と、言う。
子どもと話さなくちゃ、だめなんだと。
(P.2の見開き。大阪の港に着いた異国の船行列を見物しようと、集まってきた人々。まるで、お祭り騒ぎでなのす。いいね。)
この物語の内容が、難しいという人もいるのです。
だが、この物語は、長文読解の、学校や塾のテストではないのです。
絵本を手にし、読んでみた子どもたちは、子どもたちなりの、理解の仕方をするものだと、私は思っている。
船上での舞楽のシーンや、かがり火を焚いて舞を踊るシーンなど、とても美しい。
絵本は、その美しい一ページ眺めて、もし、きれいな絵だなぁっと子どもたちが、思ってくれるなら、それが素晴らしいことだと、私は思う。
図書館で必ず、見つけることができるので、是非、開いて見て欲しい。
この朝鮮通信使の一行は、淀川を昇り、京都まで行き、京都からは陸路を江戸へ行き、熱狂的な歓迎の中、その道を往復したという。
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