ケセランパサラン読書記 ーそして私の日々ー

◆『ボッケ』と『ケープドリとモンドリアンドリ』

  

 『ボッケ』ハリエット・ファン・レーク著 『ケープドリとモンドリアンドリ』ヴァウテ・ファン・レーク著 野坂悦子訳 朔北社

 オランダの絵本。
 5月に入っての連休中、上野公園で絵本フェスティバルをやっていた。
 各出版社、大手もそれ以外も、それぞれがテントがけのブースをつくり、本の販売と、作家のサイン会、読み聞かせなどをやる催しだ。児童書、絵本など、ブースに並べられている本はすべて20%オフで購入できるというのも魅力となっているのか、かなりの人出である。
 私も、ほぼ毎年、出掛ける。
 ちょっとした大型書店より、はるかに品揃えが面白く、意外な出会いがあるからである。
 今年は、この二冊と出会った。

 朔北社のブースに並べられている絵本が、ちょっとマイナーというか、マニアックというか、つまり日本の翻訳絵本の市場にあまりみかけないチョイスなので、興味津々、じっくりと手に取って見させて頂いた。
 ブースにいた出版社の方、お二人も感じがよくて、ニコニコ顔で、私の質問にとても丁寧に応えて下さった。
 翻訳絵本のなかでも、かなりマイナー言語のオランダやベルギーの絵本が多く並んでおり、どのような方法で絵本を選んでいるのか、私は興味が沸いて、お訊ねすると、海外でベストセラーになった絵本や、賞を取った絵本などを中心に海外絵本の書店向けの展示会みたいなものがあるそうだ。
 言われてみれば、当然である。出版社が、買い付けに行っている訳、ないですよね~。
 で、この二冊は、野坂悦子さんが選本したのですか?とお伺いすると、ちょっと白髪交じりで穏やかな雰囲気の男性が答えてくださった。絵本は編集者が選んで、野坂さんに翻訳をお願いしたのだそうだ。

 編集者のセンスにも感心するけれど、なによりも、野坂悦子さんの偉いところは、オランダ語から直接、翻訳をしていることだ。通常、オランダ語のようなマイナー言語本は、英語版からの翻訳が多い。英語版からの翻訳になると、微妙なニュアンスが、微妙に違ってきませんか?と問うと、その通りだと、くだんの白髪交じりの男性が言った。
 そんなこんなで、英語版で出版されていないものは、日本ではなかなか出版されない。
 
 こういう絵本を出版している会社、いいなぁ。
 
 それで、絵本の中味を、ちょこっと。
 『ボッケ』は固有名詞。柳のうろに住んでいるみたところ、一見、人間の子どもの風体。ボッケはその柳のうろにリーと住んでいる。りーはボッケとよく似ている風体。
 ボッケとリーはブラブラ散歩していると、いろんな生き物に出くわす。
 そんな各ページのなかで、私のいいなぁーと思ったセンテンス。

  花に 口ごたえするなよ、フン。
  木によりかかるなよ、クルンチ。
  水ぎわに すわったら あかんぜよ、シィッ。

 これが、そのページ。野坂さんの訳、サイコーです!!  

  絵も、文も、とにかくユニーク。写真がピンボケだね。(^_^;)

 
 もう一冊。『ケープドリとモンドリアンドリ』は、タイトルからもわかるように、モンドリアンの絵が、モチーフになり、は背景に描かれていたりする。
 

  モンドリアンドリは、あたらしい 未来を さがします。
  ケープドリは、さがす ひつようなんか ぜんぜん ないと おもっています。
  「まってたら、いつか 未来に なるでしょ」

 中表紙から、このように、物語は始まる。 

 絵が、本当にステキだ。      

 それで、なんと、ハリエット・ファン・レークとヴァウテル・ファン・レークは姉妹なのだ!
 で、作家の(或いは画家も)固有名詞は英語の発音表記ではなく、現地語(この二冊の場合、オランダ語だけど)の発音に近いカタカナ表記にしてもらいたいものだ。それはかなり難しいことだが。
 
 Wouter van Reek は、ワウター・ヴァン・レークとなっているが、オランダ人はWouterをワウターと発音しない。vanをヴァンとは、発音しない。
 その国の言葉の誇りってあると思う。




 
 

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