黄色いクマのぬいぐるみ。
大きさは小学生の胸にすっぽりと収まるくらい。小さくもなく大きすぎることもなく、だっこをすればクマの背中のところで丁度両手を握ることができた。
名前は『クマちゃん』。とてもシンプルだ。
座っているポーズかな。
足も手も前を向いている。くまが歩くみたいに両手と両足をつかってたたせてみようとすると頭が床にくっついてしまう。頭がとても大きいクマ。
目は黒。真ん丸い目。十円玉くらいの大きさで表面が輝いている。
鼻も黒。真ん丸いボールのような鼻。素材は毛糸。
鼻は顔が少しでっぱったところについている。でっぱっているところは全体が白い色。その白いところの鼻の下に赤いベロがついている。
いつも何かの服を着ていた。夏と冬で服が変わっていたように思う。赤い毛糸であんだ、前にポケットがある服をよく着ていた。服の中がよく思い出せない。
おへそはあったのかな?
夜寝るときはいつも一緒に寝た。泊まりで旅行に行くときはいつも一緒。車での旅行も電車の旅行も。
クマ離れが始まったのはいつ頃だっただろうか、中学生のころもまだ私の近くにクマちゃんはいた。
クマ離れの決意をしたわけではなかったと思うが、次第にクマ離れしていった。犬が家にやってきたころだろうか。恋愛と関係があったかもしれない。高校生になって彼女ができたころには私の中に占めるクマちゃんの比率はかなり下がっていた。
そのころクマちゃんはたんすの上に座って私のことを見ていた。
クマちゃんの方を見ると、いつも黒い真ん丸い目で私のことを優しくみてくれているような記憶がある。
ドイツにクマちゃんはいない。日本の家にもいない。実家にもいない。
クマちゃんはもういない。
「もう古くなったから処分してていい?」と実家に帰るたびに母親に聞かれていた。「考えとく」と私は答えにならない返事をする。
ある時クマちゃんがなくなっていることに気がついた。でもどうしたのかは聞かなかった。聞けなかった。
今日から旅行にでかける。旅行の準備をしていると時々クマちゃんのことを思い出す。「忘れずに持っていかなきゃ」といつも感じていた記憶が。
大きさは小学生の胸にすっぽりと収まるくらい。小さくもなく大きすぎることもなく、だっこをすればクマの背中のところで丁度両手を握ることができた。
名前は『クマちゃん』。とてもシンプルだ。
座っているポーズかな。
足も手も前を向いている。くまが歩くみたいに両手と両足をつかってたたせてみようとすると頭が床にくっついてしまう。頭がとても大きいクマ。
目は黒。真ん丸い目。十円玉くらいの大きさで表面が輝いている。
鼻も黒。真ん丸いボールのような鼻。素材は毛糸。
鼻は顔が少しでっぱったところについている。でっぱっているところは全体が白い色。その白いところの鼻の下に赤いベロがついている。
いつも何かの服を着ていた。夏と冬で服が変わっていたように思う。赤い毛糸であんだ、前にポケットがある服をよく着ていた。服の中がよく思い出せない。
おへそはあったのかな?
夜寝るときはいつも一緒に寝た。泊まりで旅行に行くときはいつも一緒。車での旅行も電車の旅行も。
クマ離れが始まったのはいつ頃だっただろうか、中学生のころもまだ私の近くにクマちゃんはいた。
クマ離れの決意をしたわけではなかったと思うが、次第にクマ離れしていった。犬が家にやってきたころだろうか。恋愛と関係があったかもしれない。高校生になって彼女ができたころには私の中に占めるクマちゃんの比率はかなり下がっていた。
そのころクマちゃんはたんすの上に座って私のことを見ていた。
クマちゃんの方を見ると、いつも黒い真ん丸い目で私のことを優しくみてくれているような記憶がある。
ドイツにクマちゃんはいない。日本の家にもいない。実家にもいない。
クマちゃんはもういない。
「もう古くなったから処分してていい?」と実家に帰るたびに母親に聞かれていた。「考えとく」と私は答えにならない返事をする。
ある時クマちゃんがなくなっていることに気がついた。でもどうしたのかは聞かなかった。聞けなかった。
今日から旅行にでかける。旅行の準備をしていると時々クマちゃんのことを思い出す。「忘れずに持っていかなきゃ」といつも感じていた記憶が。