ベストセラー!と聞いて、今更かもしれないですが、百田尚樹「永遠の0」を読みました。
最初の方こそ、耳慣れぬ戦争の話、軍の階級であったり、戦地の場所、戦闘機や軍艦の名前などにちょっと戸惑ったのですが、本の3分の1を過ぎた頃から物語の世界に一気に話に引きこまれ、夜な夜な、最後まで一気に読みきっていました。
そうして、前評判通り、物語のテーマである、主役「宮部小隊長」の約束と覚悟・・には、本当に満足できる感動を得る事がでたわけです。
特に物語の後半「特攻で死んだ」としか聞かされていなかった祖父「宮部」の気持ちが手に取るようにわかり始めると、それが叶わぬこととわかりきっているのに「宮部を生きて帰してあげたい」気持ちが読みながら生まれ、宮部の無念さであるとか、彼の周辺の人々の思いに同調し、知らず知らず湧き上がる感動に涙があふれました。
ただ、そんな感情とは別に、その背景にある当時の日本にもすごく興味をもちました。
現在、終戦から67年。戦後復興を果たした我々の周りは、ありとあらゆるものに恵まれています。衣食住に恵まれた環境のもと、教育も約束され、まして文字通り「命を削る戦い」なんてほとほと縁があるはずもありません。
もちろん、戦後育ちである私たちには、それらが全て無かった頃を想像する事は難しいし、この本を読み終えた後では、その頃に生きた人々に軽々しく同情する事は不謹慎であるようにさえ感じてしまうのです。
今までの自分の中のセオリーでは、戦時中=貧しい、ひもじい、戦争で殺されたりして怖い、かわいそう、間違った軍国教育・・・ありとあらゆる事に戦時中が不憫であった事なんて、今までもテレビのドキュメンタリー、映画やドラマなどで知る事はできた訳ですが、今まで思いもしなかった事、「平和ボケ」している間に日本人が本当に忘れてしまったもの、逆に当時のほうが優れていた点も改めて感じさせるものでした。
愛国心とは何か、国を、そして身近な人を守る本当の生き方。物語にもあったように、当時は偏ったナショナリズムの中、狂気の時代でしたが、そこに生きる人々はそれぞれが、それぞれの運命の元、懸命に生きていました。
今のように軽々しく、日本はダメだ、とか政治がダメだ、世の中がダメだと、愚痴ばっかり言って諦めず、何としても良い方向に向ける努力をしてきました。当時の人たちに現代人の恥ずべき生き方を指摘されたような気持ちになりました。
自分の周りも、何人かの叔父が戦争に行った、とは聞いていましたが、全て数年前に他界しています。もうほぼ、戦後生まれ世代になりかわる今だからこそ、当時の話は興味深かったのかも知れません。
今となっては亡くなってしまった戦争に赴いた叔父たちですが、もっと当時の話をしておけば良かったな、とちょっと後悔したりもしました。