松村沙友理
ユニットの組み合わせは遊び心満載(松村)
──昨年1月リリースの1stアルバム『透明な色』は、デビューから3年間の集大成という内容だったと思いますが、続く2ndアルバム『それぞれの椅子』がそこから1年5カ月というインターバルで発表されたことに正直驚きました。しかも今回は全仕様含めると新曲が11曲。いざ完成したアルバムを聴いて、皆さんはどう感じましたか?
松村沙友理(以下、松村):そんなに早いスパンで出すんだなと正直驚きました。しかも新曲がたくさん入っていますし。AKB48さんは劇場公演でいろんなタイプの楽曲に挑戦できるけど、乃木坂はシングルが主な挑戦の場なので、こうやって新しい曲がたくさん増えたのは嬉しかったです。ハッピーです、うふふ(笑)。
橋本奈々未(以下、橋本):今は1枚目のアルバムが出たときに比べて、私たち自身が置かれている状況も変わっていて。昨年はグループとしてもメンバー個人としてもいろいろなことを経験させてもらって、紅白にも出ることができたので、今は乃木坂46が目標にしていたものをひとつ実現した段階だと思うんです。で、これからもっといろいろな人に見てもらいたい、知ってもらいたいということを自分たち自身も考えていて、ファンの人たちもきっとここからもう一段ステップアップしていくんだろうとワクワクしてくれている中で、新曲がたくさん詰まったアルバムを出すということが、後から振り返ったときに何か大きな意味があるものになればいいなと思っています。
──1stアルバムはどちらかというとベストアルバム的な作風で、それまでの活動の区切りのような意味合いも強かったですよね。一方で今作はシングル表題曲やカップリング曲も多いとはいえ、新曲メインのオリジナルアルバムという側面が強いのかなと。しかも新曲の多くは今までの乃木坂46にはなかったタイプの楽曲ですし、乃木坂46の新たな面を打ち出していきたいのかなという印象を受けました。
松村:確かに、ユニットにしても新しい組み合わせが多いですよね。(秋元)真夏たちの女子高出身ユニットだったり、生駒(里奈)ちゃんも(伊藤)万理華やさゆにゃん(井上小百合)との新しいユニットだったりと、今までになかった面白い組み合わせもあれば、ここ(松村と橋本)のお姉さんチームや(星野)みなみたちのように、見慣れた組み合わせもあって面白いなと。そういう意味では遊び心満載だと感じました。
橋本:リード曲の「きっかけ」は、乃木坂のことを好きでいてくれる人が聴いたらきっと「乃木坂っぽいな」と感じてもらえる素晴らしい曲です。
橋本奈々未
世の中的に「ヒット曲」と言える1曲が欲しい(橋本)
──確かに「きっかけ」はすごくいい曲だと思いますし、聴いていて「乃木坂46らしいな」と実感できる1曲です。と同時に、ここ最近のシングル表題曲が同系統のタイプの楽曲が続いていることで、これから乃木坂46がどこに進んでいくべきなのかも考える時期に入ってきたとも思うんです。あえてAKB48を比較対象に出しますが、例えば「ヘビーローテーション」や「恋するフォーチュンクッキー」みたいに万人が知ってる曲、「乃木坂46といえばこの曲」という1曲にまだ出会えてないのかなと。
橋本:世の中的に“ヒット曲”と言えるような1曲が持てたらいいよねって話は、メンバーとも常々していて。今はピアノを軸にしたミディアムテンポの、いわゆる「乃木坂46らしい曲」に票が多く集まると思うんです。でも、「乃木坂46のことはあまり知らないけどこの曲は知ってるよ」という曲は、「制服のマネキン」や「おいでシャンプー」くらい。従来の路線で現在応援してくれているファンの方から「確実に支持されるもの」を提供し続けるのか、ハマるかどうかわからないけどギャップを狙って新しいことにチャレンジするのかということなんですよね。でも、それにはまず私たちが確固たる地盤を固めないと、どっちつかずになってしまうと思うんです。
──それは、リリースするタイミングも関係してくるとは思います。例えば「君の名は希望」を今このタイミングに発表していたらどういうリアクションがあるのかなという気もしますし。
松村:「君の名は希望」はあの時代の乃木坂46にしかないオーラがあったからこそ、生まれた曲なんだと思います。歴史とともに曲は生み出されていくと私は考えているので、あのタイミングじゃなくちゃダメだったのかなと。
“いい人止まり”を超えるインパクトの強い曲を(松村)
──だから本当にタイミングって大事なんだなと思うし、あのタイミングだったから乃木坂46のカラーをひとつ作り上げる重要な役割を果たしたんですよね。と同時に、今のように知名度があるタイミングにあの曲を出していたら、今まで知らなかった人にもより広まるんじゃないかという考え方もあるんですよ。
橋本:「君の名は希望」が私たちの中で一番いい曲と言われることは、確かに多いですし、昨年の『紅白歌合戦』でも披露させていただきました。でも、あの曲はインパクトの強さを重視したものではなくて、じっくり聴いて歌詞やメロディの良さに気づいてもらえるような曲だからとも思うんですが、難しいですよね。
松村:乃木坂46の曲は恋でいうと“いい人止まり”みたいな印象があって。いい人ってみんなから好かれはするけど、結局付き合うまでには至らないというか。その“いい人止まり”を超えるインパクトの強い曲が必要なんじゃないかな。
──なるほど。
松村:だから、そろそろ“乃木坂らしさ”に固執する必要はないのかなという思いもあって。今回のアルバムだと「太陽に口説かれて」は今までの乃木坂とはちょっと路線が違うじゃないですか。私、この曲大好きですよ。
橋本:わかるわかる、私も好き。「太陽に口説かれて」はいい曲ですし、早くライブで披露したいですね。
松村:ライブでやりたい!
──確かにライブを想定して作った曲なのかなと感じました。
松村:振付がどんなふうになるのか、今から楽しみ。歌ってるときもめっちゃ楽しくて、みんなで車の中で歌ってます(笑)。
──これまでもシングルのカップリング曲で実験的な作品はいくつかありましたけど、それがいよいよアルバムで本格的に取り組まれ始めたのかなと。ユニット曲といえば、2人が参加している「空気感」は、他に白石麻衣さん、高山一実さん、衛藤美彩さんが参加しています。橋本さん、松村さん、白石さん、高山さんという組み合わせは過去にもありましたが、そこに衛藤さんが入るとまた新鮮で。この曲だけに限らず、少人数ユニットだと今まで以上に個々の歌声がはっきり認識できるのが興味深いですね。
松村:ファンの皆さんは、私たち個々の声ってわかりますかね?
──わかると思いますよ。特に松村さんはわかりやすいのではないかと。
松村:本当ですか? めっちゃ恥ずかしい(笑)。
──逆に個々の声を判別できない人が「あれ、この声いいな」と思って調べたら、実はこのメンバーだったという驚きもあるでしょうし。
橋本:そうだったら嬉しいですね。
個として見てもらえるようになった成果が表されているのかな(橋本)
──アルバムで他に気になった曲はありますか?
松村:新曲以外の話になっちゃうんですけど、カップリングから選ばれたユニット曲にめっちゃいい曲が多いなと思いました。
──例えば?
松村:例えばと言われると困っちゃうんですけど(笑)。
──(笑)。
橋本:仕様によって収録曲が異なるんですよね。(2人、資料で収録曲を確認)Type-Aはちょっとふわふわした印象で、Type-Bはライブの盛り上げ曲、Type-Cはアンダーライブのイメージで、Type-Dはライブのアンコールみたいな。
松村:あ、本当だ!(笑) 「ハウス!」もこのタイミングで収録してくれていますが、ファンの皆さんはすごく好きなライブ曲だと思うんで、こうやって改めて収録されるのは嬉しいですね。あと個人的には(生田絵梨花とのユニット曲)「無表情」が入ってるのが嬉しい。やったぜ!(笑)
橋本:私、アンダー1期生の新曲(「欲望のリインカーネーション」)がすごく気になっていて。この曲、アンダーの子たちがレコーディングを終えて帰ってきたとき、「この曲が一番好き」とか「今まで歌ってきた中で一番カッコいい」とかみんな喜んでました。
──そしてどの仕様も、ラストは「乃木坂の詩」で締めくくられます。
松村:曲の流れをライブっぽくしてるんですかね。
橋本:そうだね。どの仕様を聴いても、ライブの流れを楽しめるような曲順だし。
──もしかしたら夏のツアーへの布石なのかな、という気もしますし。
松村:このままのセットリストでもいけそうですもんね。これだけでセットリストが4種類できた(笑)。ちょっと話題が変わっちゃうんですけど、このジャケット写真、すごくキレイですよね。赤と青で目を惹くし、店頭に並んでたら目立ちますし。
橋本:大人数グループだからこそできるデザインですよね。
──しかも乃木坂46というと紫のイメージが強いので、あえて赤と青に分けるというアイデアは斬新だと思います。
松村:タイトルが『それぞれの椅子』で、メンバーの衣装も赤と青で別々なので、メンバーそれぞれの個性を見てほしいアルバムなのかなって。
──新曲に少人数ユニット曲が多いぶん、そこに目が行きますしね。メンバー個々のことを知ってもらうという意味では、乃木坂46が次のフェーズに突入したということなのかもしれませんね。
松村:ああ、なるほど!
橋本:タイトルからしてもそうですし。1枚目の『透明な色』は「まだ何にでもなれる」という意味合いだし、『それぞれの椅子』はメンバーそれぞれが個として見てもらえるようになった成果が表されているのかなって。私はこのタイトルをもらったとき、秋元(康)先生がそう感じてくれたのかなと思って、すごく嬉しかったですね。
橋本奈々未
好きなものについてもっと勉強したい(橋本)
──橋本さんと松村さんは去年から特に個々の活動が増えてきましたよね。2人ともファッション誌『CanCam』専属モデルとしての活動もスタートしましたし、橋本さんはラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』内『GIRLS LOCKS!』でパーソナリティを担当、松村さんは『じょしらく』『すべての犬は天国へ行く』といった舞台にも出演しました。昨年1年、そういう新たな経験を経た手応えはいかがですか?
松村:個人活動に限らずなんですけど、2015年は舞台や主演ドラマ(昨年7〜9月に放送されたテレビ東京系ドラマ『初森ベマーズ』)など、演技のお仕事をたくさん経験させていただいて、先日も『じょしらく弐〜時かけそば〜』に出演して、場を重ねるのが大事だなと感じました。『16人のプリンシパル』を除くと舞台は3回経験したんですけど、演技が苦手なまま3年ぐらい過ごしてきてしまって「私はこのまま一生下手なんだ」と思っていたんです。でも、自分の中でちょっとできるようになったんじゃないかと思う瞬間が出てきて。今回の『じょしらく』でも「あそこ、すごく良かったよ」と褒められることも多かったし、今までそういうことがなかったぶん、活動の中で手応えを感じる瞬間はちょっと増えた気がします。
──『じょしらく弐〜時かけそば〜』での松村さん、実際に楽しそうに演じてましたものね。
松村:うん、楽しいです。『プリンシパル』のときはただ必死でがむしゃらで、何も考えずにセリフを思い出す作業のようだったのに、今はただセリフを言うんじゃなくて、その役を演じる方向にシフトできてきてるのかなとは思います。
──そこが自信につながっている?
松村:そうですね。まだ自信満々とは言い切れないけど、5%ぐらいの自信は持ててると思いますし、「もっとやりたいです!」って自分から言えるようになりました。正直今まではやりたくても自信が持てなくて、「演技の仕事がやりたいです」とは自分から言えなかったんですよ。でも今はこういうインタビューでも「これからも演技系のお仕事をやりたいです」と言えるようになったので、そこは自分の中で自信が付いた証拠だなと思います。
──素晴らしいですね。橋本さんはどうですか?
橋本:昨年1年は、自分が好きなことをさせてもらえた年だったと思っていて。これまで5年くらい活動してきましたけど、2015年までの期間は好きなことをするというよりは目の前に提示されたことに立ち向かっていく感じだったのかな。けど、2015年は乃木坂46という母体が少しずつ認知されるにつれて、今まで好きだと言い続けてきたことが相手に届きやすくなり、ラジオのお仕事や音楽番組のMCのように、自分が望んでいたお仕事を最高の形でやらせてもらうことができて。たぶんそれって他のメンバーも同じだと思うんですけど、だんだんと個人の進みたい道がしっかりできてきてるのかなと思ってます。私自身、仕事でもプライベートでも好きなことをやるってことはすごく大事なことなんだなと、改めて実感した1年でした。と同時に、好きっていうことにもっと自信を持とうという気持ちから、好きなものについてもっと勉強したいなと思うようになった1年だったと思います。
松村沙友理
3期生は今までの乃木坂っぽくない子がいい(松村)
──糧になるものを得た結果、おふたりとも非常に前向きなのが今のお話から伺えました。そういう経験を経て、2016年夏以降の乃木坂46がどう進化していくのかも非常に気になるところです。そのタイミングで、夏には3期生も新たに加入しますよね。久しぶりに後輩が増えますが、どういう心境でしょうか?
橋本:でも私たち、人見知りだからね(笑)。
松村:ね?(笑)
橋本:この2人は仲良くなるのに一番時間がかかるんじゃないかな(笑)。
松村:本当に、2期生ともやっとすごく喋れるようになったぐらいですから。でも3期生が入る前に2期生と仲良くなれてよかったです。
──どんな子に入ってきてほしいですか?
松村:私は今までの乃木坂っぽくない子がいいな。ちょっと変わった子というか。
橋本:そうだね。うまくいきそう。
松村:えっ、私との関係性が?
橋本:違う違う、乃木坂46との相性が(笑)。乃木坂46っぽい子だと「次期○○」みたいになりそうじゃないですか。
──同じ路線を維持するのではなく、新たな起爆剤として今までにないタイプのメンバーを入れたほうが今後のためにもなると。
松村:そうですね。せっかく新メンバーが入るんだったら、もっと乃木坂46が盛り上がるのに不可欠な、意欲のある子がいいです。1期生、2期生関係なく先輩を倒すぞ!みたいな。って自分で言ってみたけど、そうなったら怖い!(笑)
橋本:(笑)。
──そういう新メンバーのみならず、今の乃木坂46は欅坂46をはじめとした若手グループからも追われる立場になったじゃないですか。乃木坂46を目標にしてますとか、乃木坂46を超えたいと思ってる人たちも多いと思うんです。追われる側になったことは意識しませんか?
橋本:そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、追い抜かされたら悲しいですよね。特に乃木坂はAKB48さんの公式ライバルとして誕生して、AKB48さんの背中をずっと追って走ってきたのに、そこから新たに誕生した人たちが後ろから追いかけてきて……まだ前にも追いついてないのに。あまり後ろを意識してばかりはよくないけど、今は追い抜かれないようにメンバー同士で力を合わせて頑張りたいです。