相変わらず「反日政策」は揺るぎない。韓国オリンピック委員会(KOC)が2020年東京五輪・パラリンピックに参加する自国代表選手団のために放射線測定器を用意し、韓国産の食材も持ち込む方針まで固めている。ロイターが報じたところによれば、東日本大震災で発生した東京電力福島第1原発事故による“食の安全”を懸念しているからだという。
確かにKOCは統括上部組織の大韓体育会(KSOC)と連携し、この方針を強行する構えをみせている。検閲の関係で韓国からどうしても持ち込めない肉や野菜などの食材に関しては、すべて放射線測定器を使ってチェック。問題がなければ、基本ベースの韓国産食材とともに調理材料として認められ、専属シェフが食事を用意する。どうやらKOCもといKSOC側は、そこまで徹底したガイドラインを内々で設けているようだ。
福島原発事故による“食の安全”に対し、韓国側の警戒度はハイレベルだ。日本側はこれまでも国内で流通している食品の安全性について「問題がない」と強調し、アップデートを重ねながら詳細なデータを公表している。実際に日本産食品の輸入規制を緩和した国や地域も多い。だが韓国は依然として放射性物質の漏出を理由に福島や岩手など8県産の水産物の輸入を禁止している。さらに水産物以外の日本産食品の検査も強化するなど段階的に規制を広げ、日本側の反発を未だ買い続けているのが現状だ。
日本側は韓国による福島産などの水産物の輸入禁止は不当として世界貿易機関(WTO)に提訴し、一審では主張が認められたものの今年4月の最終判決で逆転敗訴している。この判決に韓国は「高く評価する」との声明を発表しているが、どうも真の思惑は“食の安全”よりも別のところにあるとの見解が有識者の間では根強い。今や韓国のバックボーンとも言える「反日」だ。特に文在寅大統領の体制となって以降、その路線に言わずもがな拍車がかかり、韓国政府内でも福島産などの水産物輸入禁止や日本産食品の検査強化を「対日の政治的交渉カード」と見る向きが大勢を占めつつある。
KSOCにも関わる韓国メディアの事情通はこう明かす。
ますます言い訳が苦しくなる
「東京2020大会でも韓国代表の選手たちに日本産の食材を極力食べさせたくないのは韓国政府とすれば必然の流れだ。なぜならば、韓国国内で日本産食料品の産地や品目ごとに輸入禁止や検査強化を徹底しているにもかかわらず、東京2020大会の韓国代表選手たちが日本に行ったからといって現地でこれらの規制食料品を問題なく摂るとしたら辻褄が合わなくなってしまう。
その上でメダル獲得につながれば『選手村で用意された日本産の食材のおかげ』という声が強まることも考えられ、ますます言い訳が苦しくなる。対日の政治的交渉カードを死守する意味でも文政権としてはKSOC側にコネクションを使って“圧力”をかけ、東京五輪・パラリンピックへの放射線測定器と韓国産食材の持ち込みを強行させたい。そういう思惑があるのだろう」
しかしながら、この韓国側の方針には東京五輪の開催地・日本から当たり前のように強いブーイングが飛び交っている。東京五輪・パラリンピックの選手村では「GAP(農業生産工程管理)認証」をパスした農作物など厳しい基準を通過した日本産の食材も用いながら日本食以外にも、世界の代表的な料理が多数用意される。もちろん韓国料理も例外ではない。
だからこそJOC(日本オリンピック委員会)の内部からは「この韓国の考えはさすがに無茶苦茶」との声が噴出し、次のような意見も出ているのだ。
政治的道具の面が強い
「福島県で試合を行う野球とソフトボールの代表チームは選手村に入らずホテル泊まりなので、専用シェフに料理を作らせても特に問題はないだろう。ただ選手村へ入村する選手たちは、どこの国であろうともIOC(国際オリンピック委員会)の示す条件は同じだ。韓国の代表選手団にだけ専用シェフを認め、別の食事を摂っても構わないという特別扱いを認めるわけにはいかない。
こちらに放射線測定器を持ち込むのは勝手だが、これも“食の安全”うんぬんではなく明らかに日本にマイナスイメージを与えるための政治的道具の面が強いのだろう。さすがに、こうした韓国側の方針には怒りを覚えるし、さまざまな面で横暴と言わざるを得ない」
日本側としても「選手村で各国の代表選手たちを通じ、日本産の食材と和食の素晴らしさを世界に広める絶好の機会」ととらえ、今度の東京2020大会を重要視している。それだけに福島原発事故による“食の安全”に対する不安を過剰にアピールし、強硬手段まで取ろうとする韓国側には怒りを隠せない様子だ。やはり東京五輪・パラリンピックで日本の目論んでいるプランをすべて水の泡にさせるのが、文政権の狙い――。そういう、うがった見方をしている日本側の有識者は1人や2人ではない。
だが、東京2020大会で強行しようとしている韓国側の方針には日本だけでなく“身内”からも異論が向けられつつある。当事者の韓国代表選手たちだ。
前出の韓国メディア事情通は、こうも続ける。
「さすがに韓国の代表選手からも『選手村にいるのに食べたい食事が食べられないのは余りにもナンセンス』『東京大会の選手村の食事は非常にレベルが高いらしいと開催前から評判になっているのに、なぜ韓国だけ制限をかけられるのか』『選手の人権を完全に無視している』などと、方々からKOCやKSOCの上層部が勝手にまとめ上げた方針への批判が聞こえ始めている。
これだけNOを突きつける代表選手が多いのは、どうやら非公式ながらも韓国政府の与党タカ派議員の中から『五輪に参加する韓国の選手は現地で日本食を食べるぐらいなら、韓国産の缶詰でも食べたほうがいい』という無責任極まりない発言が出たことに呆れ返った背景もあったようだ」
文政権は東京五輪・パラリンピックまで「反日」へ向けた国内政治の材料にしようとしているのか。今月下旬に中国で安倍晋三首相と文大統領の個別首脳会談が実現する可能性は確かに高まっているものの、日韓両国の“亀裂”はスポーツの祭典を巡っても依然として深刻だ。
新田日明 (スポーツライター)