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誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →23

2010年11月19日 | 厚生年金基金
●代行返上の仕組み
Q 会社から代行返上すると言ってきたんだが、私の基金の年金はどうなるんだろう?(厚生年金40年加入・うち基金30年加入の昭和16年5月生まれの年金受給者)

A こんにちは、どうぞ。もう、年金は受けていらっしゃるのですね。
Q そお、ようやっと年金生活が落ち着いてきたところなのに・・・・・・・。「代行返上」すると言ってきたんだが。どうしてくれるんだろう。いったい、何を考えているんだろうねぇ! 
A その苦情は基金さんに言ってくださいよ。この窓口では、代行返上の仕組みとその後の年金についてはお話できますが、皆さんの心配の責任は取れませんので。むしろ、代行返上によって、またひとつ行政サイドは仕事が増えるわけですから歓迎していないのが実状です。できれば、基金にがんばってもらって代行返上をしないでほしいわけですよ。
Q 役所とはしてはそうだろうねぇ。でも、年金受けている者にとっちゃ、どこへ怒りをぶつけたらいいんだい。
A それは、まず、第一に基金でしょうかねぇ。次に、会社ですか。労働組合も。それに、3分の2の同意をした人たちでしょうか。とは言っても、本当は組織が問題ではなく、日本経済の低迷とか、時価会計の導入とかが事の背後にありますよねぇ。政官財の日本的経営手法が改めて問われ始めたということでしようか?
Q そうなってくると、ぶつけようがないねえ。
A 単に怒りをぶつけてどうなるものでもないですよねぇ。むしろ、事の理路を見極めなければならない問題だと思います。冷徹な観察眼が必要で、週刊誌的な空騒ぎはかえって問題を感情的にしてしまいます。
Q そういうことかもね。・・・・・・・。それでも、グリーンピアの不始末とか、いろいろあるでしょう。
A ありますねぇ。ここの窓口に怒鳴り込んでくる人もいますけどね。ここは、苦情処理センターじゃないですからねぇ、対応の仕様がないんですよ。・・・・・・・とは言っても、日本の組織風土では欧米風な裁判で決着を付けるというのは馴染まないようですねえ。
Q そう。それで、代行返上ってどうなっているの?
A その前に、「代行」ってご理解いただいておりますでしょうか?
Q そうねぇ、なんでも国の年金の一部を会社が支払うとかいうんじゃなかったかな!
A そういうことですよねぇ。厚生年金の報酬比例部分を厚生年金基金が代行して年金支払をするっていうことなんですけど・・・・・・・、そもそも厚生年金基金の制度発足の意味ご存知でしょうか?
Q さて、なんだろう?
A 昭和30年代後半に発生した厚生年金と退職一時金制度の調整問題解決のために厚生年金基金制度が発足したのです。つまり、年金と一時金の調整としての厚生年金基金ができたわけなんです。以来30年ほど経過して「退職金の年金化」は一応の社会的認知は得られたと思います。さらに、基金設立後の経過期間が30年にもなり厚生年金の半分ほどは民間で支払われるまでの実績が生み出されてきました。
Q そお、それがどうしたこと。ここにきて、代行返上だなんて!
A ご承知かと思いますが、「三種の神器」の日本的経営が立ち行かなくなり日本経済の低迷を招いてしまい、その結果、基金の資産運用が思わしくなくなり、ここ10年位積立不足が常態化していましたよねぇ。
Q そうらしいねぇ。
A 追い討ちをかけるように、平成12年度には基金の会計に時価会計が採用されて、各基金に突然巨額な債務が発生したんですよ。
Q ふぅ~ん!
A 会社はその損の穴埋めに耐えられなくなって、代行部分を国に返還して債務を軽くしようと考えたわけです。
Q そうなんだ。それで自分たちの年金はどうなるのかな?
A これ(参考図)をご覧ください。


図表33 代行返上前後の年金支払い




基金から支払われることになっていた代行部分は、国に代行返上されて国から給付されることになります。
Q 国って?
A 厚生年金です。もっと言うと、厚生年金の報酬比例部分です。
Q そおぉ。
A 残った上乗せ部分と加算部分は代行返上後、会社の新企業年金から支払われます。
Q そうすると、代行部分だけが支払い者が変わるわけだ。
A まあ、そういうことです。
Q 年金が減るようなことはないんだろうねぇ。
A 原則ありません。ただし、代行分は、基金は基金の支給基準で支払い、国は国の支給基準で支払いますので若干の相違が発生します。
Q 若干だね。
A ええ、ほんの若干です。基金の年金は平均給与を求めるとき再評価率を適用しませんし、物価スライドも適用しません。それに年金計算過程での端数処理も違いますのでドンピシャッとはいきません。
Q そのなの。
A 物価スライドの取り扱いが分かりやすいと思うのですけど、基金の年金は物価スライドが適用されませんから、平成15年4月の0.991%減額は基金の分も含めて国の年金で減額されました。そのため、基金の年金は変更ありませんでした。今までは、逆に物価が上がって国の年金が増額になっても、基金の年金は変わりませんでした。というより、基金の年金は一度年金額が決定されると生涯変更がないのです。増減は国の年金で行われるのです。
Q そうだったのかぁ!
A それに、基金の基準というのは基金ごとにさまざまで、ドンピシャッと合わせるにはその基金の基準を承知しないとできませんので・・・・・・・。行政サイドからチェックするのは難しいです。むしろ、基金サイドからチェックするほうが適当かと考えられます。
Q 詳しくは基金のほうに聞いたほうがベターだというわけだ。
A そうですね。国の基準は一つなのですが、基金の基準は無数にあると言ってもいいでしょうねぇ。
Q 事情が分かりましたよ。なかなかだねぇ。
A 制度が複雑になり、精度が劣化しましたねぇ。
Q どうも、ありがとう。外の人にもよく説明してあげてくださいよ。
A ええ、それがここの窓口の仕事ですので。
Q じゃ。
A 失礼します。

●代行返上後の年金の行方
Q 代行返上後の年金はどうなるのだろう? (厚生年金19年、うちA基金3年、B基金11年、C基金4年、さらに国民年金3年の昭和21年7月生まれの男性)

A お待ちどうさまでした。
Q こんにちは! 混んでいますねぇ。
A そうですねぇ。今日は、ちょっと多いですねぇ。47人待ちですか。
Q いつもこうですか? 
A いいえ、ここの社会保険事務所は、2、30人待ちが普通ですねぇ。窓口は10人おりますから1時間待ち位でしょうか。昼休みも交替でとり、続けてやっているんですけど。
Q そうなんだ。でも、これからは、私みたいな「団塊の世代」が押し寄せるんでしょ。ますます混み合うねえ。
A よく、ご承知ですねぇ。それに、お一人お一人の相談内容が複雑になり、事務所では頭を痛めているところですし、相談員に対するノルマも増える一方です。
Q ノルマがあるんだ!
A ええ、一人当たり25人ほどやらないと、皆さん全員に対応できないんですけど、私みたいなロートルはせいぜい16・7人になってしまうんですよ。
Q そうなんですか。それじゃ、さっそく本題に入りましょうか。
A ええ。
Q C基金が代行返上すると言ってきたんだけど、どうなっちゃうんでしょう?
A 代行返上であれば、国の厚生年金から支払われますので、大丈夫ですよ。まず、加入記録の確認をしますので、年金手帳、ありますか?
Q これしかないんだけど。
A 厚生年金被保険者証ですねえ。結構ですよ。被保険者証でも年金手帳でも基礎年金番号通知書でも、どれでもいいですよ。ちょっと、お待ちください。
A この記録(被保険者記録照会回答票)ですと、厚生年金は230月ですから19年ほど加入されているんですねぇ。この「5」という数字は厚生年金基金男子加入員ということで、こっちの「5H」というのは代行返上という意味です。で、今何歳ですかねぇ?
Q 57歳になるところだけど。
A 年金の加入はこれだけでしょうか? 57歳で19年しかないのは変ですねえ。ほかに別番号で働いていたとか、国民年金の加入はないんでしょうか? あるいは共済だとか・・・・・・・。
Q 昭和50年ごろ、一時国民年金に加入していた時期があったが。
A その番号は分からないんですね。
Q そうねえ。
A じゃ、お名前と生年月日で調べましょう。お待ちください。名前が変わったことはないですよねぇ?
Q ないねぇ。
A 大宮に住んでいたことありますか。国民年金の記録が出てきましたけど。
Q 大宮の●●にいたことがあるけど。
A 住所が合致しますので間違いないでしょう。3年ありますねぇ。それに、厚生年金の別の会社が一つありますよ。昭和43年3月から49年12月まで会社で働いていませんでしたか。
Q えっ、その会社は倒産したんだよ。○○って言ったと思うけど。
A ○○ですねぇ。82ヶ月出てきました。倒産でも破産でも、当時厚生年金保険料の納付がある場合、記録は残っています。これで、年間20万円以上の年金がオンされ終身給付されます。
Q 倒産でも出てくるんだ。
A 立派な会社だったんですよ。従業員に対する責任はきちんと果たされているんですから。
Q そお、ありがとう。ここに来た甲斐がありましたねぇ。
A それに、先ほどの19年の厚生年金の加入記録の中には、基金が三つありますねぇ。A基金が3年、B基金11年、C基金は4年、これが代行返上! う~ん、こりゃあ、大変だ!
Q ど、どうして?
A 年金受け取るのが複雑なんですよ! まず、厚生年金と国民年金の請求書を60歳のときに社会保険事務所に提出します。60歳から厚生年金の報酬比例分の支給が始まり、あなたの生年月日ですと63歳から定額分と加給年金が出て、65歳になると国民年金(老齢基礎年金)が始まります。
Q 国の年金だね。
A ええ。それに、60歳になったらA基金分は厚生年金基金連合会へ、B基金の11年分(待機期間者→待期者)はB基金へ請求します。C基金4年分の代行分は代行返上で国から支給されますが、C基金の上乗せ分はC社の新企業年金へ請求ということになります。
  つまり、請求先が①社会保険事務所(国民年金と厚生年金)、②厚生年金基金連合会(A基金とC基金分)、③B基金、④C社の新企業年金と四つになるんですねぇ。ということは、四ヶ所から年金が振り込まれることになります。
Q 四ヶ所から年金がもらえるんだ。すごいねぇ。
A というか、「細切れ年金」になるってことでもありますよ。請求手続きも四ヶ所だし、現況届なども毎年四ヶ所に出すようになります。
Q 面倒なんだ!
A 面倒って言えば、C社の新企業年金は新しいメニューですよね。
Q そうそう、それを聞きに来たんだった!
A C社の新企業年金は何型ですかねぇ?
C 何型って?
A いろいろあるんですよね。5種類だったと思いますけど。・・・・・・・。
これ(年金制度の選択肢の拡大)をご覧ください。


図表34 年金制度の選択肢の拡大




  いままでの企業年金は選択肢が2つに限定されていましたけど、今後は5つの選択肢に拡大されるんです。企業が財政責任を持つ確定給付型として、今までの「厚生年金基金」、それに代行なし基金としての「基金型企業年金」、適格年金廃止の受け皿として「規約型企業年金」。新たに、社員が財政負担を求められる「確定拠出年金」。さらに、確定給付と確定拠出の混合型として「キャッシュ・バランス型」もOKになりました。それぞれ一長一短ありますけど、個人が任意に選択できるのではなく、企業が選択・提供することになります。
Q こんなにあるんだ! 目がくらむね。
A でも、本人にとっては、どれかひとつですからねぇ。それさえ分かればそう難しいことじゃないと思いますよ。
Q どうして、こんなにメニューが増えたんですか? 
A そうですねぇ。日本経済の護送船団方式をグローバル・スタンダードにシフトしていかなければならない状況で、企業の年功序列とか、終身雇用が立ち行かなくなりつつありますよね。雇用の形態も多様化していますし、退職金制度も再度見直しが始まりましたよね。つまり、いままでの政官財一体の拡大・成長志向という統一された考え方が否認され、多様な価値観の試行錯誤が始まったということでしょうか。
Q そうですか。・・・・・・・。うちの社はどれなんだろう。
A 「基金型企業年金」か「確定拠出年金」でしょうかねぇ。
Q 会社に聞いてみよう。
A そうですね、それがよろしいでしょう。「確定拠出年金」であれば、ご自分で資産運用もするようになりますからねえ。
Q 何だかそんなようなことも言っていたなぁ・・・・・・・。
A それでしたら、よく会社に聞いたほうがいいですよ。猛烈な勉強が必要になりますから。
Q そうなんだ。株なんかもやるのかな?
A そうなるかもしれません。
Q そお、そりゃあ、おおごとだ! 4ヶ所に年金請求するんだったよね。
いやぁ、長々とありがとう。
A どういたしまして。


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