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誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →22

2010年11月18日 | 厚生年金基金
第5章 Q&A年金の行方(基金解散と代行返上)

はじめに

厚生年金基金制度がスタート(昭和41年<1966年>10月)して35年余が経過した現在、厚生年金加入者は3,158万人(平成14年3月末現在),うち厚生年金基金加入者は1,038万人(平成15年3月末現在)で、厚生年金加入者の3人に一人は厚生年金基金加入員です。

実際の年金支払の場面では、制度開始から35年ほど経過したので厚生年金(老齢年金)の報酬比例部分の大半は厚生年金基金の代行分から民間の手によって支払われています。つまり、厚生年金基金加入員の老齢年金(国が支払う)のほぼ半分は民間の厚生年金基金から支払われています。

このように厚生年金基金制度が成熟した中、平成15年<2003年>10月、厚生年金基金の将来分代行返上が認められ、一気に660基金の「代行返上」が始まりました。そのほかに確定給付企業年金に移行した基金(30基金)や「基金解散」も急拡大し、全国にそれまで1800余基金あったのが1000基金になろうとしています。要するに、多くの厚生年金基金(企業年金)が「基金解散」や「代行返上」に雪崩をうって走り始めたところです。それは、まるで巨艦から脱出するネズミの大群の如しという事態になっています。

この背景には、いったい何が考えられるでしょうか?

厚生年金基金財政の積立て不足でしょうか? 因果の連鎖をたどって見ればそれは結果でしかないでしょう。低利回り・非効率な資産運用環境、運用機関にも基金にもプロのいない資産運用、新規加入員減少に伴う数理計画の破綻、事前積立方式ではあっても政府の年金勘定と同様どんぶり勘定である基金会計の限界等々。しかし、何よりも大きな影響力を発揮したのはジャパニーズ・スタンダードの放棄を迫る時価会計の採用でしょう。退職給付債務の計上が突然巨額な負債を出現させたのです。

世界はすでにグローバル化していて、唯我独尊の鎖国状態のまま日本が生きていくことはできなくなっているのです。ましてや、資源のない製造業の輸出事業振興をメインにした経済活動がなければならないのですから、時価会計を拒むようなアナクロニズムは「死に至る病」となるのです。

否認された「三種の神器」(終身雇用・年功序列・企業内組合)は、厚生年金基金の経験を経路にして、新たに生まれ変わることになるのでしよう。

このような混迷のとき、社会保険事務所の年金相談コーナーには、お尋ねの人が大挙して押し寄せています。現在、窓口はプレ団塊世代の大勢の相談者も含めて溢れかえっています。ところによっては、50人待ち、2・3時間待ちが常態になっている社会保険事務所もあります。加えて、厚生年金の過払いや未払等の行政サイドのミスに対する問いただし、新聞・TV・週刊誌等の「カラ報道」による問い合わせ等の風あたりが強くなっています。それに加えて、世の中にリストラによる40代・50代の失業者が溢れかえっているのに、社会保険事務所での年金見込額の計算は、現在58歳以上でなければ資料提供をしていません。遅ればせながら、今後55歳、または50歳から資料提供をしようという予定はあるようです。二-ズはあるのですが、対応が追いついていない状態です。こうして現在の年金相談窓口は、何かと、問題含みで、平安な日々がないありさまでストレスが高まっています。

「厚生年金基金」についての相談に対する行政サイドの対応もどちらかというと消極的で後手、後手に回っています。社会保険事務所の年金相談窓口では、基金制度について制度の基本的な仕組みや加入状況、代行返上後の年金見込額等は回答しますが、基金一般についてはほとんど承知していないというのが実態です。しかも、「基金解散」や「代行返上」について詳細・細部の相談は個別基金ごとに給付内容が異なるので、年金相談窓口からすればやむを得ず「それは基金に聞いてください」ということになります。門前払いを食わされた多くの相談者は不満を抱えたまま退散することになっています。

このように基金解散と代行返上について、厚生年金基金からの説明不足と行政サイドの消極姿勢の狭間で宙に浮いている加入員等が大勢おられるのが現実となっています。そこで、筆者の厚生年金基金25年の実務経験と年金窓口相談2年余の現場経験をもとに、年金相談者と回答者の窓口風景として基金解散・代行返上についての幾つかの問題点を説明してみようと考えます。

ただし、この「Q&A年金の行方」は、あくまでも筆者(民間人の年金相談窓口アルバイタ-)の個人的発言であり、役所の公式な発言ではないことを重々ご承知おきください。

筆者の窓口での「年金相談」は窓口混雑のため相談件数を上げなければならないのですが、どちらかというと「人生相談」になってしまい、一人当たりの相談時間が長くなりがちです。反面、アカデミックな説明はおろそかになりがちです。そのためここでは、極力詳細に、しかもQ&Aの範囲内で、分かりやすく説明したいと考えます。年金相談一般に絡めて基金解散・代行返上を説明しますので全体をお読みいただければ、年金の概要がご理解いただけるようになると思います。

さらに、詳細をお知りになりたい方、疑問をお持ちになった方等は、直接社会保険事務所の年金相談窓口にお出かけください。年金は個別事案ですので、人情としての勝手解釈や一般論では大きな間違いとなることもありますので、個別に確認されることが非常に重要です。


1.基金解散と代行返上に伴う年金の行方

●厚生年金基金の仕組み
Q 定年で会社を退職するのだが、年金はいくら受けられるのだろうか?(厚生年金39年加入・厚生年金基金20年加入・国民年金6ヶ月加入の昭和18年5月生まれの男性・妻あり)

A はじめに、加入期間の確認をしますから年金手帳を見せてください。
Q 被保険者証しかないが・・・・・・・
A それで結構ですよ。年金手帳でも基礎年金番号通知書でもおなじことですから。コンピューター(社会保険庁・業務センター「社会保険オンラインシステム」)で確認しますからちょっとお待ちください。
A この記録(被保険者記録照合回答票・参考)ですと、昭和40年4月が最初の厚生年金加入になっていますが、それ以前に働いたことはないですか?
Q 学生中にアルバイトはしたけど、年金はなかったと思うけど・・・・・・・。
A ちょっと、待ってください。・・・・・・・。生年月日とお名前では出てこないですね。その会社名は分かりますか?
Q ●●だったかなぁ。
A ああ、ありましたよ。●●株式会社ですね。別番号ですねぇ。6ヶ月ですから、年間18,000円くらい追加され、終身給付されます。
Q ええ、ほんと! すごいねぇ。すぐ分かるんだ。
A 昭和17年以降の厚生年金保険料納付記録を社会保険庁は保管・管理しています。倒産や解散など関係なく。お名前と生年月日、それに会社名などが分かれば調べられます。
Q そおですか。・・・・・・・。そうすると、全期間では474ヶ月になるんですね。
A 年金見込み計算をしますから・・・・・・・。
A お待ちどうさまでした。18年5月生まれですと、報酬比例分が60歳からで、定額分と加給年金分が62歳からですねぇ。
Q 報酬比例分って?
A その方の厚生年金加入から退職までの全期間(38年)の平均給与で計算する部分です。生涯給与が高い低いで年金額が違ってきます。ここの昭和40年ごろの標準報酬月額(給与)は12,000円ですけど、平均給与を計算するときこのままは使わず、現状に近い額に見直しをして計算します。再評価率というのを乗じて求めます。
Q 昔の給与も今風に見直すんだ。
A ええ。
Q ところで、定額分というのは
A 生年月日により決まっている単価があり、それに加入月数を掛けて求めます。ただし、あなたの場合、444ヶ月の上限を超えていますので、444ヶ月として計算されます。
Q それ以上は増えないわけ?
A ええ、65歳とか、70歳まで厚生年金に加入しても定額分は打ち止めです。増えるのは報酬比例分だけです。
Q そうなのか。妻の分も出るのかな?
A それが加給年金です。ご主人が受給権取得のときに年収850万円以下の戸籍上の妻がいらっしゃる方につきます。事実婚の場合も受けることができる場合もあります。これも、ご主人の生年月日により単価が決まっています。通常、これは奥さんが65歳になるまでの間、付きます。ただし、奥さん自身が厚生年金等で20年とか15年の特例で年金を受けられる場合はその時までです。
Q ややこしや、ややこしやだね。
A ええ、まだ序の口ですよ。日本の年金は制度の成熟とともにぶざまなほど複雑になってしまいました。このため、年金を受ける方と支払者双方に混乱が生じていますので、ここの年金相談みたいな仲介者が必要になるのでしょう。
Q で、60歳のときは幾らなの?
A 474ヶ月加入(制度共通年金見込額照会回答票)で、年額503,200円となっています。普通、40年ほど加入の人の報酬比例分は100万とか120万とかになるのですが、ご主人の場合は、厚生年金基金が20年ありますので、その基金の代行分を合算しないと正当な報酬比例分にはなりません。
Q 基金って、会社でやってる企業年金?
A そうです。
Q 国の年金とは別に請求するの?
A ええ、忘れているというか、知らない人が結構多いですよ。60歳になったら厚生年金基金から案内があると思いますが・・・・・・・昔の恩給と違って、国の年金も基金の年金も請求主義ですから、本人の請求がなければ年金は支払われません。
Q そうなんだ。それで、厚生年金基金って何なの?
A そうですねぇ・・・・・・・これ(図表9.厚生年金基金の仕組み)をご覧ください。国の厚生年金(老齢年金)は先ほども言いましたように報酬比例分と定額分と加給年金で構成されていますが、厚生年金基金はこの報酬比例分の一部を国に替わって代行して厚生年金基金から年金を支払います。加えて、基金は、代行分のほかにその企業独自の上乗せ分(退職金の一部または全部が含まれる方式もある)を合算して支払います。このため、厚生年金からは代行分がマイナスされて支払われます。
Q ややこしやだねぇ。
A 病、何とかですねえ。
Q ほんとに!
A ご主人の場合はまだシンプルですよ。転職を繰り返したような人は、厚生年金基金が幾つもあり、みんな10年以下の勤務だとすると、その年金原資は厚生年金基金連合会に移管されていて、そこへ年金請求することになります。基金では1ヶ月以上の加入はすべて終身年金になります。短期しか勤めなかった基金の分でも、いくつかを取りまとめて厚生年金基金連合会から終身給付があります。
Q そうなんだ! 知らなかったなぁ。忘れずに厚生年金基金や厚生年金基金連合会に請求しなければ駄目なんだ。誰もやってくれるわけじゃないんだ。自分でやるんだ。
A そうですね、自分の年金は自分で作るんですよねぇ。日本の年金制度は複雑・多岐になっていますので、その中で「自分年金」をビルディングするのはあなたご自身です。
Q ふぅ~ん・・・・・・・。ところで、62歳からは幾らになるんだろうか?
A 報酬比例分に定額分と加給年金分が支給開始になり、合算して1,830,600円です。月当たり152,550円ですね。
Q えっ、月15万円なの?
A そうです。でも、厚生年金基金があること忘れないでください。厚生年金基金が70万ぐらいはあると思いますよ。それに65歳になったら、国民年金の6ヶ月分、年1万円ぐらい増えますでしょうか。
Q こんなものなの。
A ええ、世代間で大分差がありますけど、平成15年の今、60歳になる人の年金の水準は、厚生年金40年加入の妻ありの人で月額20万円ぐらいです。
Q そうなんだ。これじゃ、都会地じゃ暮らせないねぇ。田舎へ行くか、物価の安い外国へ行くか・・・・・・・う~ん、こりゃあ、深刻だねぇ!!
A そうですねぇ。60歳以降、働くところもないまま、突然の病気や借金に立ち向かわなければならないし、「予測不能な闇」と対面することになるんですねえ。
Q まったくそうだねぇ。よく分かりましたよ。現実は、超、厳しいねえ。しっかり考えないといけないなぁ。・・・・・・・どうも、ありがとう。
A どう致しまして。奥様にもよくお話ください。

●基金解散後の年金
Q 基金が解散するとか言うんだが、私の年金、どうなっちゃうんだろう?(厚生年金29年加入、うちA基金1ヶ月・B基金12年・C基金解散の昭和26年生まれの人)

A 解散ですか。厚生年金基金からお知らせとかありましたか? 
Q いや。社内のうわさなんですけどね。皆がいろいろ言っているもんで、・・・・・・・。
A そうですか。厚生年金基金を解散するには事前の準備が大変で、なかなかすぐにはできないのが実態のようですねぇ。
Q 時間がかかるんだ! 
A そうですねぇ。はじめに、厚生年金基金を解散しようと考えるにはあなたのところの基金は年金原資の積立不足があるんだと思われます。その積立不足のお金の捻出をどうするか、会社は頭を痛めていると思います。
Q どうしてそうなったのかねぇ。
A いろいろありますけど、日本経済のバブル崩壊後の低金利、内外株式市場の低迷、新規加入員の減少、それに特に大きな影響は時価会計の採用による突然の巨額債務の出現でしょう。大部分はこのような個別基金の努力の範囲外の要因のせいでしょうねぇ。
Q そりゃあ、大変だねぇ。
A そうですねぇ、日本の従来の政官財のやり方は改めざるを得ない状況になってきました。
Q そういう激動の時代に自分たちは年金生活に入っていこうとしているわけだ。
A ええ。次に大変なのが、一人一人の年金加入記録の突合(とつごう)という事務局の作業があります。基金全員の加入記録が厚生年金の加入記録と合致しなければ解散できないわけです。厚生年金基金の名前はなんと言いますか? 窓口常備ではないんですが、私専用の名簿(厚生年金基金連合会発行:厚生年金基金役職員名簿)で見ましょう。
Q XYです。
A XY、XY・・・・・・・単独・加算・Ⅱ型ですねぇ。こりゃあ、おおごとだ。時間がかかりますねぇ。業務委託がⅡ型じゃあ、さぞかし、事務局は泣いていますよ。それに、解散の同意を3分の2以上集めなければなりませんから。そんなこんなで、事務局は大変なわけですし、時間もかかるということになります。おそらく、分けの分からない役員が早く、早くと、騒ぎ立てているんじゃないですか。
Q 会社の清算と同じようなことになるわけだ。
A そうですねぇ。
Q それはそれとして、私の年金はどうなっちゃうの?
A 手帳を見せてください。記録を見ますから。・・・・・・・。
A この記録(被保険者記録紹介回答票)ですと、厚生年金基金が3つありますねぇ。
Q 3つ?
A この会社のときですけど、1ヶ月だけですね。
Q 1ヶ月? 憶えがないなあ。
A 1ヶ月厚生年金基金に加入していますよ。これは将来60歳になったら厚生年金基金連合会(電話03ー3377ー3111・ホームページhttp;//www.pfa.or.jp/)から終身給付されます。
Q そぉ、1ヶ月でも終身払ってくれるんだ。すごいことやっているんだねぇ、その連合会というのは。
A ここの基金は、・・・・・・・12年あるじゃないですか。これは、ここの会社の厚生年金基金から支払われます。通常、10年以上厚生年金基金加入の場合は、その厚生年金基金から支払われ、10年未満だと、厚生年金基金連合会に年金原資が移管され、厚生年金基金連合会から支払われることになっています。
Q そぉなっているんだ。
A 在職中のこの厚生年金基金は5年ほどですか?
Q そおね。解散するとか言われているんだけどね。前のふたつは分かったけど、この年金はどうなるのかな。
A どう説明したらいいでしょうかねぇ。言葉だけだと分りづらいんですよねぇ、抽象的になってしまい。代行部分は厚生年金基金連合会から終身給付されますが、基金が存続していたときには基金が支給する年金には支給停止を行わない規約になっていても、基金解散後は国が支給している老齢厚生年金と同様に扱われるため、在職中や雇用保険(失業給付等)との調整により、老齢厚生年金が支給停止されることにより、代行相当部分の年金であっても、年金額が減額または支給停止となる場合があります。
Q 支給条件がきびしくなるんだ。
A そうなりますねぇ。それに、上乗せ部分は各基金独自のものですけど、この部分の年金はなくなります。これは、残余財産として解散基金加入員に一時金で分配されます。一時金のかわりに連合会に申し出れば、連合会から代行加算年金として受けることもできます。この一時金は、基金によっては、15年とか10年とかの年金で支払うところもあります。
Q 上乗せ部分の(D)と(E)は清算されるんだ?
A 基金解散というのは、年金が清算されることですよね。代行部分は支払者が変わりますけど・・・・・・・。
Q そうなんだ。
A この連合会資料(基金の解散について)は参考までに、後で見といてください。
Q ありがとう。うぅ~ん、解散って言うのは、将来の年金額が減額になるってことだねぇ。
A なんだかんだ言っても、そういうことです。年金受給権が一部そがれるということですよね。
Q 以前の保証はしないし、できないってことなんだ。
A そうなりますね。
Q 今までが出来すぎだったんだ。
A 終身雇用も年功序列も維持できないという現実が基金解散ということになって噴き出してきているんですねぇ。
Q そういうことなのかねぇ。われわれはどこへ行くのかなぁ。
A 日本人は、それを見つけ出さなけりゃならないところへ追い込まれたのでしょうねぇ。
Q そういうことみたいだねぇ。・・・・・・・。いやいや、ありがとう。よく考えてみますよ。
A プラス思考でいきたいですね。

●代行返上の仕組み

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