自分たちで作っていこうという民間の姿勢と、中央でやっているはずだという他者依存というか、始めからの放棄、別世界事という地方官僚の観念がぶっつかりあうことになります。
●「経営など、したこともない!」
企業業務の傍らの「基金兼任理事長」が、民間感覚で過去に時々基金業務に発言することがありましたが、事務局からかくかくしかじかになっていますという説明・助言を受けて言うことには、「誰が責任者なんだ!」、「誰が経営しているのか!」という怒りの声でした。
規制・指導で雁字搦めになっていて裁量の余地を残してない基金制度について、基金事務所は<役所の出先>なのか、とよく叱られたものです。
というのも、理事長交替のたびに、基金業務の認可・指導行政の実態説明、大蔵省にべつたり張り付き厚生年金基金制度の直接の所管官庁の厚生省を無視した本邦金融機関の護送船団体制感覚、厚生省と民間の狭間で身動きが容易でない厚生年金基金連合会の実態、基金業界に蔓延する保守主義等々を説明し、ニッチがほとんどない実態を理解してもらうのに苦労したものです。
ヘッジファンドは投資収益の絶対水準のみを追求し、例えば株価指数などの収益差な
どには関心がない。・・・・・・・。最近では、少数の銘柄の株式、特定の通貨や債券に集中的
に投資することは一般的には主流ではないが、成功しているヘッジファンドは、自分た
ちが自信を持っている集中投資の戦略を堅持している。
つまり、ヘッジファンドは、どこでもマーケットが動けば収益が上がるといった楽観
論に基づいて投資をするゼネラリストではない。明確な戦略に基づいて投資を行うスペ
シャリストなのである。
米タイガー・マネジメント社M・Dイェスパー・コール
「ヘッジファンド対策」日本経済新聞社:経済教室 99.4.23
筆者は8人にのぼる理事長交替を経験してきましたが、代々の理事長の発言趣旨を要約すれば、各理事長は、基金の「経営など、したこともない!」ということになりましょう。
今でも、<経営>などと基金業界で言い出すと、何処からともなく「<行政>なんだよ」、と聞こえてくる始末です。別の人からは、「国の委託業務を粛々とこなすだけ」などという、第三セクター並みの発言を耳にしたこともあります。国が最終責任を取ってくれるという負け犬の姿勢、他力本願のゼネラリストの責任霧散体質が、このたびの資産運用利回りの低下による積立不足を身動き出来ない状態にまで引きずりこんでしまったということでしょう。
30年余の長きにわたり国の委託業務のオペレーションで運営されてきた厚生年金基金には、経営主体など在りえようがなかったのです。経営権を剥奪されたまま、官僚の遠隔操作によってお祭りをしてきただけともいえるでしょう。
図表5のような組織機能は平成10年以降徐々に導入され始めたにすぎません。
図表5 厚生年金基金経営の組織機能
*筆者による一部補正< >があります。
3.基金運営から基金経営へ
●代行の由来
基金制度が考えられた背景には、昭和30年代後半の物価上昇や人手不足等により賃金が上昇し、併せて退職金も年々上昇、企業は財政上その支払いに振り回され、経営が不安定になっていたという事情がありました。
そこへ厚生年金と退職金の費用負担の調整が経営サイドから浮上し、税の優遇を受けた資金手当の平準化が可能な企業年金制度が創設されたのです。初めに税制適格年金が厚生年金基金制度の発足までのつなぎ措置で昭和37年にスタート、昭和41年には厚生年金基金制度が厚生年金の一部代行という世界に類をみない方式でスタートしたのです。
これは、言ってみれば一方的に経営サイドの要望によって創設された制度なのです。自らの
意思で基金設立を認可申請した企業は、本体代行・確定給付・事前積立て財政・5.5%の予定利率・独立法人方式等々で契約し、事務負担・債務負担を承知の上で給付を約束したのです。
制度がスタートしてからは、大蔵省の産業資本調達の統制計画経済をバックグランドに厚生省の裁量行政が始まり、大蔵省に通じていた信託・生保の各種の既得権益確保も制御出来ずに、信託・生保の恫喝営業(例えば、持株比率によるシェア分配強要、持株を餌に解約拒絶、信託・生保の一営業員がアポも取らずに社長面談要求、事務局に対して上の方で決定しているのですからと理事長印を求めたり・・・・・・)も見ぬ振りを通したり、俗に言います箸の上げおろしにまで法的根拠の無い厚生官僚の裁量により介入したり、経験者でなかったらばわからない数々の実態(たとえば、業務委託指定法人のカンバンだけ営業、実際には事業を行う人的・物的設備のないままカンバンだけだしているのを承知もせず、申請がありますから指定法人にしているだけという厚生官僚とか、総幹事制度での掛金拠出・年金給付業務のとりまとめに対する報酬はお幾ら? に答えられる官僚も信託・生保も常務理事もいないというのが実態であり、答はせいぜい別体系と言い逃れるだけとか)があります。
結局、日本の厚生年金基金制度というのは、厚生年金と退職金との「調整手法」の代行という妥協の産物に、官僚が民間の要望を信託・生保に利便を提供するという形で成立した政府の政策マターで始まり、政治家の集票のために再々の年金引上げにより社会保険マターとなり、ここにきて内部に仕掛けられていた本来の金融マターとしての<代行>というのが明らかになってきたということでしょう。
●「経営など、したこともない!」
企業業務の傍らの「基金兼任理事長」が、民間感覚で過去に時々基金業務に発言することがありましたが、事務局からかくかくしかじかになっていますという説明・助言を受けて言うことには、「誰が責任者なんだ!」、「誰が経営しているのか!」という怒りの声でした。
規制・指導で雁字搦めになっていて裁量の余地を残してない基金制度について、基金事務所は<役所の出先>なのか、とよく叱られたものです。
というのも、理事長交替のたびに、基金業務の認可・指導行政の実態説明、大蔵省にべつたり張り付き厚生年金基金制度の直接の所管官庁の厚生省を無視した本邦金融機関の護送船団体制感覚、厚生省と民間の狭間で身動きが容易でない厚生年金基金連合会の実態、基金業界に蔓延する保守主義等々を説明し、ニッチがほとんどない実態を理解してもらうのに苦労したものです。
ヘッジファンドは投資収益の絶対水準のみを追求し、例えば株価指数などの収益差な
どには関心がない。・・・・・・・。最近では、少数の銘柄の株式、特定の通貨や債券に集中的
に投資することは一般的には主流ではないが、成功しているヘッジファンドは、自分た
ちが自信を持っている集中投資の戦略を堅持している。
つまり、ヘッジファンドは、どこでもマーケットが動けば収益が上がるといった楽観
論に基づいて投資をするゼネラリストではない。明確な戦略に基づいて投資を行うスペ
シャリストなのである。
米タイガー・マネジメント社M・Dイェスパー・コール
「ヘッジファンド対策」日本経済新聞社:経済教室 99.4.23
筆者は8人にのぼる理事長交替を経験してきましたが、代々の理事長の発言趣旨を要約すれば、各理事長は、基金の「経営など、したこともない!」ということになりましょう。
今でも、<経営>などと基金業界で言い出すと、何処からともなく「<行政>なんだよ」、と聞こえてくる始末です。別の人からは、「国の委託業務を粛々とこなすだけ」などという、第三セクター並みの発言を耳にしたこともあります。国が最終責任を取ってくれるという負け犬の姿勢、他力本願のゼネラリストの責任霧散体質が、このたびの資産運用利回りの低下による積立不足を身動き出来ない状態にまで引きずりこんでしまったということでしょう。
30年余の長きにわたり国の委託業務のオペレーションで運営されてきた厚生年金基金には、経営主体など在りえようがなかったのです。経営権を剥奪されたまま、官僚の遠隔操作によってお祭りをしてきただけともいえるでしょう。
図表5のような組織機能は平成10年以降徐々に導入され始めたにすぎません。
図表5 厚生年金基金経営の組織機能
*筆者による一部補正< >があります。
3.基金運営から基金経営へ
●代行の由来
基金制度が考えられた背景には、昭和30年代後半の物価上昇や人手不足等により賃金が上昇し、併せて退職金も年々上昇、企業は財政上その支払いに振り回され、経営が不安定になっていたという事情がありました。
そこへ厚生年金と退職金の費用負担の調整が経営サイドから浮上し、税の優遇を受けた資金手当の平準化が可能な企業年金制度が創設されたのです。初めに税制適格年金が厚生年金基金制度の発足までのつなぎ措置で昭和37年にスタート、昭和41年には厚生年金基金制度が厚生年金の一部代行という世界に類をみない方式でスタートしたのです。
これは、言ってみれば一方的に経営サイドの要望によって創設された制度なのです。自らの
意思で基金設立を認可申請した企業は、本体代行・確定給付・事前積立て財政・5.5%の予定利率・独立法人方式等々で契約し、事務負担・債務負担を承知の上で給付を約束したのです。
制度がスタートしてからは、大蔵省の産業資本調達の統制計画経済をバックグランドに厚生省の裁量行政が始まり、大蔵省に通じていた信託・生保の各種の既得権益確保も制御出来ずに、信託・生保の恫喝営業(例えば、持株比率によるシェア分配強要、持株を餌に解約拒絶、信託・生保の一営業員がアポも取らずに社長面談要求、事務局に対して上の方で決定しているのですからと理事長印を求めたり・・・・・・)も見ぬ振りを通したり、俗に言います箸の上げおろしにまで法的根拠の無い厚生官僚の裁量により介入したり、経験者でなかったらばわからない数々の実態(たとえば、業務委託指定法人のカンバンだけ営業、実際には事業を行う人的・物的設備のないままカンバンだけだしているのを承知もせず、申請がありますから指定法人にしているだけという厚生官僚とか、総幹事制度での掛金拠出・年金給付業務のとりまとめに対する報酬はお幾ら? に答えられる官僚も信託・生保も常務理事もいないというのが実態であり、答はせいぜい別体系と言い逃れるだけとか)があります。
結局、日本の厚生年金基金制度というのは、厚生年金と退職金との「調整手法」の代行という妥協の産物に、官僚が民間の要望を信託・生保に利便を提供するという形で成立した政府の政策マターで始まり、政治家の集票のために再々の年金引上げにより社会保険マターとなり、ここにきて内部に仕掛けられていた本来の金融マターとしての<代行>というのが明らかになってきたということでしょう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます