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事前公開<自分年金に強くなる法「厚生年金基金の話」>連載7

2010年06月07日 | 厚生年金基金
そういう由来をもつ基金制度ですが、最近の財政逼迫に際して、30年前の契約の無効を政府にすがって免除してもらおうとする者、又は、契約破棄を望む者がやたらに多いということは、或る意味では、日本の法治国家としてのレベルの低さを表すとともに、法を捩じ曲げても自分の主張を通おそうとするのは、先般の大蔵省・銀行・証券会社等を巡る一連の不始末で明らかになった日本の経済・社会構造と同一の他者依存体質を未だに残存させているということではないでしょうか。

これは、別に言えば、戦後から50年に及ぶ統制経済の裁量行政の強権下で、聞く耳を持たなかった頑なな行政サイドの対処の仕方に対して国民がすっかり対抗的に官依存体質を固めてしまい、官が問題解決をするのが当然の義務とする風潮を生み出しているのかもしれません。そうであるとするなら、そのような官を育ててきたということで国民はまたまたここでも高額納税を強いられることになりましょう。堂々巡りの非効率の極みです。こう言うのを<国民的ロス>というのでしょう。


●最良執行
厚生年金基金は、その設立主旨(加入員の老後生活安定の一助に年金給付を行う)の達成を図るため、最善を尽くす<最良執行>を求められています。
それは単に、職員の人件費削減、または業務費のコスト削減などという管理・運営レベルのものばかりではなく、経営体としての高度な質、受託者として委託者(株主・企業・社員等)にローコスト・ハイリターンな還元を行うこと、インフレやデフレの経済環境を越えて長期に渡る老後生活安定の方策を提供する統治(ガバナンス)が求められています。
つまり、金融ビジネスとして利害関係者に付加価値を提供するように経営することが課せられているのです。

これを達成・成就するために、行政サイドからは厚生年金本体との整合性維持を求められ、民間サイド(母体企業)からは費用対効果での成果を要求されます。
そのうえ、基金自身は給付の安定性確保のために、様々な社会・経済状況の影響をクリアーしていかなければならないように仕組まれていますので、加入員の激減、資産運用手数料・業務委託費のハイコスト、総幹事制の恫喝営業、業者の横並びによる競争メリット享受の排除、持株の政策運用が力を持つ資産運用、受給権保護、裁量行政下の民間活力発揮、金融パニック下の資産保全策、政府の統制経済(低金利政策等)下、制度維持対策等々の場面で、クオリティの高い最良執行が求められることになるのです。

図表6 厚生年金基金業務委託費比較表



しかし、残念なことにこれらの圧倒的な力に立ち向かうには基金の最良執行達成能力は余りにも弱体でしたし、限界がありました。
基金の事務所体制は、ゼネラリストの2、3年の人事ローテーションがまかりとおるのが一般であって、とても、強固なかたくなな規制を行ってきました行政サイドと大蔵省の虎の威を借りて金融プロを詐称していた業者等に、対抗できる力を充分に蓄積できなかったのが現実です。

それは、たとえ理事長であってもゼネラリストの超短期なローテーションではノウハウと経験を持ち合わせず、行政の規制で身動き取れないまま、業界の事情にも通じていないので運営もままならず、ましてや経営も統治も出来る世界ではなかったと言えるのです。つまり、構造的に基金の最良執行達成の経営権は没収されていたということです。

一方、この<基金の経営権>確立のために、個々の基金の限界を踏まえた団体としての政治的な活動も継続的に熱心に行われきました。

各都道府県の厚生年金基金連絡協議会、厚生年金基金連合会の各種委員会・研究会、単独連合厚生年金基金協議会、総合厚生年金基金協議会等々で制度の研究が継続され、厚生省等へ基金のあるべき姿・将来の方向等の要望が再々行われてきました。
個々の場面毎の困難さとは別に、長期的な観点から見ると、このような基金を取り巻く環境の中で、基金の最良執行を方向付ける<経営指針>はおもむろに立ち上がってきたと言えるでありましょう。

官僚やゼネラリストお得意の「決める」という性急・無知な手法ではなく、社会情勢の変化、諸団体の民意反映の改善要望等と相俟って、小さな基金の30年という長い時間と理事長7、8人、常務理事5人、事務長5人、それに代議員300人程等々の多数の関係者の手を経て、その時々、場面、場面で大勢の人々の英知が現実と再々の対決をすることで<経営指針>が「決まってきました」とは言えるでしょう。

これは多数者構成の市場では、<決める>ではなく<決まる>というのがセオリーになっていることと同じと考えられるのではないでしょうか。

このようにして、個々の基金に蓄積されつつある知識と経験とノウハウは、他の業界に見られない独自なもの、つまり広く日本の資産運用一般を考えたとき、他に例を見ないインフラとノウハウを築き上げたということは間違いのないところでしょう。<決まった>というレベルではなく経過的、途上にあるものですが。

図表7 信託銀行の厚生年金基金戦略に対する厚生年金基金の戦略

   

30年余の経験と執拗な意欲によって、諸々の環境が徐々に整備されるにつれて、掛金徴収団体の<運営意識>は、グローバルなボラティリティの高い金融環境の中で、負の遺産の精算を思案しつつ掛金と給付のバランスをとる生産性の高い<経営意識>に変わりつつあります。

母体企業または加入員・年金受給者等にローコスト・ハイリターンな還元が行える場面に到達したということは、まさに<経営の時代>に突入したということでしょう。




このように給付額削減が容認されるのは、わが国で年金受給権という概念が明示的に確立
されていないからだろう。今回の削減容認に際しては、その論拠の一つとして、わが国の企
業年金は退職金から移行されたものだという主張がなされた。退職金は報奨的な性格を有し
ているから、企業は過度な負担までして支払わなくてよいというのである。
しかるに退職金の本来的な性格を鑑みると、それは過去の労働への対価であり賃金の繰延
 べとして考えるのが妥当であろう。

浅野・金子編著『企業年金ビッグバン』
青山 護 「第7章 課題と展望」




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