
はじめに
この本は、厚生年金基金事務所の25年に及ぶ実務経験(事務所の人的物的体制構築・基金業務の機械化・加入員の年金計算年金振込み・基金の予算決算・ライフプランセミナー開催・OB会運営・年金給付改善・資産運用体制構築・年金調査研究等)と、社会保険事務所の年金相談員5年経験(ほぼ30,000人と面談)の年金カウンセラーが、「厚生年金基金」という堅い話をなんとか柔らかく皆さんにお伝えしようと試みます。つまり、学者先生が書けないドメスティックな本になります。ただ、ハウトウものや解説本ではありません。
そのため、論文調の退屈さ・窮屈さを避けるため、既にWebサイトでたくさんのヒットをいただき好評のコンテンツ(年金カウンセラーのSKYDrive「厚生年金基金アーカイブ」http://cidー02b2f63519bf4866.skydrive.live.com/home.aspx?sa=776250713)等から、「検定:年金入門」、「基金って何?」、「囲い記事の引用文」、「Q&A」、「旅行記」、業界誌投稿記事等によるお話としました。
と言いますのも、前著、『情緒の力業』(近代文藝社 平成7年)は一部の読者しか読めない硬い本でしたので、この度は働き盛りの若い人を対象に柔らかい本を目指します。
要するに、いろいろな語り口を通じて、皆さんにお楽しみいただきながら、自然に、「厚生年金基金」のイメージが定まるようにします。
併せて、巻末の付録で「厚生年金基金」の加入がある人(総人口の1割ほど1200万人)の内、多くの人がいまだに未請求のまま放置している「厚生年金基金」の年金を、お手元にお届けするお手伝いもします。当然、若い人たちにも有意義です。
これらを、皆さんがお楽しみいただき、ほんの少しでも厚生年金基金がお分かりいただけて、ご自分の老後保全にいっそう邁進されるようになりましたら、由とします。
さて、平成15年<2003年>10月、確定給付企業年金(DB Defined Benefit)である厚生年金基金の将来分代行返上が法律で認められ、一気に660基金の「代行返上」が始まりました。そのほかに平成13年<2001年>に始まった確定拠出企業年金(DC Defined Contribution)に移行した基金(30基金)や「基金解散」も急拡大し、全国にそれまで1800余基金あったのが、1000基金になり、平成22年<2010年>2月1日現在では609基金になっています。
このように、いまやあたかも「厚生年金基金」は時代の要請を果たし終わり、次にバトンタッチをしているかのような状況にあります。それは、まるで米国の後追いをしているかのような景色です。と言いますのも、日本でも、老後の生活保全については、昭和40年以前はFamily家族でした。昭和40年~平成15年頃はGovernment/Company政府/企業でしたが、平成15年頃以降(米国に20数年遅れて)Individual個人の責任へとシフトしつつあるようです。
図表1 年金主体の移り変わり

出所:米国フィディリティィ社 プレゼンテーション資料 1999年
平成22年の現在、このような立ち位置の「厚生年金基金」は確かにタイムリーな話題ではありません。しかし、「厚生年金基金」には関係者のマドリングスルーな必死の切磋琢磨によって蓄積されたインフラ・ノウハウ(例えば、退職金の年金化・外部保全化、資産運用の方法、官僚まかせの他者依存意識からの覚醒、受給権保護の方法、受託者責任、個人勘定の必要性等々)には膨大なものがあります。
若い人たちにとっても、新たに始まった確定拠出年金(自分年金)の成功のために「厚生年金基金」のインフラ・ノウハウを承知しておくことは必要不可欠なことです。と言いますのも、日本の退職一時金制度が年金化した経緯を「厚生年金基金」を経路にして承知出来ますし、更に、その「厚生年金基金」(代行方式)の限界(受給権保護が不充分)と打開策(確定拠出年金=自分年金)に触れることが出来ます。
そこから、若い人たちが将来何をすべきかの方向が定まるからです。
それでは、みなさん、いろいろな語り口を楽しんでください!
平成22年3月
年金カウンセラー 野 義博
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